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恋は七転び八起き (69)
2015.11.13 Fri
しかし、あの夜の出来事により央は死ぬほど凹んだが、同時に、今まで誰に何を言われても諦めるという発想のなかった央の中に、初めて、槇村のことを諦めなければいけないという気持ちを芽生えさせたのだ。
槇村を好きだという気持ちは消えていないのに、槇村のことを諦めなくてはいけない。それは8回も失恋している央にとってもツラい決断だったが、何とか自分に言い聞かせて今日まで来たのだ。槇村に会わない生活を続けていくうちに、いつか槇村のことも、この苦しさも、みんな忘れることが出来ると思って。
それなのに、今日こうしてまた槇村に会うし、顔も見たくないと言っていたくせに優しいし、挙げ句に、嫌いだと言ったことについて謝って来るし。気持ちはグチャグチャだ。
「何、それ…」
歯を食い縛っていなければ泣き出してしまいそうだったけれど、央は何とか声を絞り出して槇村に尋ねた。
「いや…、ひどいこと言って傷付けたから。話も聞かないで帰れとか言って……イライラしてて――――なんて言い訳にはならないけど…………ホントにゴメン。謝らないと、てずっと思ってたんだけど、連絡先も知らないし、お前の兄ちゃんにも何か聞けんくて…」
槇村は本当に申し訳なさそうにそう言って、「ゴメンな、央」と頭を下げたが、央は何も言葉に出来なかった。
だって、そんな。
あの日以来、槇村のことを諦められるよう一生懸命に努力して来た央の気持ちも知らないで、そんな簡単に謝らないでよ。今さらそんなこと言われたら、また忘れられなくなる。
「槇村くんのバカッ!!」
「なっ…何だよ、急に」
「バカやからバカやって言ってんのっ! 何だよ、何で謝んだよ、今さら何だよ!! ううぅ…」
とうとう堪え切れずに、央の瞳から涙が零れ落ちた。今泣いたら何だか卑怯な感じがして、央は目をこすって何とか涙を止めようとしたけれど、うまくいかなかった。
「央、」
宥めるつもりだったのか、槇村が央の頭を撫でようとしたが、央はその手を振り払った。
「俺のこと嫌いなんだったら、謝らないでよ!」
「でも…、あれは言い過ぎやったから。そこまでお前のこと」
「ッ…! そこまで嫌いじゃないとか、そんなの今さら絶対に言わないでよっ! 何で分かんないのっ? 俺、槇村くんのこと好きなのに、槇村くんのこと諦めないといけないんだよ!? そんなことされたら、諦められなくなるじゃんかっ…!!」
央は今日、電車の中であんな目に遭って、恐怖のあまり槇村の前で号泣しているけれど、それと同じくらいの涙が、悔しさと怒りのあまり溢れて来る。
槇村は央に謝ることによって、央を傷付けたという罪悪感から解放されるかもしれないが、謝られた央はかえってツラいのに。そんなことも分からないの? 今こうして槇村に優しくされるだけで、央はどんどん槇村のことを好きになっていくのに、それなのに槇村のことを諦めなければいけない央の気持ちが分からないの?
「槇村くんなんかっ…、槇村くんなんか……」
――――嫌いになれたら、どんなに楽だろう。
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槇村を好きだという気持ちは消えていないのに、槇村のことを諦めなくてはいけない。それは8回も失恋している央にとってもツラい決断だったが、何とか自分に言い聞かせて今日まで来たのだ。槇村に会わない生活を続けていくうちに、いつか槇村のことも、この苦しさも、みんな忘れることが出来ると思って。
それなのに、今日こうしてまた槇村に会うし、顔も見たくないと言っていたくせに優しいし、挙げ句に、嫌いだと言ったことについて謝って来るし。気持ちはグチャグチャだ。
「何、それ…」
歯を食い縛っていなければ泣き出してしまいそうだったけれど、央は何とか声を絞り出して槇村に尋ねた。
「いや…、ひどいこと言って傷付けたから。話も聞かないで帰れとか言って……イライラしてて――――なんて言い訳にはならないけど…………ホントにゴメン。謝らないと、てずっと思ってたんだけど、連絡先も知らないし、お前の兄ちゃんにも何か聞けんくて…」
槇村は本当に申し訳なさそうにそう言って、「ゴメンな、央」と頭を下げたが、央は何も言葉に出来なかった。
だって、そんな。
あの日以来、槇村のことを諦められるよう一生懸命に努力して来た央の気持ちも知らないで、そんな簡単に謝らないでよ。今さらそんなこと言われたら、また忘れられなくなる。
「槇村くんのバカッ!!」
「なっ…何だよ、急に」
「バカやからバカやって言ってんのっ! 何だよ、何で謝んだよ、今さら何だよ!! ううぅ…」
とうとう堪え切れずに、央の瞳から涙が零れ落ちた。今泣いたら何だか卑怯な感じがして、央は目をこすって何とか涙を止めようとしたけれど、うまくいかなかった。
「央、」
宥めるつもりだったのか、槇村が央の頭を撫でようとしたが、央はその手を振り払った。
「俺のこと嫌いなんだったら、謝らないでよ!」
「でも…、あれは言い過ぎやったから。そこまでお前のこと」
「ッ…! そこまで嫌いじゃないとか、そんなの今さら絶対に言わないでよっ! 何で分かんないのっ? 俺、槇村くんのこと好きなのに、槇村くんのこと諦めないといけないんだよ!? そんなことされたら、諦められなくなるじゃんかっ…!!」
央は今日、電車の中であんな目に遭って、恐怖のあまり槇村の前で号泣しているけれど、それと同じくらいの涙が、悔しさと怒りのあまり溢れて来る。
槇村は央に謝ることによって、央を傷付けたという罪悪感から解放されるかもしれないが、謝られた央はかえってツラいのに。そんなことも分からないの? 今こうして槇村に優しくされるだけで、央はどんどん槇村のことを好きになっていくのに、それなのに槇村のことを諦めなければいけない央の気持ちが分からないの?
「槇村くんなんかっ…、槇村くんなんか……」
――――嫌いになれたら、どんなに楽だろう。
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