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くだらない明日にドロップキック (5)
2016.03.04 Fri
「そうだなぁ、お前の央ちゃんは…」
「いや、あの…、『お前の央ちゃん』ていうのはちょっと…、何かちょっと違う感じになるんで…」
「………………。そうだなぁ、槇村の央ちゃんは…」
「おい!」
純平に『お前の央ちゃん』呼ばわりを指摘されて、板屋越は少しの間を置いてから『槇村の央ちゃん』と言い直したが、それはすぐに隣から突っ込みが入った。表情はまったく変わっていないから、ボケたのか本気で言ったのか、初対面の純平には分かりかねたが、長い付き合いの槇村と逢坂には、これが板屋越のボケだということには、すぐに気が付いていた。
「兄貴と恋人を前に言うのも何やけど、お前らの央ちゃんは、非常に残念な子やなぁ」
「………………」
「………………」
「…………それは認める」
「…………はい」
本当にこの人が担任で大丈夫なのかと、初対面ながら大層失礼なことを思っていた純平だったが、それと同じくらいかそれ以上に随分なことをあっさりと返されて、しかし純平は反論も出来ずに、槇村ともども素直に頷いた。それが央を表すのに大変的確な言葉であることは、央が生まれてから17年間一緒にいる純平がこの中では一番分かっている。
こんななりでも教師は教師、担任は担任なのだ、生徒をよく見ているのだろう――――それを実の兄と恋人に向かって包み隠さず言ってしまうことが、果たしていいのかどうかはともかく。
そうした意味では、板屋越の第一印象は、純平にとって必ずしもいいものとは言えなかった。相手が純平のことを、実際に会う前から親しく思ってくれていたほどには、決して好感を持ってはいなかった。表面上の、大人の付き合いをする分には悪くはなかったけれど、ここから友情を育んでいくのは、非常に難しいことのように思えた。
しかし話し始めてみれば、板屋越は思っていた以上におもしろい人物で(会ってもいない人間を会ったことがあると思って勝手に親近感を抱いてしまう時点で、随分と興味深い思考回路はしているが)、思い掛けないほど話は弾んだ。
槇村にも逢坂にも通じない、わけの分からな純平のギャグも、板屋越は呆れるどころか心底笑ってくれたし、逢坂が突っ込みを諦めるほどの板屋越のボケも、純平には大変ウケた。
酒の力もあっただろうが、とにかく板屋越との会話すべてがおもしろかったし、一緒に過ごす時間は大層楽しかった。人が抱く第一印象など、こんなにも当てにならないものかと思うほど、板屋越に対する印象は変わった。
だから、正直に言う。この日はいつも以上に飲み過ぎたのだ。後から思い返しても、あのときは確実に飲み過ぎていた、と猛省するくらいには飲み過ぎていた。楽しくて、酒が進んだ。それは間違いない。
もちろん、飲み過ぎていたのは純平だけでなく、純平は酔って力の加減をなくした逢坂に、体中の至るところを嫌と言うほどド突かれたし、槇村はゲラゲラと笑いっ放しで、およそ人間の言葉を話しているとは思えない状態になっていたし、板屋越は……まぁ彼の平素をそれほど知らないから何とも言えないが、とりあえず下ネタばかり言っていた記憶だけはある。
全員が、飲み過ぎていたのだ。
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「いや、あの…、『お前の央ちゃん』ていうのはちょっと…、何かちょっと違う感じになるんで…」
「………………。そうだなぁ、槇村の央ちゃんは…」
「おい!」
純平に『お前の央ちゃん』呼ばわりを指摘されて、板屋越は少しの間を置いてから『槇村の央ちゃん』と言い直したが、それはすぐに隣から突っ込みが入った。表情はまったく変わっていないから、ボケたのか本気で言ったのか、初対面の純平には分かりかねたが、長い付き合いの槇村と逢坂には、これが板屋越のボケだということには、すぐに気が付いていた。
「兄貴と恋人を前に言うのも何やけど、お前らの央ちゃんは、非常に残念な子やなぁ」
「………………」
「………………」
「…………それは認める」
「…………はい」
本当にこの人が担任で大丈夫なのかと、初対面ながら大層失礼なことを思っていた純平だったが、それと同じくらいかそれ以上に随分なことをあっさりと返されて、しかし純平は反論も出来ずに、槇村ともども素直に頷いた。それが央を表すのに大変的確な言葉であることは、央が生まれてから17年間一緒にいる純平がこの中では一番分かっている。
こんななりでも教師は教師、担任は担任なのだ、生徒をよく見ているのだろう――――それを実の兄と恋人に向かって包み隠さず言ってしまうことが、果たしていいのかどうかはともかく。
そうした意味では、板屋越の第一印象は、純平にとって必ずしもいいものとは言えなかった。相手が純平のことを、実際に会う前から親しく思ってくれていたほどには、決して好感を持ってはいなかった。表面上の、大人の付き合いをする分には悪くはなかったけれど、ここから友情を育んでいくのは、非常に難しいことのように思えた。
しかし話し始めてみれば、板屋越は思っていた以上におもしろい人物で(会ってもいない人間を会ったことがあると思って勝手に親近感を抱いてしまう時点で、随分と興味深い思考回路はしているが)、思い掛けないほど話は弾んだ。
槇村にも逢坂にも通じない、わけの分からな純平のギャグも、板屋越は呆れるどころか心底笑ってくれたし、逢坂が突っ込みを諦めるほどの板屋越のボケも、純平には大変ウケた。
酒の力もあっただろうが、とにかく板屋越との会話すべてがおもしろかったし、一緒に過ごす時間は大層楽しかった。人が抱く第一印象など、こんなにも当てにならないものかと思うほど、板屋越に対する印象は変わった。
だから、正直に言う。この日はいつも以上に飲み過ぎたのだ。後から思い返しても、あのときは確実に飲み過ぎていた、と猛省するくらいには飲み過ぎていた。楽しくて、酒が進んだ。それは間違いない。
もちろん、飲み過ぎていたのは純平だけでなく、純平は酔って力の加減をなくした逢坂に、体中の至るところを嫌と言うほどド突かれたし、槇村はゲラゲラと笑いっ放しで、およそ人間の言葉を話しているとは思えない状態になっていたし、板屋越は……まぁ彼の平素をそれほど知らないから何とも言えないが、とりあえず下ネタばかり言っていた記憶だけはある。
全員が、飲み過ぎていたのだ。
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