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恋の女神は微笑まない (250)
2015.01.22 Thu
『じゃあ、今日はゆっくり休んで…………あまりひどいようなら病院にも行くんだよ?』
「ううぅ…、やっぱり休まないとダメですかぁ…?」
『仕事に来れるような体力があるの?』
店長は、はっきりと『ダメ』とは言わなかったが、しかしそれは、言わなくても分かるだろう、ということであって、千尋が無理して仕事に来ることを許しているわけではなかった。
「ゴメンなさいぃ~……」
千尋は自分が情けなくて仕方なかった。
仕事上、様々な人間と接することが多いため、そこからウィルスやらを貰うことは少なくないが、このたび千尋が風邪を引いたのは、完全に自分の責任だ。
千尋は、いい年をした大人としては、若干社会性に欠ける部分はあるものの、仕事に関しては責任とプライドを大いに持っているので、こうした形で仕事を休むことになるのが、堪らなく嫌だった。
しかし、無理をして仕事に行けば、逆に周りに迷惑を掛けることも分かっているので、『仕事を休む』という選択肢を選ぶしかない。
「店長、ゴメンなさい~…、こんなときに~…」
『大丈夫だから。こっちは何とか回すから。今は風邪を治すことだけ考えて』
「ううぅ…」
優しい言葉が身に染みた。
千尋は、泣きながら電話を切った。
「ちーちゃん、おかゆ温まったよ? ちーちゃん?」
ベソベソしながら千尋がベッドに突っ伏していたら、大和が戻って来た。
そういえば、先ほど大和からパジャマを受け取ったきり、着替えてもいなかった。店長に電話をして、仕事に行かないことが決まった以上、もう1度着替え直さなければ。
「……」
千尋は無言で体を起こすと、のろのろと服を脱いで、パジャマに袖を通した。
別に、大和を無視しているわけではない。喋るのがしんどいだけだ。
「食器とか勝手に使っちゃったけど…………はい」
「…ん」
一人暮らしの男の家に、お盆のような気の利いたアイテムなどあるはずもなく、大和は直に、おかゆの入ったお椀を持っていた。
素手で持っても平気そうにしているのは、恐らくおかゆはレンジで温めたのでなく、律儀にお湯で温めたからだろう。
千尋は、そこにいるのが昨日別れた相手であることは分かっていたけれど、どんな態度が正解なのか分からなくて、結局素直にそれを受け取って、もそもそと食べ始めた。
「食べたら薬飲んでね? ここ置いとくから」
大和はサイドテーブルに薬と水の入ったグラスを置いたが、ふと視線を向けた千尋は、その薬の箱がすでに開いているのに気付いた。
まだ時間も時間だ。コンビニなら24時間営業だが、薬屋など、よほど探さなければ開いている店は見つけられまい。となると、もしかしたらその封の切られた風邪薬は、大和が自宅から持って来たのかもしれない。
別れた男のためにそこまでしてくれるなんて、何て気のいい人間なんだろう。
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「ううぅ…、やっぱり休まないとダメですかぁ…?」
『仕事に来れるような体力があるの?』
店長は、はっきりと『ダメ』とは言わなかったが、しかしそれは、言わなくても分かるだろう、ということであって、千尋が無理して仕事に来ることを許しているわけではなかった。
「ゴメンなさいぃ~……」
千尋は自分が情けなくて仕方なかった。
仕事上、様々な人間と接することが多いため、そこからウィルスやらを貰うことは少なくないが、このたび千尋が風邪を引いたのは、完全に自分の責任だ。
千尋は、いい年をした大人としては、若干社会性に欠ける部分はあるものの、仕事に関しては責任とプライドを大いに持っているので、こうした形で仕事を休むことになるのが、堪らなく嫌だった。
しかし、無理をして仕事に行けば、逆に周りに迷惑を掛けることも分かっているので、『仕事を休む』という選択肢を選ぶしかない。
「店長、ゴメンなさい~…、こんなときに~…」
『大丈夫だから。こっちは何とか回すから。今は風邪を治すことだけ考えて』
「ううぅ…」
優しい言葉が身に染みた。
千尋は、泣きながら電話を切った。
「ちーちゃん、おかゆ温まったよ? ちーちゃん?」
ベソベソしながら千尋がベッドに突っ伏していたら、大和が戻って来た。
そういえば、先ほど大和からパジャマを受け取ったきり、着替えてもいなかった。店長に電話をして、仕事に行かないことが決まった以上、もう1度着替え直さなければ。
「……」
千尋は無言で体を起こすと、のろのろと服を脱いで、パジャマに袖を通した。
別に、大和を無視しているわけではない。喋るのがしんどいだけだ。
「食器とか勝手に使っちゃったけど…………はい」
「…ん」
一人暮らしの男の家に、お盆のような気の利いたアイテムなどあるはずもなく、大和は直に、おかゆの入ったお椀を持っていた。
素手で持っても平気そうにしているのは、恐らくおかゆはレンジで温めたのでなく、律儀にお湯で温めたからだろう。
千尋は、そこにいるのが昨日別れた相手であることは分かっていたけれど、どんな態度が正解なのか分からなくて、結局素直にそれを受け取って、もそもそと食べ始めた。
「食べたら薬飲んでね? ここ置いとくから」
大和はサイドテーブルに薬と水の入ったグラスを置いたが、ふと視線を向けた千尋は、その薬の箱がすでに開いているのに気付いた。
まだ時間も時間だ。コンビニなら24時間営業だが、薬屋など、よほど探さなければ開いている店は見つけられまい。となると、もしかしたらその封の切られた風邪薬は、大和が自宅から持って来たのかもしれない。
別れた男のためにそこまでしてくれるなんて、何て気のいい人間なんだろう。
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