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恋は七転び八起き (59)
2015.11.02 Mon
「どうした?」
央は泣きそうな顔をしていた。そういえば、槇村を呼ぶ声も、切羽詰っているようだった。
槇村は訝しく思いながらも、央のもとへと戻った。
「央?」
「あ…足っ…」
「足?」
「足、動かないっ…」
央はガクガクと震えていた。カバンをギュッと抱き締め、何とか1歩を踏み出そうとしているけれど、体が言うことを聞かないようだ。そうしているうちに、背後のホームに電車がやって来て、その音に央はさらに体を震わせた。
先ほどまでの出来事がフラッシュバックしたに違いない。
「槇村く…、や、俺帰るしっ…」
「うん、帰ろうな。でも電車乗らないと、帰れないだろ?」
「ッ…」
どうするんだ? と、言葉にはしなかったが、槇村が顔を覗き込めば、央はぐしゃりと表情を崩した。
「送ってこうか? 一緒だったら電車乗れるか?」
さすがにもう、1人で電車に乗って帰るのが無理なのは、央も否定できないだろう。しかし尋ねれば、央がフルフルと首を横に振るので、槇村は眉を寄せた。どこまでも頑なだ。
「央、」
「ちっ、違う…、電車、無理っ…、怖いっ…」
ならばどうするのだと言おうとしたところで、央は槇村の腕を掴んで、とうとう素直に打ち明けた。1人だろうが、槇村が一緒だろうが、そういうことではなくて、電車に近付くことが怖いのだと、吐露する。
「央、おいで」
電車に乗らないのであれば、ここにいる意味もないので、槇村はふら付く央に肩を貸してやり、ひとまず改札を抜けて外に出た。
駅の外ではタクシーが客待ちをしていたが、央を1人でタクシーに乗せるのも、一緒に乗って央の家まで行くのもどうなのかと思う。しかし、バスと言っても、普段バスを利用しない槇村は、央の家のほうへと向かう路線があるのかも知らないし、乗換にも疎いので、名案とも思えない。
となると、ここから向かえるのは槇村の家くらいしかないわけで。
「どうする? タクシー……か、俺んち…?」
「…槇村くんち?」
央が不安そうに見上げて来て、槇村はすぐに、「嘘、嘘っ、冗談だって」と取り繕った。央にとって、槇村の家は、嫌な思い出しかない場所だ。今さら行きたいわけがない。
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央は泣きそうな顔をしていた。そういえば、槇村を呼ぶ声も、切羽詰っているようだった。
槇村は訝しく思いながらも、央のもとへと戻った。
「央?」
「あ…足っ…」
「足?」
「足、動かないっ…」
央はガクガクと震えていた。カバンをギュッと抱き締め、何とか1歩を踏み出そうとしているけれど、体が言うことを聞かないようだ。そうしているうちに、背後のホームに電車がやって来て、その音に央はさらに体を震わせた。
先ほどまでの出来事がフラッシュバックしたに違いない。
「槇村く…、や、俺帰るしっ…」
「うん、帰ろうな。でも電車乗らないと、帰れないだろ?」
「ッ…」
どうするんだ? と、言葉にはしなかったが、槇村が顔を覗き込めば、央はぐしゃりと表情を崩した。
「送ってこうか? 一緒だったら電車乗れるか?」
さすがにもう、1人で電車に乗って帰るのが無理なのは、央も否定できないだろう。しかし尋ねれば、央がフルフルと首を横に振るので、槇村は眉を寄せた。どこまでも頑なだ。
「央、」
「ちっ、違う…、電車、無理っ…、怖いっ…」
ならばどうするのだと言おうとしたところで、央は槇村の腕を掴んで、とうとう素直に打ち明けた。1人だろうが、槇村が一緒だろうが、そういうことではなくて、電車に近付くことが怖いのだと、吐露する。
「央、おいで」
電車に乗らないのであれば、ここにいる意味もないので、槇村はふら付く央に肩を貸してやり、ひとまず改札を抜けて外に出た。
駅の外ではタクシーが客待ちをしていたが、央を1人でタクシーに乗せるのも、一緒に乗って央の家まで行くのもどうなのかと思う。しかし、バスと言っても、普段バスを利用しない槇村は、央の家のほうへと向かう路線があるのかも知らないし、乗換にも疎いので、名案とも思えない。
となると、ここから向かえるのは槇村の家くらいしかないわけで。
「どうする? タクシー……か、俺んち…?」
「…槇村くんち?」
央が不安そうに見上げて来て、槇村はすぐに、「嘘、嘘っ、冗談だって」と取り繕った。央にとって、槇村の家は、嫌な思い出しかない場所だ。今さら行きたいわけがない。
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