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恋は七転び八起き (58)
2015.11.01 Sun
「もう平気だから、帰って槇村くん」
「バカか、そんなこと出来るわけないだろ」
央に何と言われようと、それだけは無理だ。今の央はとても平気そうではないし、いや平気そうに見えたとしても、先ほど央が受けた被害を思えば、とてもここに1人残して帰るなんて出来ない。
「大丈夫だって!」
「じゃあ、どうやって帰えんだよ」
「でっ…電車で帰るよっ、俺んち、もっと先だもんっ。もう帰るっ」
央は向きになってそう言うと、立ち上がった。涙で顔がぐちゃぐちゃだ。その顔を拭ってやったら、また怒らせてしまうだろうか。
「あ…」
引っ手繰るようにカバンを手にした央は、そばにあった槇村のスーツの上着を目にして、動きを止めた。無造作に置かれていたその上着の内側、裏地に白い汚れ。乾いた精液が付着していたのだ。
「あの、あ…、ゴメンなさ…」
そのままトイレを飛び出していきそうな勢いだったのに、央は申し訳なさそうに槇村を振り返った。気が短くて、すぐにカッとなるくせに、こういうことにはちゃんと気が付いて、気にするのだ。
「気にしなくていい、て言っただろ」
言うと槇村は上着を掴んで、汚れが見えないように丸めた。さすがにこれを着て帰るのは躊躇われたし、ハンカチと違って捨てて行くわけにもいかないので、槇村はカバンと一緒にそれを脇に抱えた。何にしろ、央が気にすることではない。
「なら、出るか」
「…ん」
槇村を振り払って帰るには、もう勢いもタイミングもなくしてしまったようで、央は大人しく槇村と一緒にトイレを出た。
あれからどのくらい時間が経ったのか、ホームの混雑は、先ほどより解消されているように見えた。掲示板と腕時計を見比べれば、あと数分で電車はやって来る。
央には嫌がられるかもしれないが、どうしても央が1人で電車で帰ると言うなら、せめて彼が電車に乗り込むところまでは確認しようと思う。でもやはり心配だから、一緒に電車に乗ってしまおうか。
「まっ…槇村くっ…」
槇村がこの後の行動をぼんやりと考えていたら、央に名前を呼ばれたので隣を見たが、姿がない。振り返れば、隣を歩いていた央が、いつの間にか立ち止まっていた。
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「バカか、そんなこと出来るわけないだろ」
央に何と言われようと、それだけは無理だ。今の央はとても平気そうではないし、いや平気そうに見えたとしても、先ほど央が受けた被害を思えば、とてもここに1人残して帰るなんて出来ない。
「大丈夫だって!」
「じゃあ、どうやって帰えんだよ」
「でっ…電車で帰るよっ、俺んち、もっと先だもんっ。もう帰るっ」
央は向きになってそう言うと、立ち上がった。涙で顔がぐちゃぐちゃだ。その顔を拭ってやったら、また怒らせてしまうだろうか。
「あ…」
引っ手繰るようにカバンを手にした央は、そばにあった槇村のスーツの上着を目にして、動きを止めた。無造作に置かれていたその上着の内側、裏地に白い汚れ。乾いた精液が付着していたのだ。
「あの、あ…、ゴメンなさ…」
そのままトイレを飛び出していきそうな勢いだったのに、央は申し訳なさそうに槇村を振り返った。気が短くて、すぐにカッとなるくせに、こういうことにはちゃんと気が付いて、気にするのだ。
「気にしなくていい、て言っただろ」
言うと槇村は上着を掴んで、汚れが見えないように丸めた。さすがにこれを着て帰るのは躊躇われたし、ハンカチと違って捨てて行くわけにもいかないので、槇村はカバンと一緒にそれを脇に抱えた。何にしろ、央が気にすることではない。
「なら、出るか」
「…ん」
槇村を振り払って帰るには、もう勢いもタイミングもなくしてしまったようで、央は大人しく槇村と一緒にトイレを出た。
あれからどのくらい時間が経ったのか、ホームの混雑は、先ほどより解消されているように見えた。掲示板と腕時計を見比べれば、あと数分で電車はやって来る。
央には嫌がられるかもしれないが、どうしても央が1人で電車で帰ると言うなら、せめて彼が電車に乗り込むところまでは確認しようと思う。でもやはり心配だから、一緒に電車に乗ってしまおうか。
「まっ…槇村くっ…」
槇村がこの後の行動をぼんやりと考えていたら、央に名前を呼ばれたので隣を見たが、姿がない。振り返れば、隣を歩いていた央が、いつの間にか立ち止まっていた。
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