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恋の女神は微笑まない (268)
2015.02.09 Mon
店長に言われて、千尋はちょうど1年前のことを思い出した。遥希が、1人じゃ無理だとか言って、千尋をFATEのコンサートに連れて行ったのだ。
クリスマスイブで、仕事も忙しくて、閉店時間まで仕事をしたかったのに、それではコンサートに間に合わないからと、千尋は泣く泣く夕方で仕事を上がったのである。
忙しいはずなのに、あっさりと早上がりを許してくれるなんて、俺って必要ない子なのかと悲しくなったのだが、単に千尋があまりにも休みを取らなすぎていたことに対する店長なりの罪滅ぼしだった。
それが1年前のこと。
そのとき千尋は大和と一夜を明かしたのだ、ホテルの一室、同じベッドで。
「今年はそういうこともないんで、まっすぐ家に帰るほかないんです」
「そうなの?」
「だから、寂しいので、まだまだ仕事したいです」
「いや、だから…」
もう帰り支度を始めているのに、千尋がまた食い下がって来たので、店長は苦笑いする。
「でも俺、もう帰ってサンタさんしないとだから」
「サンタさん?」
まさか店長の口から『サンタさん』が登場するとは思わず、千尋はギョッとして店長を見た。
この間、千尋に電話をくれた遥希は酔っ払っていたけれど、今店長が素面なのは千尋が一番よく分かっているし、この人がそこまで夢見がちな人だとも思っていない。
それなのに、サンタさん?
「子どもが、サンタさんからのプレゼント、待ってるから」
「あぁ」
言われて、納得。
店長には保育園に行っている子どもがいるのだ。店長自身がサンタクロースを信じていなくとも、子どもはまだまだそうしたものを信じている年ごろだ。
帰ったらサンタクロースに扮するのか、それともこっそりと枕元にプレゼントを置くのか、とにかく店長は、千尋と違って、今日という日に残業などあり得ないのである。
「サンタさんを信じてたころが、一番よかった」
「どうした、急にしんみりして」
「俺も、サンタさんからプレゼント欲しい………………ゴメンなさい」
店長に言ったところで、それは遥希に言うよりももっとずっとどうしようもないことだったが、思わず言ってしまった。直後に謝った。店長に何を言っているんだ。
一生1人で生きて行くと心に決めたはずなのに、やっぱり人の幸せそうな雰囲気は羨ましい。千尋はもともと、激しく寂しがり屋なのだ。
「店長は早く帰って、よきサンタさんになってください。俺も早く帰って寝ます」
「いや、寝なくても…」
微妙な空気になったのをごまかすように、千尋が真面目な顔でそう言ったら、店長はそれを、千尋のいつもの冗談だと思ってくれたらしく、吹き出した。
いくら1人のクリスマスイブとはいえ、早く帰って寝るしかやることがないなんて、寂しいを通り越して、切ない。
店長が笑ってくれたからよかったけれど、完全に笑えないジョークだ。
「じゃあ、お疲れ様」
「お休みなさい、サンタさん」
千尋の挨拶に、店長は声を上げて笑いながら、千尋とは反対のほうへと歩いて行った。
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クリスマスイブで、仕事も忙しくて、閉店時間まで仕事をしたかったのに、それではコンサートに間に合わないからと、千尋は泣く泣く夕方で仕事を上がったのである。
忙しいはずなのに、あっさりと早上がりを許してくれるなんて、俺って必要ない子なのかと悲しくなったのだが、単に千尋があまりにも休みを取らなすぎていたことに対する店長なりの罪滅ぼしだった。
それが1年前のこと。
そのとき千尋は大和と一夜を明かしたのだ、ホテルの一室、同じベッドで。
「今年はそういうこともないんで、まっすぐ家に帰るほかないんです」
「そうなの?」
「だから、寂しいので、まだまだ仕事したいです」
「いや、だから…」
もう帰り支度を始めているのに、千尋がまた食い下がって来たので、店長は苦笑いする。
「でも俺、もう帰ってサンタさんしないとだから」
「サンタさん?」
まさか店長の口から『サンタさん』が登場するとは思わず、千尋はギョッとして店長を見た。
この間、千尋に電話をくれた遥希は酔っ払っていたけれど、今店長が素面なのは千尋が一番よく分かっているし、この人がそこまで夢見がちな人だとも思っていない。
それなのに、サンタさん?
「子どもが、サンタさんからのプレゼント、待ってるから」
「あぁ」
言われて、納得。
店長には保育園に行っている子どもがいるのだ。店長自身がサンタクロースを信じていなくとも、子どもはまだまだそうしたものを信じている年ごろだ。
帰ったらサンタクロースに扮するのか、それともこっそりと枕元にプレゼントを置くのか、とにかく店長は、千尋と違って、今日という日に残業などあり得ないのである。
「サンタさんを信じてたころが、一番よかった」
「どうした、急にしんみりして」
「俺も、サンタさんからプレゼント欲しい………………ゴメンなさい」
店長に言ったところで、それは遥希に言うよりももっとずっとどうしようもないことだったが、思わず言ってしまった。直後に謝った。店長に何を言っているんだ。
一生1人で生きて行くと心に決めたはずなのに、やっぱり人の幸せそうな雰囲気は羨ましい。千尋はもともと、激しく寂しがり屋なのだ。
「店長は早く帰って、よきサンタさんになってください。俺も早く帰って寝ます」
「いや、寝なくても…」
微妙な空気になったのをごまかすように、千尋が真面目な顔でそう言ったら、店長はそれを、千尋のいつもの冗談だと思ってくれたらしく、吹き出した。
いくら1人のクリスマスイブとはいえ、早く帰って寝るしかやることがないなんて、寂しいを通り越して、切ない。
店長が笑ってくれたからよかったけれど、完全に笑えないジョークだ。
「じゃあ、お疲れ様」
「お休みなさい、サンタさん」
千尋の挨拶に、店長は声を上げて笑いながら、千尋とは反対のほうへと歩いて行った。
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