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恋は七転び八起き (3)
2015.09.03 Thu
「央、今日はもう帰ろ~」
「何でっ? 槇村くんから返事貰ってない――――オッケーの!」
いや、返事はしただろ、と突っ込もうとしたら、錦戸がそう続けたので、槇村は口を挟むタイミングを失った。代わりに圭人が言葉を続ける。
「オッケーの返事は貰ってないけど、付き合えない、て返事なら貰っただろ?」
「ぐっ…」
何ということはない、圭人は、今目の前で繰り広げられた出来事を口にしただけだが、食い下がる央を黙らせるには十分だったようで、央は大人しく、「分かった…」と頷いた。しかし、頷いたものの、央にその場を去る気配はない。まだ諦め切れないのだろう。そんな央の肩を、圭人がポンと叩いた。
「央、早く帰ろ? 兄ちゃん心配するし」
「純平くんなんか知らん! 槇村くんと毎日一緒に仕事してっ…………羨ましいっ…!」
圭人が『兄ちゃん』と言ったのは、央の兄であり、槇村の同僚である深山純平(みやま じゅんぺい)のことだ。実の兄弟でもない圭人が彼のことを『兄ちゃん』と呼ぶのに対し、なぜか央は『純平くん』と呼んでいる。
それはいいとして、どんなに央が純平のことを恨もうが羨ましかろうが、純平が槇村と同じ職場で働き、毎日顔を合わせているのは事実で、さらには、だからこそ央は槇村と出会ったのだが。
「…なら帰るね、槇村くん」
「おぅ」
しゅんと項垂れて言う央に、まったく罪悪感が湧かないわけではない。しかし、恋人としてお付き合いが出来ない以上、返事は1つしかないのだ、分かってほしい。
「またな、槇村くん…」
央はクルリと回れ右をすると、圭人とともにトボトボと駅へと向かって行った。
その後ろ姿を見送りつつ、槇村は、「またな、じゃねぇよ」と漏らすのだった。
人のことを言えた義理ではないが、槇村から見ても、やはり深山純平という男は、少し変わっていると思う。いや、『少し』というのは大人の気遣いであり、実際は相当の変わり者だと思っている。槇村より2つ年下だが、すでに30歳は過ぎているのに、妙なテンションで、妙な動きをしながら、ギャグばかり言っているのだから当然だ。
とはいえ、覚えは若干悪いものの、真面目に丁寧に仕事はこなすので、人望もあるし、みんなにも好かれている。変人ではあるが、好青年であることに違いはない。その点については、槇村にも異論はない。仕事に於いて純平のことは頼りにしているし、何よりも、彼がいると毎日が楽しい。
しかし、昨日の今日でとてもそんな気分になれるはずもなく、無駄に明るいテンションで出勤してきた純平を、槇村はギロリと睨み付けた。
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「何でっ? 槇村くんから返事貰ってない――――オッケーの!」
いや、返事はしただろ、と突っ込もうとしたら、錦戸がそう続けたので、槇村は口を挟むタイミングを失った。代わりに圭人が言葉を続ける。
「オッケーの返事は貰ってないけど、付き合えない、て返事なら貰っただろ?」
「ぐっ…」
何ということはない、圭人は、今目の前で繰り広げられた出来事を口にしただけだが、食い下がる央を黙らせるには十分だったようで、央は大人しく、「分かった…」と頷いた。しかし、頷いたものの、央にその場を去る気配はない。まだ諦め切れないのだろう。そんな央の肩を、圭人がポンと叩いた。
「央、早く帰ろ? 兄ちゃん心配するし」
「純平くんなんか知らん! 槇村くんと毎日一緒に仕事してっ…………羨ましいっ…!」
圭人が『兄ちゃん』と言ったのは、央の兄であり、槇村の同僚である深山純平(みやま じゅんぺい)のことだ。実の兄弟でもない圭人が彼のことを『兄ちゃん』と呼ぶのに対し、なぜか央は『純平くん』と呼んでいる。
それはいいとして、どんなに央が純平のことを恨もうが羨ましかろうが、純平が槇村と同じ職場で働き、毎日顔を合わせているのは事実で、さらには、だからこそ央は槇村と出会ったのだが。
「…なら帰るね、槇村くん」
「おぅ」
しゅんと項垂れて言う央に、まったく罪悪感が湧かないわけではない。しかし、恋人としてお付き合いが出来ない以上、返事は1つしかないのだ、分かってほしい。
「またな、槇村くん…」
央はクルリと回れ右をすると、圭人とともにトボトボと駅へと向かって行った。
その後ろ姿を見送りつつ、槇村は、「またな、じゃねぇよ」と漏らすのだった。
槇村・純平
人のことを言えた義理ではないが、槇村から見ても、やはり深山純平という男は、少し変わっていると思う。いや、『少し』というのは大人の気遣いであり、実際は相当の変わり者だと思っている。槇村より2つ年下だが、すでに30歳は過ぎているのに、妙なテンションで、妙な動きをしながら、ギャグばかり言っているのだから当然だ。
とはいえ、覚えは若干悪いものの、真面目に丁寧に仕事はこなすので、人望もあるし、みんなにも好かれている。変人ではあるが、好青年であることに違いはない。その点については、槇村にも異論はない。仕事に於いて純平のことは頼りにしているし、何よりも、彼がいると毎日が楽しい。
しかし、昨日の今日でとてもそんな気分になれるはずもなく、無駄に明るいテンションで出勤してきた純平を、槇村はギロリと睨み付けた。
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