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恋は七転び八起き (70)
2015.11.14 Sat
槇村・央
泣きじゃくる央を前に、槇村はただ茫然としていた。泣いている央を慰めたい、慰めなければ、という気持ちはあったけれど、体が動かなかった。今触れたら、それだけで傷付けてしまう。
「央…」
槇村はこの1週間、どうやって央に謝ろうかと、そればかり考えていた。ひどいことをした自覚はもちろんあって、だからこそ、謝って然るべきだと勝手に思っていた。
しかしどうだ、実際に謝ってみれば、央をこんなに泣かせてしまった。謝っても許してもらえないかもしれないとは考えたけれど、まさか泣かれるとは思っていなかったので、槇村は少なからず動揺した。
諦められなくなるから謝るな、優しくするなと言われて、槇村はようやく央の涙の理由に気が付いた。そんな当たり前のことを、槇村は央を泣かせるまで気付かなかったのだ。
そもそも槇村は、央が本気で槇村のことを諦めようとしているなど、思ってもいなかった。振られても振られても槇村の前に現れる央に、どうしたら諦めという言葉が結び付けられるだろう。
だから今回だって、いい加減、槇村には愛想を尽かしただろうと思う一方で、時が経てばまた槇村の前に現れるかもしれない、と心のどこかでは思っていた。しかし実際には、央は自分の気持ちに整理を付けて、前に進もうとしていたのだ。今度こそ槇村のことを諦め、その想いを断ち切ろうとしていた。槇村が気付いていなかっただけで。
だがこれは、ずっと槇村が望んでいたことのはずだった。央が槇村のことを諦め、もう槇村のところに来なくなってくれたらいいと思っていた。それがようやく叶ったのだ。これで槇村は、央から解放される。
それなのにどうだろう、心は少しも晴れない。央を傷付けたことは本意ではなく、今まさに槇村のせいで泣いている央がいるのだから、心に蟠りがあって当然だけれど、でも、それだけじゃないんだ。
「央」
槇村は明確な意志を持って央に手を伸ばし、そして抱き締めた。央は抱えた膝に顔をうずめていたけれど、何が起こったのかはすぐに分かったようで、ハッとして顔を上げると、慌てて槇村の体を押し返した。
「ちょっ何すんだよっ、やめろよっ!」
「…ゴメン、央」
「ッ! 謝んなって言っただろっ! 離せっ!」
「違う…、ホントにゴメン、央…」
央は両手両足でもがいて槇村の腕から逃れようとしていたが、槇村はそれでも腕を解かなかった。央をこの腕から、逃したくはなかった。そういうことだ。そういうことなのだ。央のことを、離したくない。
「ゴメン、央…」
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