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君を覆うやさしい銀河 (3)
2011.12.25 Sun
「ねぇショウちゃん、次が最後だよね? これ配ったら終わりだよね?」
寒さと睡魔なら寒さが勝つと言いながら、やはり睡魔にも勝てそうもない……というか、戦う気もないらしい睦月は、あくび混じりにプレゼント配りをこなし、ようやく最後の1軒にまでたどり着いた。
「そだね」
「ヤッター!!」
後ろの席で、本気で喜んでいる睦月に、翔真は何度目かの溜め息を零し、最後の1軒の屋根の上にソリを停めた。
「むっちゃん、最後だからって、あんま浮かれてると…」
「ギャッ!」
「えっ!?」
危ないよ、と続けようとした翔真の言葉は、睦月の悲鳴によって掻き消された。
慌てて翔真がそちらを見れば、冷えて凍った屋根の斜面に足を滑らせた睦月が、尻餅を突いている。
「イッテー…」
「むっちゃん…」
あぁもう、どうしてこの子は、こんなにお約束どおりのことをするんだろう。
しかも、自分が悪いので、当たる相手がいないことは、睦月自身もちゃんと分かっているらしく、「何だよ、もぉ~!!」とか言いながら、滑った屋根をドタドタ踏んでいる。
「むっちゃん、行くよ」
「あぁ~もうっ! これ配ったら、絶対サンタなんか辞めてやるんだからっ」
サンタを辞める理由が、屋根で滑って転んだからだというのは、どうにも間抜けな気がするが、睦月がその気なら仕方がないか。
「えーっと、和衣くん、か…。あ、靴下置いてある」
最後のプレゼントを持って子ども部屋に入ると、その部屋の主である和衣はベッドで気持ちよさそうに眠っていて、その傍らには、かわいらしい靴下が置いてあった。
きっとこの子は、サンタクロースのこと、信じてくれてるんだろうな。
「むっちゃん、プレゼント……て、何してんの…!」
「え、せっかく靴下置いてあるからさ、入れといてあげようかと」
靴下の中にプレゼントは確かにそう言われているけれど、子ども用の靴下の中に、このプレゼントが入るわけがない。
分かっていてボケているのか、本気でそうしようとしているのか、とにかく翔真は、靴下の中にプレゼントを入れようとしていた睦月を止めた。
「ぅん…」
まさか睦月たちの話し声が聞こえたわけではないだろうに(睦月にしたら、人間はサンタクロースを信じていないから、絶対に見えるはずがないと思っているわけで)、しかしタイミングよく和衣がモゾリと動いたので、睦月も翔真も息を殺して動きを止めた。
サンタクロースが人間に見つかったらいけないという決まりはないのだが、見つかるといろいろ面倒なので、大抵のサンタは気付かれないように気を付けているのだ。
(おおおおお起きた!?)
(いやいやいやいや起きてない起きてない起きてない)
(起きるな起きるな起きるな)
2人は目だけで必死にそう会話をして、何とかこの状況をやり過ごそうとしたが、しかし現実はそんなに甘くはなかった。
「うぅん…」
和衣のまぶたがピクピク動いて、とうとうその手が目をこすり始めた。
ヤバい、このまま起きる気配だ。
いや、でも待て。もし和衣がサンタクロースの存在を信じていなければ、起きたとしても2人のことは見えないはずだ。もしかしたらやり過ごせるかもしれない。
「…ぅ?」
…しかし、現実はやはり、そんなに甘くはなかった。
「あっ、サンタさん!?」
パチリと目を開けた和衣は、視線の先に睦月と翔真を見つけ、ぴょんとベッドから飛び起きた。
やはり和衣には、サンタクロースが見えるのだ。
「キャー、サンタさん! 来てくれたの!」
ベッドを下りた和衣は、トタトタと2人のところに駆け寄って来て、嬉しそうに足元に纏わり付いた。
「サンタさん!」
「あー…と、こんばんは、和衣くん」
「サンタさん、和衣のこと知ってるの!?」
翔真が屈んで和衣に目線を合わせてやると、名前を呼んでもらった和衣は、それだけでキャ~と舞い上がっている。
あぁ、やっぱり子どもってかわいいな。
「ねぇサンタさん、何で2人? 和衣がいい子にしてたから、2人で来てくれたの!?」
「違う違う、俺らはまだ半人前で……ふがっ」
「はん…??」
一人前のサンタになるまでは、2人1組でプレゼントを配るのが決まりになっているのだが、それは子どもの和衣は知らなくていいことだ。
翔真は、隣に屈んで、そんな大人の事情をばらそうとする睦月の口を慌てて塞いだ。
「そうだよ、和衣くんがいい子にしてたから、2人で来たんだよ」
「しゅご~いっ!」
翔真の言葉を信じた和衣は、目をキラキラと輝かせる。
妖精が嘘はいけないが、この場合は仕方ないだろう。
「ねぇねぇサンタさん、どこから来たの? お空? お空から来たの? 和衣のお家、煙突ないのに、どっから入ったの!?」
サンタクロースに会えてすっかり興奮気味の和衣は、睦月の腕のしがみ付きながら、2人を質問攻めにする。
思い掛けない展開に睦月は動揺するが、まさかサンタクロースが、そばに来た子どもを振り払って蔑ろにするわけにもいかないので、大人しくされるがままになるしかない。
「サンタさんはね、煙突がなくても来れるんだよ、いい子がいるところには」
「和衣、いい子!?」
「うん。和衣くんがお父さんとお母さんの言うこと聞いて、いい子にしてたの、ちゃんと知ってるよ」
「キャー!」
そう言って翔真が頭を撫でてやると、和衣はピョンピョン飛び跳ねて喜んでくれる。
サンタクロースを信じていない人間が多いことは、翔真だって重々承知していて、だからこそ、和衣にこんなに喜んでもらえるのは嬉しい。
しかし、和衣があまりはしゃぎ過ぎて騒いでいると、お父さんやお母さんに和衣が起きていることがバレるかもしれない…と、翔真は和衣をベッドに向かわせようとする。
「和衣くん、いい子はもう寝る時間だよ? おふとんに行こ?」
「ぅー…」
翔真に言われ、和衣は困ったような顔をした。
まだまだサンタさんとお喋りをしていたいけれど、『いい子は』と付け加えられると、素直な和衣は、やっぱりもうおふとんに行かなければ、と思ってしまう。
それに、サンタさんの言うことは、ちゃんと聞かないと。
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寒さと睡魔なら寒さが勝つと言いながら、やはり睡魔にも勝てそうもない……というか、戦う気もないらしい睦月は、あくび混じりにプレゼント配りをこなし、ようやく最後の1軒にまでたどり着いた。
「そだね」
「ヤッター!!」
後ろの席で、本気で喜んでいる睦月に、翔真は何度目かの溜め息を零し、最後の1軒の屋根の上にソリを停めた。
「むっちゃん、最後だからって、あんま浮かれてると…」
「ギャッ!」
「えっ!?」
危ないよ、と続けようとした翔真の言葉は、睦月の悲鳴によって掻き消された。
慌てて翔真がそちらを見れば、冷えて凍った屋根の斜面に足を滑らせた睦月が、尻餅を突いている。
「イッテー…」
「むっちゃん…」
あぁもう、どうしてこの子は、こんなにお約束どおりのことをするんだろう。
しかも、自分が悪いので、当たる相手がいないことは、睦月自身もちゃんと分かっているらしく、「何だよ、もぉ~!!」とか言いながら、滑った屋根をドタドタ踏んでいる。
「むっちゃん、行くよ」
「あぁ~もうっ! これ配ったら、絶対サンタなんか辞めてやるんだからっ」
サンタを辞める理由が、屋根で滑って転んだからだというのは、どうにも間抜けな気がするが、睦月がその気なら仕方がないか。
「えーっと、和衣くん、か…。あ、靴下置いてある」
最後のプレゼントを持って子ども部屋に入ると、その部屋の主である和衣はベッドで気持ちよさそうに眠っていて、その傍らには、かわいらしい靴下が置いてあった。
きっとこの子は、サンタクロースのこと、信じてくれてるんだろうな。
「むっちゃん、プレゼント……て、何してんの…!」
「え、せっかく靴下置いてあるからさ、入れといてあげようかと」
靴下の中にプレゼントは確かにそう言われているけれど、子ども用の靴下の中に、このプレゼントが入るわけがない。
分かっていてボケているのか、本気でそうしようとしているのか、とにかく翔真は、靴下の中にプレゼントを入れようとしていた睦月を止めた。
「ぅん…」
まさか睦月たちの話し声が聞こえたわけではないだろうに(睦月にしたら、人間はサンタクロースを信じていないから、絶対に見えるはずがないと思っているわけで)、しかしタイミングよく和衣がモゾリと動いたので、睦月も翔真も息を殺して動きを止めた。
サンタクロースが人間に見つかったらいけないという決まりはないのだが、見つかるといろいろ面倒なので、大抵のサンタは気付かれないように気を付けているのだ。
(おおおおお起きた!?)
(いやいやいやいや起きてない起きてない起きてない)
(起きるな起きるな起きるな)
2人は目だけで必死にそう会話をして、何とかこの状況をやり過ごそうとしたが、しかし現実はそんなに甘くはなかった。
「うぅん…」
和衣のまぶたがピクピク動いて、とうとうその手が目をこすり始めた。
ヤバい、このまま起きる気配だ。
いや、でも待て。もし和衣がサンタクロースの存在を信じていなければ、起きたとしても2人のことは見えないはずだ。もしかしたらやり過ごせるかもしれない。
「…ぅ?」
…しかし、現実はやはり、そんなに甘くはなかった。
「あっ、サンタさん!?」
パチリと目を開けた和衣は、視線の先に睦月と翔真を見つけ、ぴょんとベッドから飛び起きた。
やはり和衣には、サンタクロースが見えるのだ。
「キャー、サンタさん! 来てくれたの!」
ベッドを下りた和衣は、トタトタと2人のところに駆け寄って来て、嬉しそうに足元に纏わり付いた。
「サンタさん!」
「あー…と、こんばんは、和衣くん」
「サンタさん、和衣のこと知ってるの!?」
翔真が屈んで和衣に目線を合わせてやると、名前を呼んでもらった和衣は、それだけでキャ~と舞い上がっている。
あぁ、やっぱり子どもってかわいいな。
「ねぇサンタさん、何で2人? 和衣がいい子にしてたから、2人で来てくれたの!?」
「違う違う、俺らはまだ半人前で……ふがっ」
「はん…??」
一人前のサンタになるまでは、2人1組でプレゼントを配るのが決まりになっているのだが、それは子どもの和衣は知らなくていいことだ。
翔真は、隣に屈んで、そんな大人の事情をばらそうとする睦月の口を慌てて塞いだ。
「そうだよ、和衣くんがいい子にしてたから、2人で来たんだよ」
「しゅご~いっ!」
翔真の言葉を信じた和衣は、目をキラキラと輝かせる。
妖精が嘘はいけないが、この場合は仕方ないだろう。
「ねぇねぇサンタさん、どこから来たの? お空? お空から来たの? 和衣のお家、煙突ないのに、どっから入ったの!?」
サンタクロースに会えてすっかり興奮気味の和衣は、睦月の腕のしがみ付きながら、2人を質問攻めにする。
思い掛けない展開に睦月は動揺するが、まさかサンタクロースが、そばに来た子どもを振り払って蔑ろにするわけにもいかないので、大人しくされるがままになるしかない。
「サンタさんはね、煙突がなくても来れるんだよ、いい子がいるところには」
「和衣、いい子!?」
「うん。和衣くんがお父さんとお母さんの言うこと聞いて、いい子にしてたの、ちゃんと知ってるよ」
「キャー!」
そう言って翔真が頭を撫でてやると、和衣はピョンピョン飛び跳ねて喜んでくれる。
サンタクロースを信じていない人間が多いことは、翔真だって重々承知していて、だからこそ、和衣にこんなに喜んでもらえるのは嬉しい。
しかし、和衣があまりはしゃぎ過ぎて騒いでいると、お父さんやお母さんに和衣が起きていることがバレるかもしれない…と、翔真は和衣をベッドに向かわせようとする。
「和衣くん、いい子はもう寝る時間だよ? おふとんに行こ?」
「ぅー…」
翔真に言われ、和衣は困ったような顔をした。
まだまだサンタさんとお喋りをしていたいけれど、『いい子は』と付け加えられると、素直な和衣は、やっぱりもうおふとんに行かなければ、と思ってしまう。
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