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君を覆うやさしい銀河 (4)
2011.12.25 Sun
「あ、でもちょっと待って!」
「え?」
2人のサンタクロースに促され、ベッドに向かい掛けた和衣だったが、何かを思い付いたのか、急にその脇をすり抜けて、部屋の隅にある引き出しに向かった。
睦月と翔真が、何事? と思っていると、和衣は何やらゴソゴソと引き出しを漁っている。
「和衣くん?」
「はい! これ、サンタさんに上げる!」
クルリと振り返った和衣は、引き出しから取り出したものを2人のほうに差し出した。
見れば、それは厚紙で作った王冠とメダルの付いた首飾りで、折り紙で作ったの飾りが貼り付けてある。
「ホントはね、これね、両方で1個なんだけど、サンタさん2人だからね、」
どうして王冠とメダルなのかは分からないが、とにかく和衣は、サンタクロースにプレゼントするため、これらを作っておいたようで、本当は、王冠とメダルでセットなのだが、思いがけずサンタクロースが2人来たので、1人に王冠、もう1人にメダルを上げることにしたらしい。
「これくれるの? 俺らに?」
「うん! サンタさん来たらね、上げようと思ってたの。でもね、ママが、サンタさんは和衣が寝てからじゃなきゃ来ないから、上げるのは無理よ、てゆったからね、上げらんないかな、て思って、しまってたの」
「そうなんだ」
「サンタさん、ありがとう」
まさか本当にサンタクロースにお礼の品を上げられるとは思ってもみなかったのか、和衣は嬉しそうに、翔真の頭に帽子の上から王冠を被せ、睦月の首にメダルを掛けてあげた。
「ありがとう、和衣くん」
クリスマスの朝、プレゼントを開けた子どもたちが喜んでいる姿を見るだけでサンタクロースになってよかったと思えるのだけれど、こうやって感謝の気持ちを表されれば、やっぱり嬉しい。
翔真は和衣の頭を撫でると、ギュッとその小さな体を抱き締めた。
「…じゃあ、もうおふとん入ろっか」
「はいっ」
睦月は、首に掛けられたメダルを、まだ物珍しそうに見ていたが、翔真は和衣の背中を押して、ベッドに向かわせる。
今日の出来事にすっかり感激している和衣は、翔真の言うことを、今度こそ素直に聞いて、ベッドに上がった。
「これ、プレゼント?」
「そうだよ。でも、開けるのは朝になってから。今はもう寝るんだよ?」
「はーい」
当たり前だが、和衣は枕元のプレゼントを気にするが、翔真にそう言われると、和衣は素直にふとんに潜った。
「じゃあ、目閉じて?」
「…ん。あ、サンタさん!」
「えっ!?」
目を閉じた和衣は、しかし次の瞬間、またパッと目を開けると、手を伸ばして、睦月のサンタ服の裾を掴んだ。
手の届く位置に立っていたのが睦月だったから、たまたまそうなったのだろうが、服を掴まれた睦月はビックリして、まじまじと和衣の顔を見た。
「サンタさん、来年もまた来てくれる…?」
和衣は、2人のサンタクロースを見つめながら、おずおずと尋ねた。
これが最初で最初の出会いになってしまったら、どうしよう。もしそうなら、悪い子になって、まだ起きてる。
「…和衣くんがいい子にしてたら、来年もまた来るよ」
翔真はベッドサイドに屈むと、まだ睦月の服を掴んでいる和衣の顔を覗き込んだ。
「ホント?」
「ホント」
ホントにホント? と視線を向ける和衣に、翔真は小指を差し出した。
指切りの手。
和衣はぱぁ…と笑顔になると、睦月のサンタ服から手を離し、翔真の小指に自分の小指を絡めた。
「約束ね、サンタさん」
和衣が、翔真と小指を解いてもまだ手を出したままでいるので、睦月は視線を彷徨わせつつも、和衣と指切りをした(いくら睦月でも、ここで指切りを断るほど、空気の読めないサンタではないのだ)。
「サンタさん、来年もまた来てね。和衣、いい子で待ってるから! それに、今度はちゃんとプレゼント2人分、作る!」
「う…うん」
張り切ってそう言う和衣に、睦月はコクンと頷いた。
「来年もまた、2人で来るよ。だから和衣くんも、お父さんとお母さんの言うことを聞いて、いい子で待っててね」
「うん」
翔真は和衣の頭を撫でてから、その腕をふとんの中にしまってあげた。
睦月は離れた手をどこにやっていいか分からなくて、何となく貰ったメダルを弄っている。
「おやすみ、和衣くん」
「ぅん…」
目を閉じた和衣が眠りに就いたのを確認して、睦月と翔真は和衣の部屋を出て行った。
睦月と翔真がプレゼントセンターに戻って来ると、すでに配達を終えたサンタクロース仲間たちがだいぶ帰って来ていて、センターは混雑していた。
配達が終わったことを報告して、ソリを片付ければ、今年のお仕事は終了。後はゆっくりとお正月休みを迎えるだけだ。
「で、むっちゃん、これからどうすんの?」
大事な役目を終えたソリをキレイにして、ガレージにしまうと、翔真は睦月を振り返った。
「これから? とりあえず、帰って爆睡」
「いや、その『これから』じゃなくて、今後のこと。むっちゃん、サンタ辞めるんでしょ? 次、何の精になるの?」
「あ…」
翔真に尋ねられ、睦月はピタリと固まった。
そういえば睦月は今日、出発前からずっと、もうサンタクロースなんて辞めてやる! と言い続けていたのだ。
一旦何かの精になっても、やはり向いていないからと、途中で職種替えする者は少なからずいるので、睦月がサンタクロースを辞めることについて、翔真は別に咎めるつもりも、何か言うつもりもないのだが、友人として、睦月を気に掛ける気持ちはある。
睦月は、いろいろと心配な子だから。
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「え?」
2人のサンタクロースに促され、ベッドに向かい掛けた和衣だったが、何かを思い付いたのか、急にその脇をすり抜けて、部屋の隅にある引き出しに向かった。
睦月と翔真が、何事? と思っていると、和衣は何やらゴソゴソと引き出しを漁っている。
「和衣くん?」
「はい! これ、サンタさんに上げる!」
クルリと振り返った和衣は、引き出しから取り出したものを2人のほうに差し出した。
見れば、それは厚紙で作った王冠とメダルの付いた首飾りで、折り紙で作ったの飾りが貼り付けてある。
「ホントはね、これね、両方で1個なんだけど、サンタさん2人だからね、」
どうして王冠とメダルなのかは分からないが、とにかく和衣は、サンタクロースにプレゼントするため、これらを作っておいたようで、本当は、王冠とメダルでセットなのだが、思いがけずサンタクロースが2人来たので、1人に王冠、もう1人にメダルを上げることにしたらしい。
「これくれるの? 俺らに?」
「うん! サンタさん来たらね、上げようと思ってたの。でもね、ママが、サンタさんは和衣が寝てからじゃなきゃ来ないから、上げるのは無理よ、てゆったからね、上げらんないかな、て思って、しまってたの」
「そうなんだ」
「サンタさん、ありがとう」
まさか本当にサンタクロースにお礼の品を上げられるとは思ってもみなかったのか、和衣は嬉しそうに、翔真の頭に帽子の上から王冠を被せ、睦月の首にメダルを掛けてあげた。
「ありがとう、和衣くん」
クリスマスの朝、プレゼントを開けた子どもたちが喜んでいる姿を見るだけでサンタクロースになってよかったと思えるのだけれど、こうやって感謝の気持ちを表されれば、やっぱり嬉しい。
翔真は和衣の頭を撫でると、ギュッとその小さな体を抱き締めた。
「…じゃあ、もうおふとん入ろっか」
「はいっ」
睦月は、首に掛けられたメダルを、まだ物珍しそうに見ていたが、翔真は和衣の背中を押して、ベッドに向かわせる。
今日の出来事にすっかり感激している和衣は、翔真の言うことを、今度こそ素直に聞いて、ベッドに上がった。
「これ、プレゼント?」
「そうだよ。でも、開けるのは朝になってから。今はもう寝るんだよ?」
「はーい」
当たり前だが、和衣は枕元のプレゼントを気にするが、翔真にそう言われると、和衣は素直にふとんに潜った。
「じゃあ、目閉じて?」
「…ん。あ、サンタさん!」
「えっ!?」
目を閉じた和衣は、しかし次の瞬間、またパッと目を開けると、手を伸ばして、睦月のサンタ服の裾を掴んだ。
手の届く位置に立っていたのが睦月だったから、たまたまそうなったのだろうが、服を掴まれた睦月はビックリして、まじまじと和衣の顔を見た。
「サンタさん、来年もまた来てくれる…?」
和衣は、2人のサンタクロースを見つめながら、おずおずと尋ねた。
これが最初で最初の出会いになってしまったら、どうしよう。もしそうなら、悪い子になって、まだ起きてる。
「…和衣くんがいい子にしてたら、来年もまた来るよ」
翔真はベッドサイドに屈むと、まだ睦月の服を掴んでいる和衣の顔を覗き込んだ。
「ホント?」
「ホント」
ホントにホント? と視線を向ける和衣に、翔真は小指を差し出した。
指切りの手。
和衣はぱぁ…と笑顔になると、睦月のサンタ服から手を離し、翔真の小指に自分の小指を絡めた。
「約束ね、サンタさん」
和衣が、翔真と小指を解いてもまだ手を出したままでいるので、睦月は視線を彷徨わせつつも、和衣と指切りをした(いくら睦月でも、ここで指切りを断るほど、空気の読めないサンタではないのだ)。
「サンタさん、来年もまた来てね。和衣、いい子で待ってるから! それに、今度はちゃんとプレゼント2人分、作る!」
「う…うん」
張り切ってそう言う和衣に、睦月はコクンと頷いた。
「来年もまた、2人で来るよ。だから和衣くんも、お父さんとお母さんの言うことを聞いて、いい子で待っててね」
「うん」
翔真は和衣の頭を撫でてから、その腕をふとんの中にしまってあげた。
睦月は離れた手をどこにやっていいか分からなくて、何となく貰ったメダルを弄っている。
「おやすみ、和衣くん」
「ぅん…」
目を閉じた和衣が眠りに就いたのを確認して、睦月と翔真は和衣の部屋を出て行った。
睦月と翔真がプレゼントセンターに戻って来ると、すでに配達を終えたサンタクロース仲間たちがだいぶ帰って来ていて、センターは混雑していた。
配達が終わったことを報告して、ソリを片付ければ、今年のお仕事は終了。後はゆっくりとお正月休みを迎えるだけだ。
「で、むっちゃん、これからどうすんの?」
大事な役目を終えたソリをキレイにして、ガレージにしまうと、翔真は睦月を振り返った。
「これから? とりあえず、帰って爆睡」
「いや、その『これから』じゃなくて、今後のこと。むっちゃん、サンタ辞めるんでしょ? 次、何の精になるの?」
「あ…」
翔真に尋ねられ、睦月はピタリと固まった。
そういえば睦月は今日、出発前からずっと、もうサンタクロースなんて辞めてやる! と言い続けていたのだ。
一旦何かの精になっても、やはり向いていないからと、途中で職種替えする者は少なからずいるので、睦月がサンタクロースを辞めることについて、翔真は別に咎めるつもりも、何か言うつもりもないのだが、友人として、睦月を気に掛ける気持ちはある。
睦月は、いろいろと心配な子だから。
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