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恋は七転び八起き (8)
2015.09.08 Tue
「まぁまぁななみん、そんなキツいこと言わなくても。央も今落ち込んでんだから」
とうとう見兼ねて、圭人が口を挟んだ。もう8回もこんなことに付き合わされているというのに、本当に優しい男だ。
もしかしたらその優しさが、央をこんなふうにダメにしているのではないだろうか。彼がもうちょっとビシッと言ってやれば、央だって何か変わるかもしれないのに。
「央も…、ホラ、いつまでも凹んでないで、顔上げなよ」
「だってぇ…」
圭人に優しくも厳しい言葉を掛けられ、央は涙声で返事をする。
あぁ…、たとえ8回目の失恋であっても、泣くほど切ないのね…。ならばなおさら、明日告白しに行くのはやめておいたほうがいい。そんな傷口に塩を塗るような真似、いくら央がドMでも、耐え切れないだろう。
「あ、央、先生来た」
教室の前のドアが開いて、このクラスの担任である板屋越(いたやごし)がやって来たので、小声で央に声を掛けると、圭人と七海は前を向いた。
板屋越はいつも、それほど高くもない背と細すぎる体に絶対に見合っていない、ダボダボでヨレヨレの白衣を羽織り、クリーム色という絶妙な色の便所サンダル(それも、おしゃれな感じのでなく、あからさまな便所サンダル)という姿だ。しかも、教師らしからぬ長髪で、眉間には大体いつもしわが寄っている。
一見すると、生徒からも周りの教師からも疎まれそうな存在だが、意外にも生徒からの人気は高い。こんななりだが、授業は分かりやすくておもしろいからだ。加えて、それほど厳しくもない。
また、ビシッとしたときの板屋越は非常に格好いいと、女子生徒たちの間ではもっぱらの噂だ。その姿を見掛けた者は多くはないが、この噂が消えることはない。
「出席取るぞー…………欠席なし」
出席簿を開いて、教室の中をグルリと一周見回した板屋越は、一人ひとりの名前を読み上げることもなく、本日の出欠確認を終えた。いつものことである。
だが本当のことを言うと、まだ来ていない生徒が1人いて、欠席の連絡もないことから遅刻か無断欠席なのだろうが、板屋越は全員出席にしてしまった。これもいつものことだ。いないことに気付かなければ、それで終わり。
こんなことでは、ちゃんと登校している生徒から不満が出たり、遅刻する生徒ばかりになったりしそうだが、意外にもそれはなかった。逆のパターンもあるからだ。
来ていないことに気付かれた場合、出欠確認の最中に教室にやって来たとしても、遅刻を覆してもらえないのである。下手したら無断欠席扱い。おまけはないのだ。しかも、板屋越の出欠確認の時間は短いので、一人ひとり名前を読み上げていたら間に合ったかもしれないところ、涙を呑むことも少なくないのだ。
とはいえ、トータルで見たら、おまけをしてもらっているほうが多いだろうが。
一度生徒から、『甘いな~』と茶々を入れられたことがあったが、そのときに、『別にお前らが遅刻ばっかりする人間になろうと、俺の知ったっちゃないわ。お前らが困るだけで、俺は何も困らん』と言い切った男である。
保護者が聞けば激怒しそうな台詞だが、高校生の胸にはそれなりに響いたようで、板屋越のクラスは他のクラスと比べても、出席簿上だけでなく、実際の遅刻も少ないほうだ。
板屋越のいい加減な出欠確認が、かえって生徒の遅刻を減らしていると言っても過言ではない。
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とうとう見兼ねて、圭人が口を挟んだ。もう8回もこんなことに付き合わされているというのに、本当に優しい男だ。
もしかしたらその優しさが、央をこんなふうにダメにしているのではないだろうか。彼がもうちょっとビシッと言ってやれば、央だって何か変わるかもしれないのに。
「央も…、ホラ、いつまでも凹んでないで、顔上げなよ」
「だってぇ…」
圭人に優しくも厳しい言葉を掛けられ、央は涙声で返事をする。
あぁ…、たとえ8回目の失恋であっても、泣くほど切ないのね…。ならばなおさら、明日告白しに行くのはやめておいたほうがいい。そんな傷口に塩を塗るような真似、いくら央がドMでも、耐え切れないだろう。
「あ、央、先生来た」
教室の前のドアが開いて、このクラスの担任である板屋越(いたやごし)がやって来たので、小声で央に声を掛けると、圭人と七海は前を向いた。
板屋越はいつも、それほど高くもない背と細すぎる体に絶対に見合っていない、ダボダボでヨレヨレの白衣を羽織り、クリーム色という絶妙な色の便所サンダル(それも、おしゃれな感じのでなく、あからさまな便所サンダル)という姿だ。しかも、教師らしからぬ長髪で、眉間には大体いつもしわが寄っている。
一見すると、生徒からも周りの教師からも疎まれそうな存在だが、意外にも生徒からの人気は高い。こんななりだが、授業は分かりやすくておもしろいからだ。加えて、それほど厳しくもない。
また、ビシッとしたときの板屋越は非常に格好いいと、女子生徒たちの間ではもっぱらの噂だ。その姿を見掛けた者は多くはないが、この噂が消えることはない。
「出席取るぞー…………欠席なし」
出席簿を開いて、教室の中をグルリと一周見回した板屋越は、一人ひとりの名前を読み上げることもなく、本日の出欠確認を終えた。いつものことである。
だが本当のことを言うと、まだ来ていない生徒が1人いて、欠席の連絡もないことから遅刻か無断欠席なのだろうが、板屋越は全員出席にしてしまった。これもいつものことだ。いないことに気付かなければ、それで終わり。
こんなことでは、ちゃんと登校している生徒から不満が出たり、遅刻する生徒ばかりになったりしそうだが、意外にもそれはなかった。逆のパターンもあるからだ。
来ていないことに気付かれた場合、出欠確認の最中に教室にやって来たとしても、遅刻を覆してもらえないのである。下手したら無断欠席扱い。おまけはないのだ。しかも、板屋越の出欠確認の時間は短いので、一人ひとり名前を読み上げていたら間に合ったかもしれないところ、涙を呑むことも少なくないのだ。
とはいえ、トータルで見たら、おまけをしてもらっているほうが多いだろうが。
一度生徒から、『甘いな~』と茶々を入れられたことがあったが、そのときに、『別にお前らが遅刻ばっかりする人間になろうと、俺の知ったっちゃないわ。お前らが困るだけで、俺は何も困らん』と言い切った男である。
保護者が聞けば激怒しそうな台詞だが、高校生の胸にはそれなりに響いたようで、板屋越のクラスは他のクラスと比べても、出席簿上だけでなく、実際の遅刻も少ないほうだ。
板屋越のいい加減な出欠確認が、かえって生徒の遅刻を減らしていると言っても過言ではない。
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