スポンサーサイト
--.--.-- --
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
- BL小説ランキング参加中です。クリックいただけたら嬉しいです。
- コメントや拍手、ありがとうございます。拍手の公開コメントへのお返事はこちらから。それ以外は、コメントをいただいた記事に返信いたします。
- お題配布サイト「明日」はひっそりまったり更新中です。毎日更新しない日誌「遊び心がない」もよろしくね。
カテゴリー:スポンサー広告
恋は七転び八起き (66)
2015.11.10 Tue
「槇村くんの服のセンス、疑ってるわけじゃなくて。借りたらその……どうやって返したらいいか…」
「………………あぁ、いや、無理に返さなくてもいいから。服の1着や2着くらい」
答えるのに少しの間があったのは、央の真意を汲み取るのに時間が掛かったからだろう。それでも聞き返さずに、しかもサラッとそんな提案が出来る槇村は、スマートな大人だ。
「でも…」
「気にしなくていいから」
それでも気にする央に、槇村はそう言って笑った。央はもう、何度かそのセリフを聞いているけれど、央に気を遣わせまいとする槇村の優しさと寛大さに、気持ちが抑えられなくなりそうで、怖くなる。
槇村は「ちゃんと頭拭けよ?」と、またお母さんのようなことを言って、コンロに向かった。
「もうすぐ出来るから、座っとけ」
央は、何か手伝ったほうがいいと思ったものの、料理はまったく出来ないし、かといってテーブルの準備をしようにも、何がどこにあるか分からないから、結局はただ突っ立っているしか出来ず、そんな央に気付いた槇村が声を掛けてくれたので、大人しくテレビの前にあるテーブルのところに着いた。
友だちの家もそうだけれど、初めて来る家は、何だか落ち着かない。風呂まで借りておいて今さらだが、ここが槇村の家だと思ったらソワソワしてしまい、央は意味もなく部屋の中に視線を向ける。
槇村の部屋は、最初に感じたとおりすっきり片付いている印象だが、そんな中で、ベッドの上にゲーム機が放り投げられていて、何だか不思議な感じがする。槇村がいい年をしてゲーム好きなのは、純平から聞いていたけれど、本当だったんだ。すごく大人だと思っていた槇村の意外な一面を実際に目撃して、つい胸がときめいてしまう。
しかし直後、央は自己嫌悪に陥った。槇村のことは諦めなければらないのに、改めて好きになってどうするのだ。意外な一面を知って、その人のことを好きになるのはよくある話らしいけれど、まさか自分の身にも起こるとは思ってもみなかった。しかも今さらのこのタイミングで。
(諦めないとダメなのに…)
そう思ったら急に切なくなって、央は抱えた膝に顔をうずめた。
央は今まで、スーツ姿の槇村しか見たことがなかったし、槇村の部屋も、中までは来たことがなかったから、今は、見るものすべてが新鮮だ。だからここは、槇村への気持ちを断ち切れなくさせるものだらけで、央のことをすごく苦しめる。こんなことなら、槇村の家になんて来なければよかった。そうすれば、こんな思いはしないで済んだのに。
けれど、もしここに来なかったら、央は電車にも乗れず、タクシーにも乗れず、ましてや歩いて帰れる距離でもないから、今晩、どうなっていたか分からない。やはり、槇村には感謝すべきだ。
「央?」
「………………え…?」
「お前、パンツに顔うずめて、何してんだ」
「は? そんなことしてないし!」
back next
「………………あぁ、いや、無理に返さなくてもいいから。服の1着や2着くらい」
答えるのに少しの間があったのは、央の真意を汲み取るのに時間が掛かったからだろう。それでも聞き返さずに、しかもサラッとそんな提案が出来る槇村は、スマートな大人だ。
「でも…」
「気にしなくていいから」
それでも気にする央に、槇村はそう言って笑った。央はもう、何度かそのセリフを聞いているけれど、央に気を遣わせまいとする槇村の優しさと寛大さに、気持ちが抑えられなくなりそうで、怖くなる。
槇村は「ちゃんと頭拭けよ?」と、またお母さんのようなことを言って、コンロに向かった。
「もうすぐ出来るから、座っとけ」
央は、何か手伝ったほうがいいと思ったものの、料理はまったく出来ないし、かといってテーブルの準備をしようにも、何がどこにあるか分からないから、結局はただ突っ立っているしか出来ず、そんな央に気付いた槇村が声を掛けてくれたので、大人しくテレビの前にあるテーブルのところに着いた。
友だちの家もそうだけれど、初めて来る家は、何だか落ち着かない。風呂まで借りておいて今さらだが、ここが槇村の家だと思ったらソワソワしてしまい、央は意味もなく部屋の中に視線を向ける。
槇村の部屋は、最初に感じたとおりすっきり片付いている印象だが、そんな中で、ベッドの上にゲーム機が放り投げられていて、何だか不思議な感じがする。槇村がいい年をしてゲーム好きなのは、純平から聞いていたけれど、本当だったんだ。すごく大人だと思っていた槇村の意外な一面を実際に目撃して、つい胸がときめいてしまう。
しかし直後、央は自己嫌悪に陥った。槇村のことは諦めなければらないのに、改めて好きになってどうするのだ。意外な一面を知って、その人のことを好きになるのはよくある話らしいけれど、まさか自分の身にも起こるとは思ってもみなかった。しかも今さらのこのタイミングで。
(諦めないとダメなのに…)
そう思ったら急に切なくなって、央は抱えた膝に顔をうずめた。
央は今まで、スーツ姿の槇村しか見たことがなかったし、槇村の部屋も、中までは来たことがなかったから、今は、見るものすべてが新鮮だ。だからここは、槇村への気持ちを断ち切れなくさせるものだらけで、央のことをすごく苦しめる。こんなことなら、槇村の家になんて来なければよかった。そうすれば、こんな思いはしないで済んだのに。
けれど、もしここに来なかったら、央は電車にも乗れず、タクシーにも乗れず、ましてや歩いて帰れる距離でもないから、今晩、どうなっていたか分からない。やはり、槇村には感謝すべきだ。
「央?」
「………………え…?」
「お前、パンツに顔うずめて、何してんだ」
「は? そんなことしてないし!」
back next
- 関連記事
-
- 恋は七転び八起き (67) (2015/11/11)
- 恋は七転び八起き (66) (2015/11/10)
- 恋は七転び八起き (65) (2015/11/09)
- BL小説ランキング参加中です。クリックいただけたら嬉しいです。
- コメントや拍手、ありがとうございます。拍手の公開コメントへのお返事はこちらから。それ以外は、コメントをいただいた記事に返信いたします。
- お題配布サイト「明日」はひっそりまったり更新中です。毎日更新しない日誌「遊び心がない」もよろしくね。
カテゴリー:恋は七転び八起き