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恋は七転び八起き (74)
2015.11.18 Wed
「あのっ…」
「なぁ、」
「………………」
「………………」
勇気を出して声を掛ければ、同じタイミングで相手も口を開いた。そういえば先ほども、こんなことがあった。もしかしてこれは、すごく気が合うということなのだろうか。それはすごく嬉しいけれど、何も今ここで発揮されなくても。
気まずい空気が流れ掛けたところに、軽快な音楽が割って入って来て、2人とも大げさなくらいにビクリと体を竦ませた。
槇村には聞いたことのない曲は、央のスマホの着信音だったようで、央はゆっくりとカバンのほうを振り返ってから、再び槇村のほうを見た。電話に出てもいいか聞きたいのだろう、槇村は無言で頷いた。
「――――もしもし…?」
央は槇村に背を向けたまま、電話に出た。その間に槇村は立ち上がって、タオルを濡らしに行く。電話を盗み聞きするつもりはないが、央が特に声を潜めもしないので、その会話が聞こえてくる。相手は圭人のようだ。
「…うん、大丈夫だって、ホントに。圭ちゃん、心配しすぎ。…………ん、でも今日一緒に帰れなかったの、圭ちゃんのせいじゃないし。気にしないでよ。…うん、…うん、分かった。ありがとう圭ちゃん。……バイバイ」
電話が終わったのを見計らって、槇村は央のもとへと戻る。ホラ、と濡れたタオルを差し出せば、央が不思議そうに首を傾げた。
「目、冷やしといたほうがいいぞ。明日、腫れてるから」
「あ…」
泣き過ぎた央の目は、すでに少し腫れぼったくなっていたが、明日に影響を残さないためにも、今からでも冷やしておいたほうがいいだろう。央は素直にそれを受け取って、目元に当てた。
「でも、こーすると、槇村くんのこと、見えない…」
「そりゃまぁ…。別に俺のことなんか見なくていいし」
「いやだ! 槇村くんのこと見てたい!」
先ほどまで槇村と同じくらい恥ずかしそうにしていたくせに、央が急にぐいぐいと攻めて来るから、照れて槇村はつい素っ気ない態度を取ってしまう。そういうことをまっすぐに言われるのが、非常に苦手なのだ。
「コラ、央。ちゃんと当てときなさい」
「槇村くんのバカ」
まぶたを冷やさなければ意味がないのに、槇村のこと見ようとして、タオルの位置が目の下に来ているから、槇村は罵られつつも、央の手からタオルを取って、目の上に乗せてやった。しかし、央は前を向いているから、押さえなければタオルが落ちてしまうというのに、央はまったく手を出す気配がない。
央が分かっていてわざとやっているのには、もちろん気付いている。だが、気付いたところで、央が自分で押さえるか、上を向いてくれない限り、槇村は手を離せない状況に変わりはない。
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「なぁ、」
「………………」
「………………」
勇気を出して声を掛ければ、同じタイミングで相手も口を開いた。そういえば先ほども、こんなことがあった。もしかしてこれは、すごく気が合うということなのだろうか。それはすごく嬉しいけれど、何も今ここで発揮されなくても。
気まずい空気が流れ掛けたところに、軽快な音楽が割って入って来て、2人とも大げさなくらいにビクリと体を竦ませた。
槇村には聞いたことのない曲は、央のスマホの着信音だったようで、央はゆっくりとカバンのほうを振り返ってから、再び槇村のほうを見た。電話に出てもいいか聞きたいのだろう、槇村は無言で頷いた。
「――――もしもし…?」
央は槇村に背を向けたまま、電話に出た。その間に槇村は立ち上がって、タオルを濡らしに行く。電話を盗み聞きするつもりはないが、央が特に声を潜めもしないので、その会話が聞こえてくる。相手は圭人のようだ。
「…うん、大丈夫だって、ホントに。圭ちゃん、心配しすぎ。…………ん、でも今日一緒に帰れなかったの、圭ちゃんのせいじゃないし。気にしないでよ。…うん、…うん、分かった。ありがとう圭ちゃん。……バイバイ」
電話が終わったのを見計らって、槇村は央のもとへと戻る。ホラ、と濡れたタオルを差し出せば、央が不思議そうに首を傾げた。
「目、冷やしといたほうがいいぞ。明日、腫れてるから」
「あ…」
泣き過ぎた央の目は、すでに少し腫れぼったくなっていたが、明日に影響を残さないためにも、今からでも冷やしておいたほうがいいだろう。央は素直にそれを受け取って、目元に当てた。
「でも、こーすると、槇村くんのこと、見えない…」
「そりゃまぁ…。別に俺のことなんか見なくていいし」
「いやだ! 槇村くんのこと見てたい!」
先ほどまで槇村と同じくらい恥ずかしそうにしていたくせに、央が急にぐいぐいと攻めて来るから、照れて槇村はつい素っ気ない態度を取ってしまう。そういうことをまっすぐに言われるのが、非常に苦手なのだ。
「コラ、央。ちゃんと当てときなさい」
「槇村くんのバカ」
まぶたを冷やさなければ意味がないのに、槇村のこと見ようとして、タオルの位置が目の下に来ているから、槇村は罵られつつも、央の手からタオルを取って、目の上に乗せてやった。しかし、央は前を向いているから、押さえなければタオルが落ちてしまうというのに、央はまったく手を出す気配がない。
央が分かっていてわざとやっているのには、もちろん気付いている。だが、気付いたところで、央が自分で押さえるか、上を向いてくれない限り、槇村は手を離せない状況に変わりはない。
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