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rain in my heart (1)
2012.12.19 Wed
夕方から降り出した雨は、止む気配を見せずにシトシトと降り続けている。時折雨足が強くなるのか、テレビの音に雨音が混じる。
テレビではそれほどおもしろくもないバラエティショー。怜士(レイジ)は煙草の煙を燻らせながら、ぼんやりと画面を見つめていた。
――――ピンポーン…。
遠慮がちに玄関から音がする。チラリと玄関に視線を向けてから、煙草を消して玄関に向かった。モニターで来訪者の姿を確認する。
「蒼衣(アオイ)…」
俯いてはいたけれど、それが蒼衣であることはすぐに分かった。怜士が急いでドアを開けると、その音に反応して蒼衣が顔を上げた。
蒼衣はもうびしょ濡れで、彼の立っているところは、もう水溜りになっている。
「怜士くん…」
蒼衣の色をなくした唇が動いた。
怜士は事情を聞くより先に蒼衣を家に上げ、バスタオルを持ってきて蒼衣に渡したけれど、蒼衣は受け取ったバスタオルを胸のところで抱き締めたまま、動かなかった。
「風邪引くといけないから」
怜士は蒼衣をバスルームに連れていった。風呂にお湯を溜めるには時間が掛かるので、シャワーを使わせる。
「シャワーだけど、ちゃんとあったまれよ? 着替え、出しとくから」
「…ゴメン」
小さく謝って、蒼衣はドアを締めた。怜士は、蒼衣がシャワーを使い始めると、濡れた蒼衣の服を洗濯機に入れた。
洗濯機の稼動する音に、テレビの音と雨音、そしてシャワーの水音。不協和音に耐えられず、怜士はテレビを消した。
キッチンでミルクを温める。少しだけ砂糖を入れて、カップに注いだ。自分の分にはコーヒーをブラックで。零さないように気を付けながらリビングに戻った。
少ししてシャワーの音が止み、蒼衣が現れた。新しい煙草に火をつけていた怜士は、チラッと視線だけを向けた。やはり蒼衣に怜士の服は大きく、ズボンの裾は折り返しているし、シャツも袖の先から指先が少ししか出ていない。
「ミルク温めたから」
「…ありがと」
タオルは首から掛けたきり、それで頭は拭いていないようで、髪の先からポタポタと雫が落ちている。
「頭、拭けよ。そのままじゃ風邪引くだろ?」
「…うん」
答えて、蒼衣はノロノロと手を動かした。ある程度髪の水分を拭き取ると、蒼衣はミルクの入ったカップに手を伸ばした。チラッと怜士を見てからカップに口を付ける。
怜士は点いていないテレビの画面を見つめて、煙草を吸っていた。
「卓(スグル)と、別れた」
1口飲んでから、蒼衣ははっきりとそう言った。
怜士はゆっくりと蒼衣のほうを向いたが、「そう」とだけ答えた。蒼衣はまた1口飲んだ。怜士は煙草を消して、コーヒーに手を伸ばした。少し冷めかけている。
カタッ…という音がしてふと視線を上げると、テーブルに置いたカップを、蒼衣が両手でギュッと握っていた。
「…ケンカしたくらいで、『別れる』なんて言うなよ」
蒼衣は卓とケンカをすると、決まって怜士の家を尋ねる。そしていつも『卓と別れる』と言う。だから怜士も、いつもと同じように、いつもと同じセリフを吐く。
けれど今晩の蒼衣の反応は、いつもと違っていた。
「いつものケンカとは違う」
「同じだよ」
「違うの……『別れる』じゃないんだ。『別れた』んだ」
なるほど確かに蒼衣は先ほど、『卓とはもう別れる』ではなく、『卓と別れた』と言った。
蒼衣は顔を上げずに、冷めかけたミルクを飲んだ。怜士はコーヒーを飲み干し、空になったカップを手のひらの中で弄んでいた。
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テレビではそれほどおもしろくもないバラエティショー。怜士(レイジ)は煙草の煙を燻らせながら、ぼんやりと画面を見つめていた。
――――ピンポーン…。
遠慮がちに玄関から音がする。チラリと玄関に視線を向けてから、煙草を消して玄関に向かった。モニターで来訪者の姿を確認する。
「蒼衣(アオイ)…」
俯いてはいたけれど、それが蒼衣であることはすぐに分かった。怜士が急いでドアを開けると、その音に反応して蒼衣が顔を上げた。
蒼衣はもうびしょ濡れで、彼の立っているところは、もう水溜りになっている。
「怜士くん…」
蒼衣の色をなくした唇が動いた。
怜士は事情を聞くより先に蒼衣を家に上げ、バスタオルを持ってきて蒼衣に渡したけれど、蒼衣は受け取ったバスタオルを胸のところで抱き締めたまま、動かなかった。
「風邪引くといけないから」
怜士は蒼衣をバスルームに連れていった。風呂にお湯を溜めるには時間が掛かるので、シャワーを使わせる。
「シャワーだけど、ちゃんとあったまれよ? 着替え、出しとくから」
「…ゴメン」
小さく謝って、蒼衣はドアを締めた。怜士は、蒼衣がシャワーを使い始めると、濡れた蒼衣の服を洗濯機に入れた。
洗濯機の稼動する音に、テレビの音と雨音、そしてシャワーの水音。不協和音に耐えられず、怜士はテレビを消した。
キッチンでミルクを温める。少しだけ砂糖を入れて、カップに注いだ。自分の分にはコーヒーをブラックで。零さないように気を付けながらリビングに戻った。
少ししてシャワーの音が止み、蒼衣が現れた。新しい煙草に火をつけていた怜士は、チラッと視線だけを向けた。やはり蒼衣に怜士の服は大きく、ズボンの裾は折り返しているし、シャツも袖の先から指先が少ししか出ていない。
「ミルク温めたから」
「…ありがと」
タオルは首から掛けたきり、それで頭は拭いていないようで、髪の先からポタポタと雫が落ちている。
「頭、拭けよ。そのままじゃ風邪引くだろ?」
「…うん」
答えて、蒼衣はノロノロと手を動かした。ある程度髪の水分を拭き取ると、蒼衣はミルクの入ったカップに手を伸ばした。チラッと怜士を見てからカップに口を付ける。
怜士は点いていないテレビの画面を見つめて、煙草を吸っていた。
「卓(スグル)と、別れた」
1口飲んでから、蒼衣ははっきりとそう言った。
怜士はゆっくりと蒼衣のほうを向いたが、「そう」とだけ答えた。蒼衣はまた1口飲んだ。怜士は煙草を消して、コーヒーに手を伸ばした。少し冷めかけている。
カタッ…という音がしてふと視線を上げると、テーブルに置いたカップを、蒼衣が両手でギュッと握っていた。
「…ケンカしたくらいで、『別れる』なんて言うなよ」
蒼衣は卓とケンカをすると、決まって怜士の家を尋ねる。そしていつも『卓と別れる』と言う。だから怜士も、いつもと同じように、いつもと同じセリフを吐く。
けれど今晩の蒼衣の反応は、いつもと違っていた。
「いつものケンカとは違う」
「同じだよ」
「違うの……『別れる』じゃないんだ。『別れた』んだ」
なるほど確かに蒼衣は先ほど、『卓とはもう別れる』ではなく、『卓と別れた』と言った。
蒼衣は顔を上げずに、冷めかけたミルクを飲んだ。怜士はコーヒーを飲み干し、空になったカップを手のひらの中で弄んでいた。
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けいったん ⇒
前回の作品とは ガラっと変わって しっとり大人な雰囲気な作品
ちょっと 意味深な関係の二人の感じが 堪りません!
続きが気になる~♪
8(´∀`8*))♪ワクワク♪((*8´∀`)8...byebye☆
ちょっと 意味深な関係の二人の感じが 堪りません!
続きが気になる~♪
8(´∀`8*))♪ワクワク♪((*8´∀`)8...byebye☆
- |2012.12.19
- |Wed
- |09:58
- |URL
- |EDIT|
ちよ ⇒
如月久美子 ⇒ >けいったんさん
いっちゃんがハチャメチャだった分、すごい大人に見えますよね…(笑)
意味深なお2人の登場です!
短いお話ですが、お付き合いくださいませ。
コメントありがとうございました!
意味深なお2人の登場です!
短いお話ですが、お付き合いくださいませ。
コメントありがとうございました!
- |2012.12.19
- |Wed
- |22:46
- |URL
- |EDIT|
如月久美子 ⇒ >ちよさん
いきなり3人も登場させちゃって、ややこしい感じですみません(>_<)
想いの交錯するお話です。
短いお話ですが、お付き合いくださいませ。
コメントありがとうございました!
想いの交錯するお話です。
短いお話ですが、お付き合いくださいませ。
コメントありがとうございました!
- |2012.12.19
- |Wed
- |22:50
- |URL
- |EDIT|