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暴君王子のおっしゃることには! (149)
2012.09.27 Thu
そんなふうに航平が勝手にヤキモキしていたら、思い掛けない人――――雪乃から電話を貰って、航平は心底驚いた。
雪乃は、一伽の就職時の保証人にもなっていたし、緊急時の連絡先にもなっていたから、互いに携帯電話の番号も知っていたのだが、実際に掛かって来たのは、これが初めてだった。
『あの、すいません、忙しいところ…』
「うぅん、構わないけど。どうした?」
それほど面識のない航平が相手のせいか(ましてや一伽の勤務先の店長でもあるし)、同じ吸血鬼とはいえ、一伽と違って雪乃は、ごく常識的な、丁寧な挨拶で話を始めた。
『あの…、仕事って、いつごろまで忙しいんですか?』
「え、仕事? 何時に終わるか、てこと?」
すでに店の営業時間は終了していて、志信も一伽も帰っていて、航平ももうすぐ店を出るところだ。
航平に何か用事でもあるのだろうか。
『何時に、ていうか…、いつごろまで忙しいのかな、て。いっちゃん、あ、えと、一伽…』
「いっちゃん、でええよ、ユキちゃん」
普段から一伽のことを『いっちゃん』と呼んでいる雪乃は、友だち相手の電話でもないのに、ついいつもの癖でそう呼んでしまい、慌てて言い直したが、そんなにかしこまることはない、と航平はそう言った。
航平が雪乃のことを、わざと『ユキちゃん』と呼んだら、電話の向こうで雪乃の笑う気配がして、少し緊張が解けたのか、ホッと息をつく声が聞こえた。
しかし、続く雪乃の言葉に、航平はのん気に笑ってはいられなくなった。
『もうずっと残業続きでしょう? いつくらいまで、そんな状態が続くのかな、て思って』
「は?」
残業続き?
いや、今日だっていつもどおりの営業時間に店を閉めて、いつもどおりに後片付けをして、一伽は帰っていったけれど。
『一応、朝は帰って来てくれるからいいけど、着替えて支度したら、またすぐ仕事でしょう? いっちゃん、お店で寝てるから大丈夫、て言うけど、やっぱり心配だし…』
「…………」
一体雪乃は何を言い出したのかと、航平は思考が止まり掛けたけれど、どうやら一伽は、ここ最近、朝の少しの時間しか家に帰っていないのを、仕事が忙しいからだと雪乃に言っているようだ。
素直な雪乃が、一伽のくだらない嘘を信じているようなので、ひとまず航平は雪乃に話を合わせてやることにした。
「あー…ゴメンな、ユキちゃん。今日はちょっとまだ無理だけど、なるべく早いうちに、早く帰らすようにする」
『いえ、みんなが忙しいなら仕方ないし、あの、俺がこんなこと言うのも変なのに、すみません…』
本当は全然そんなことないのに、雪乃が本当に申し訳なさそうに言ってくるから、航平も心苦しくなってくる。
まったく一伽は何をやっているんだ。
「うぅん、ありがとう、心配してくれて」
『そんなんじゃ…。俺、最初はいっちゃん、俺のこと嫌いになって帰って来ないのかと思ってたんです。いっちゃんのお仕事、お店で接客したり、レジしたりとかしか知らなかったから、閉店時間過ぎたら、後片付けとかすれば帰れるのかと思ってて、』
「あぁ…」
『でもよく考えたら、俺も、お店終わった後、時々打ち合わせとかあって、遅くなることあるな、て思って』
やはり雪乃は、下手な演技で鎌を掛けているのではなく、本気で一伽の言葉を信じているようだった。
何だか航平は何も言えなくなってしまい、相槌を打つのが精いっぱいになっていた。
『すいませんでした、忙しいのにこんな電話して…』
「いや、大丈夫。気にしないで」
『あ、あと、出来たら、俺が電話したこと、いっちゃんに内緒にしてもらえませんか? 余計な心配したことバレたら、いっちゃん怒るかもしれないから』
「あー…、まぁ…」
申し訳ないけれど、それは出来ない約束だと航平は思った。
今すぐにでも一伽を取っ捕まえて、締め上げてやりたい。そして、何つまらない嘘をついて、雪乃に心配を掛けているんだと言ってやりたい。本当はどこで何をしていたんだ、と問い詰めたいのに。
back next
雪乃は、一伽の就職時の保証人にもなっていたし、緊急時の連絡先にもなっていたから、互いに携帯電話の番号も知っていたのだが、実際に掛かって来たのは、これが初めてだった。
『あの、すいません、忙しいところ…』
「うぅん、構わないけど。どうした?」
それほど面識のない航平が相手のせいか(ましてや一伽の勤務先の店長でもあるし)、同じ吸血鬼とはいえ、一伽と違って雪乃は、ごく常識的な、丁寧な挨拶で話を始めた。
『あの…、仕事って、いつごろまで忙しいんですか?』
「え、仕事? 何時に終わるか、てこと?」
すでに店の営業時間は終了していて、志信も一伽も帰っていて、航平ももうすぐ店を出るところだ。
航平に何か用事でもあるのだろうか。
『何時に、ていうか…、いつごろまで忙しいのかな、て。いっちゃん、あ、えと、一伽…』
「いっちゃん、でええよ、ユキちゃん」
普段から一伽のことを『いっちゃん』と呼んでいる雪乃は、友だち相手の電話でもないのに、ついいつもの癖でそう呼んでしまい、慌てて言い直したが、そんなにかしこまることはない、と航平はそう言った。
航平が雪乃のことを、わざと『ユキちゃん』と呼んだら、電話の向こうで雪乃の笑う気配がして、少し緊張が解けたのか、ホッと息をつく声が聞こえた。
しかし、続く雪乃の言葉に、航平はのん気に笑ってはいられなくなった。
『もうずっと残業続きでしょう? いつくらいまで、そんな状態が続くのかな、て思って』
「は?」
残業続き?
いや、今日だっていつもどおりの営業時間に店を閉めて、いつもどおりに後片付けをして、一伽は帰っていったけれど。
『一応、朝は帰って来てくれるからいいけど、着替えて支度したら、またすぐ仕事でしょう? いっちゃん、お店で寝てるから大丈夫、て言うけど、やっぱり心配だし…』
「…………」
一体雪乃は何を言い出したのかと、航平は思考が止まり掛けたけれど、どうやら一伽は、ここ最近、朝の少しの時間しか家に帰っていないのを、仕事が忙しいからだと雪乃に言っているようだ。
素直な雪乃が、一伽のくだらない嘘を信じているようなので、ひとまず航平は雪乃に話を合わせてやることにした。
「あー…ゴメンな、ユキちゃん。今日はちょっとまだ無理だけど、なるべく早いうちに、早く帰らすようにする」
『いえ、みんなが忙しいなら仕方ないし、あの、俺がこんなこと言うのも変なのに、すみません…』
本当は全然そんなことないのに、雪乃が本当に申し訳なさそうに言ってくるから、航平も心苦しくなってくる。
まったく一伽は何をやっているんだ。
「うぅん、ありがとう、心配してくれて」
『そんなんじゃ…。俺、最初はいっちゃん、俺のこと嫌いになって帰って来ないのかと思ってたんです。いっちゃんのお仕事、お店で接客したり、レジしたりとかしか知らなかったから、閉店時間過ぎたら、後片付けとかすれば帰れるのかと思ってて、』
「あぁ…」
『でもよく考えたら、俺も、お店終わった後、時々打ち合わせとかあって、遅くなることあるな、て思って』
やはり雪乃は、下手な演技で鎌を掛けているのではなく、本気で一伽の言葉を信じているようだった。
何だか航平は何も言えなくなってしまい、相槌を打つのが精いっぱいになっていた。
『すいませんでした、忙しいのにこんな電話して…』
「いや、大丈夫。気にしないで」
『あ、あと、出来たら、俺が電話したこと、いっちゃんに内緒にしてもらえませんか? 余計な心配したことバレたら、いっちゃん怒るかもしれないから』
「あー…、まぁ…」
申し訳ないけれど、それは出来ない約束だと航平は思った。
今すぐにでも一伽を取っ捕まえて、締め上げてやりたい。そして、何つまらない嘘をついて、雪乃に心配を掛けているんだと言ってやりたい。本当はどこで何をしていたんだ、と問い詰めたいのに。
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COMMENT-FORM
けいったん ⇒
(。ノω<。)ァチャ-
いっちゃんは、何をやってんだかー
ユキちゃんに嘘を吐いてまで 何処に?
航平!
ここは ビシっと お願いします。
d(≧ω≦)ネッネッ...byebye☆
いっちゃんは、何をやってんだかー
ユキちゃんに嘘を吐いてまで 何処に?
航平!
ここは ビシっと お願いします。
d(≧ω≦)ネッネッ...byebye☆
- |2012.09.27
- |Thu
- |09:13
- |URL
- |EDIT|
如月久美子 ⇒ >けいったんさん
実はいっちゃん、ユキちゃんにすら嘘をついておりました(>_<)
いろいろと判断がつかなくなっているようで…。
ここはやっぱり航平くんがビシッと決めるしかないですよねっ!
けいったんさんからの強いプッシュもありますし。
お願いしますっ。
コメントありがとうございました!
いろいろと判断がつかなくなっているようで…。
ここはやっぱり航平くんがビシッと決めるしかないですよねっ!
けいったんさんからの強いプッシュもありますし。
お願いしますっ。
コメントありがとうございました!
- |2012.09.27
- |Thu
- |23:35
- |URL
- |EDIT|