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恋は七転び八起き (17)
2015.09.17 Thu
「おぅ、おはよう。早いな」
振り返った槇村は、しかしいつもふざけた調子で登場する純平が、こんな早い時間から、しかも真面目な顔をしてやって来たので、挨拶はしたものの、少し怪訝そうな顔をした。
「おっおはようございます槇村くんちょっといいですかっ僕の話を聞いてくださいっ」
「………………嫌だ」
「えっ!」
なるべくいい印象を、自分の好印象が央の好感度へと繋がると思い、純平はいつになく堅く真面目に話を始めたのに、少しの間の後、槇村は冷めた調子で拒んだ。気持ちが逸り、力が入りすぎてしまったせいで、かえって胡散臭さが増したのが原因だろう。
しかし、まだ内容も伝えていないうちから拒まれるとは思っていなかった純平は、予想外の展開にアドリブも利かず、ただただ言葉を詰まらせた。
「ええええええっと槇村さんっ」
「お前の話は聞きたくない。以上」
「ちょっそんなぁ!」
自分の部署のブラインドを開け終えた槇村は、がんばって声を掛けた純平にきっぱりとそう言い切って、スタスタと純平の前から立ち去った。
あまりの事態に頭が追い付かなかった純平は、槇村を呼び止めることも、その背中を追い掛けることも出来ず、我に返ったのは、次にやって来た同僚に肩を叩かれたときだった。
どこで時間を潰していたのか、槇村が席に戻って来たのは、始業のチャイムと同時だった。純平は縋るような視線を槇村に向けたが、まるで無視された。
仕事中に私語は御法度だが、何気ない多少の雑談ならある。とはいえ、さすがにここで央からの質問は出来ないので、純平は槇村が1人になる機会を窺っていた。槇村はたばこを吸わないので、喫煙所で一服…ということはないが、トイレくらいは行く。そのときに。
…そう思っていたのに、槇村は純平が電話中など、席を離れられないタイミングで席を立つのだ。どうやら純平の浅はかな思惑は、お見通しだったようだ。
ならば次のチャンスは、昼休みだ。昼食に出る槇村を捕まえて、声を掛ける。それしかない。
あと数分で12時だ。槇村が席を立った。トイレだろう。先ほどまでは今しかないと思っていたこのタイミングも、もうすぐ昼休みになるとなれば、それほど重要とも思えない。純平はのん気に構えていた。
チャイムが鳴る。昼休みだ。槇村が戻って来ない。
「えっ、あれっ?」
節電のためフロアの電気が消され、輪番制の電話番を残して、みんな昼食へと出掛けて行くも、槇村が戻って来る気配はない。純平は慌ててトイレにダッシュし、中を覗いたが、そこに槇村の姿はなかった。
「やられた…」
あのとき席を立った槇村は、本当にトイレに行ったのかもしれないが、その後、席には戻らず、そのまま外に出たのだろう。昼休みに外に出るときは、いったん席に戻らなければならない決まりはないから、槇村の行動に問題はない。やはり槇村のほうが上手だ。
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振り返った槇村は、しかしいつもふざけた調子で登場する純平が、こんな早い時間から、しかも真面目な顔をしてやって来たので、挨拶はしたものの、少し怪訝そうな顔をした。
「おっおはようございます槇村くんちょっといいですかっ僕の話を聞いてくださいっ」
「………………嫌だ」
「えっ!」
なるべくいい印象を、自分の好印象が央の好感度へと繋がると思い、純平はいつになく堅く真面目に話を始めたのに、少しの間の後、槇村は冷めた調子で拒んだ。気持ちが逸り、力が入りすぎてしまったせいで、かえって胡散臭さが増したのが原因だろう。
しかし、まだ内容も伝えていないうちから拒まれるとは思っていなかった純平は、予想外の展開にアドリブも利かず、ただただ言葉を詰まらせた。
「ええええええっと槇村さんっ」
「お前の話は聞きたくない。以上」
「ちょっそんなぁ!」
自分の部署のブラインドを開け終えた槇村は、がんばって声を掛けた純平にきっぱりとそう言い切って、スタスタと純平の前から立ち去った。
あまりの事態に頭が追い付かなかった純平は、槇村を呼び止めることも、その背中を追い掛けることも出来ず、我に返ったのは、次にやって来た同僚に肩を叩かれたときだった。
どこで時間を潰していたのか、槇村が席に戻って来たのは、始業のチャイムと同時だった。純平は縋るような視線を槇村に向けたが、まるで無視された。
仕事中に私語は御法度だが、何気ない多少の雑談ならある。とはいえ、さすがにここで央からの質問は出来ないので、純平は槇村が1人になる機会を窺っていた。槇村はたばこを吸わないので、喫煙所で一服…ということはないが、トイレくらいは行く。そのときに。
…そう思っていたのに、槇村は純平が電話中など、席を離れられないタイミングで席を立つのだ。どうやら純平の浅はかな思惑は、お見通しだったようだ。
ならば次のチャンスは、昼休みだ。昼食に出る槇村を捕まえて、声を掛ける。それしかない。
あと数分で12時だ。槇村が席を立った。トイレだろう。先ほどまでは今しかないと思っていたこのタイミングも、もうすぐ昼休みになるとなれば、それほど重要とも思えない。純平はのん気に構えていた。
チャイムが鳴る。昼休みだ。槇村が戻って来ない。
「えっ、あれっ?」
節電のためフロアの電気が消され、輪番制の電話番を残して、みんな昼食へと出掛けて行くも、槇村が戻って来る気配はない。純平は慌ててトイレにダッシュし、中を覗いたが、そこに槇村の姿はなかった。
「やられた…」
あのとき席を立った槇村は、本当にトイレに行ったのかもしれないが、その後、席には戻らず、そのまま外に出たのだろう。昼休みに外に出るときは、いったん席に戻らなければならない決まりはないから、槇村の行動に問題はない。やはり槇村のほうが上手だ。
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