スポンサーサイト
--.--.-- --
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
- BL小説ランキング参加中です。クリックいただけたら嬉しいです。
- コメントや拍手、ありがとうございます。拍手の公開コメントへのお返事はこちらから。それ以外は、コメントをいただいた記事に返信いたします。
- お題配布サイト「明日」はひっそりまったり更新中です。毎日更新しない日誌「遊び心がない」もよろしくね。
カテゴリー:スポンサー広告
恋の女神は微笑まない (21)
2014.05.26 Mon
「行こ?」
「あ、うん」
大和は一瞬だけ、千尋の抜けた一団を見渡した後、千尋の言葉に急かされるように、踵を返して歩き始めた。呆気に取られている男たちを振り返りもせず、千尋もその後に続く。
こうすることを、こうなることを望んでいたはずなのに、そのとおりの展開になって、大和自身が一番驚いている。やはり千尋は、まだまだ計り知れない。
店の外に出て、それでも千尋が付いて来てくれているのか不安になって、少しだけ振り返れば、千尋は、感情の見えない表情で、大和の後ろを歩いていた。
前回会ったあのイブの夜、すっかり酔っ払って、ゆるゆるになっていたときの雰囲気は、そこにはない。
でも今日もお酒を飲んでいたし、もうしばらくしたら、あんなふうになっていたんだろうか、あの男たちの前で。それは冗談じゃないと思う……そんなことを言う権利、大和にはないんだけれど。
「…乗って?」
「……」
駐車場に辿り着き、助手席のドアを開けてやると、千尋は大和を一瞥してから、何も言わずに車に乗り込んだ。
ご丁寧にドアまで閉めてやり、運転席のほうへと回ると、窓ガラス越し、千尋があくびをしながら、両腕を前に突き出して伸びをしているのが見える。
かくものん気な様子の千尋に、かえって大和のほうが戸惑ってしまう。
仕掛けたのは大和とはいえ、たった今、合コンに参加していた千尋のこと、有無を言わさずに連れて来たのだ。一歩間違えたら、修羅場になっていたかもしれないのに。
「で、どこ連れてってくれるの?」
「え?」
「だって、車に乗せたから。どっか行くんじゃないの? 言っとくけど俺、キレイな夜景とか、興味ないからね」
シレッとそう言い放って、千尋は不敵なく笑ってみせた。
それはまるで、ドラマのワンシーンのようだと思った。けれど、勢いに任せて千尋のところへやって来て、彼を連れ出して、ドラマだったらこんなとき、一体どこへ向かうんだろう。
「どこ行きたい? なんて聞くのは、野暮だよね」
「だね」
大和が冗談めかして言うと、千尋は呆れるでもなく、楽しげに口の端を上げた。
遥希から合コンの話を聞いて、頭に血が上って衝動的な行動に出たものの、実際のところ、そこから先のことなんて、何も考えていなかった。
「――――でも、」
千尋は笑顔のまま、大和のほうへと身を乗り出した。
顔が、近い。
「こんなふうに掻っ攫って来たからには、やっぱホテルかな?」
「ッ、ちーちゃ…」
かわいらしい笑みとは裏腹に、大胆なセリフを吐く千尋に、大和は言葉を詰まらせる。
何のつもりだ、なんて。それこそそんな野暮なこと、言えないけれど。
back next
「あ、うん」
大和は一瞬だけ、千尋の抜けた一団を見渡した後、千尋の言葉に急かされるように、踵を返して歩き始めた。呆気に取られている男たちを振り返りもせず、千尋もその後に続く。
こうすることを、こうなることを望んでいたはずなのに、そのとおりの展開になって、大和自身が一番驚いている。やはり千尋は、まだまだ計り知れない。
店の外に出て、それでも千尋が付いて来てくれているのか不安になって、少しだけ振り返れば、千尋は、感情の見えない表情で、大和の後ろを歩いていた。
前回会ったあのイブの夜、すっかり酔っ払って、ゆるゆるになっていたときの雰囲気は、そこにはない。
でも今日もお酒を飲んでいたし、もうしばらくしたら、あんなふうになっていたんだろうか、あの男たちの前で。それは冗談じゃないと思う……そんなことを言う権利、大和にはないんだけれど。
「…乗って?」
「……」
駐車場に辿り着き、助手席のドアを開けてやると、千尋は大和を一瞥してから、何も言わずに車に乗り込んだ。
ご丁寧にドアまで閉めてやり、運転席のほうへと回ると、窓ガラス越し、千尋があくびをしながら、両腕を前に突き出して伸びをしているのが見える。
かくものん気な様子の千尋に、かえって大和のほうが戸惑ってしまう。
仕掛けたのは大和とはいえ、たった今、合コンに参加していた千尋のこと、有無を言わさずに連れて来たのだ。一歩間違えたら、修羅場になっていたかもしれないのに。
「で、どこ連れてってくれるの?」
「え?」
「だって、車に乗せたから。どっか行くんじゃないの? 言っとくけど俺、キレイな夜景とか、興味ないからね」
シレッとそう言い放って、千尋は不敵なく笑ってみせた。
それはまるで、ドラマのワンシーンのようだと思った。けれど、勢いに任せて千尋のところへやって来て、彼を連れ出して、ドラマだったらこんなとき、一体どこへ向かうんだろう。
「どこ行きたい? なんて聞くのは、野暮だよね」
「だね」
大和が冗談めかして言うと、千尋は呆れるでもなく、楽しげに口の端を上げた。
遥希から合コンの話を聞いて、頭に血が上って衝動的な行動に出たものの、実際のところ、そこから先のことなんて、何も考えていなかった。
「――――でも、」
千尋は笑顔のまま、大和のほうへと身を乗り出した。
顔が、近い。
「こんなふうに掻っ攫って来たからには、やっぱホテルかな?」
「ッ、ちーちゃ…」
かわいらしい笑みとは裏腹に、大胆なセリフを吐く千尋に、大和は言葉を詰まらせる。
何のつもりだ、なんて。それこそそんな野暮なこと、言えないけれど。
back next
- 関連記事
-
- 恋の女神は微笑まない (22) (2014/05/27)
- 恋の女神は微笑まない (21) (2014/05/26)
- 恋の女神は微笑まない (20) (2014/05/25)
- BL小説ランキング参加中です。クリックいただけたら嬉しいです。
- コメントや拍手、ありがとうございます。拍手の公開コメントへのお返事はこちらから。それ以外は、コメントをいただいた記事に返信いたします。
- お題配布サイト「明日」はひっそりまったり更新中です。毎日更新しない日誌「遊び心がない」もよろしくね。