恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

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暴君王子のおっしゃることには! (152)


「まぁ…あんときは、ユキちゃんが帰って来ないの寂しくて、航平くんが、女の子の家に行けばいいて言ったの、名案! て思ったし……別にいいけど。…でも結局、そっからズルズルといろんな女の子のところに入り浸ってたんだけど」

 やはり、一伽が家に帰っていなかった本当の理由は、航平が想像したとおりだった。
 航平の言葉が引き金になったことを気にしたわけではないが、航平は何も突っ込まなかった。

「…お前、せめて今日くらいは、仕事終わったら、早く帰れよ?」
「分かってるよ。女の子のトコは、もう当分行かない。仕事終わったら、ご飯して、後は直帰します!」
「ホントだな? ちゃんと帰らなかったら、給料カットすんぞ?」
「ちょっ!」

「…もういいですかー?」

 横暴店長! と、一伽がいつもの調子で言おうとしたら、いい加減堪え切れなくなった志信が、ドアを開けて顔を覗かせた。
 相変わらず、微妙で絶妙な空気の読めなさを持っているのだ、志信は。

「開店の準備、終わったのか?」
「終わりましたよー。どっかの誰かさんのせいで、たった1人で終わらせました」

 わざと恩着せがましく言ってくる志信を一伽は一睨みしたが、航平は逆にニンマリした。

「お前の給料カットした分、志信の手当てに付けてやるわ」
「だから、まっすぐ帰る、つってんじゃんっ!」

 ここまで言われたら、どこにも寄らずに(吸血はするけど)、絶対にまっすぐ帰ってやる! と意気込む、負けず嫌いの一伽は、まんまと航平に嵌められていたことなど、気付く由もないのだった。



一伽 と 雪乃

 女の子の血はおいしいし、エッチも気持ちいいし、言うことなし。
 そんなこと、一伽はずっと前から知っている。

 だからあの日、航平に、『女の子の家でいいじゃん』と言われたときは、あぁそうだ! と、純粋にそう思った。
 何をそんなに悩んで、一緒に侑仁の家に行こうと航平を誘っていたのか、俺には女の子がいるじゃん! と、ノリノリで美亜に連絡した(方法は、どれにしようかな、だったけれど)(まぁ神様が選んでくれたわけだし)。

 それからは、毎日違う女の子に連絡しては、血を吸ったり、気持ちいいことをしたりした(気持ちいいことだけならずっと美亜でもよかったけれど、吸血は毎日同じ人というわけにはいかないので)。
 もとから一伽の携帯電話には、女の子がいっぱい登録されているから、日替わりに違う女の子に連絡したって、当分尽きることはなかったし、相手の都合が悪いなら、ナンパすればそれでよかった。

 吸血して、気持ちいいことをして、朝まで一緒にいる。雪乃が家にいなくても、これで一伽は寂しくない。
 そう、もともとは、雪乃が光宏の家にお泊りして、一伽が帰っても1人だから、その寂しさを紛らわすために、女の子のところに転がり込んだのが始まりだったのだ。
 なのにいつの間にか一伽は、雪乃が家にいてもいなくても関係なく、女の子のところで過ごすようになっていた。

 だって、女の子はかわいいし。それに柔らかくて、気持ちいい。彼女ではないから、別に面倒なこともないし。
 一伽はとりわけかわいい子が好きだから、携帯電話に登録されている子も、みんなお人形さんみたいに、かわいい子ばかり。スラッとしていて、目もパッチリ大きくて。

 …でもそうなると、どの女の子を抱いていても、みんな同じように見えてくるから不思議だ。
 顔の造作は確かにみんな違うのに、みんなそれぞれにかわいいのに、だんだん誰を抱いているのか分からなくなって、けれど、その体の柔らかさや気持ち良さに、溺れてしまう。

 もしかしたら、こういうのを『空しい』ていうのかも――――なんて、急に悟りを開いたようなことを思ったこともあったけれど、それはよく分からなかった。
 ただ、何となくこんなことをしていても、何かつまんないなぁ、て思うようになっていて、でもやっぱり女の子はかわいくて大好きだから、連絡を取ることをやめられないでいた。



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