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君を覆うやさしい銀河 (2)
2011.12.25 Sun
「とりあえずこれ、最初のほうで配るヤツだから、むっちゃん、抱えてってくれる? クマのぬいぐるみだって。重くないから平気でしょ?」
「えぇー!」
「去年みたいに、最初から全部積み直すよりはいいでしょ!?」
「はい…」
一応、非難めいた声は上げたが、去年の苦労なら、睦月が一番よく分かっている。
またあんな思いをするくらいなら、このプレゼントを抱えていったほうが、まだマシだ。
「よし、荷物はみんな積んだし、準備オッケーかな。あとは出発の順番を待つだけ……て、むっちゃん、いい加減コート脱ぎなよ」
「え、何で?」
「何でじゃなくて! コート着ちゃったら、制服見えないでしょ」
サンタクロースの制服である赤い上着とズボンの上から、もこもこの白いコートを着ている睦月は、どう見てもサンタには見えない。
一応、赤い帽子は被っているけれど……うん、すごくミスマッチ。
「だって寒いじゃん。てか、どうせ人間になんて俺らのこと見えないんだから、服装なんて何だっていいじゃんねぇ?」
「でも決まりなんだから、ちゃんとしないと。それに、サンタさんのこと信じてる子には見えるって言うし」
「そんなヤツいねぇよ。人間なんて、俺らのこと全然信じてねぇもん」
睦月はそう言って、抱えていたクマのぬいぐるみの包みを、ギュッと抱き締めた。
サンタクロースなんて、こんなに大変な思いをしてプレゼントを配っているのに、人間はその存在を全然信じようとしてくれない。こんな理不尽、納得いかない。
「あーあ、何で俺、サンタになんかなったんだろ…」
「おいおい、むっちゃん。今ここでそれを言う? これからプレゼント配りに行くのに」
「だってさぁ、そう思わない? プレゼント配ったとこで、人間なんて、誰もサンタのことなんか信じてないし」
「えー? じゃあむっちゃん、マジで何でサンタになったの? 他にもいろいろあったのに」
サンタクロースは、大まかに言うと妖精の一種なのだが、他にも妖精は、雪の精とか花の精とか、とにかくいろいろな種類がいる。
生まれたての妖精は、実はまだ何の精かは決まっていなくて、最初に普通の学校に通った後、それぞれの精の学校に進学して、何かしらの精になるのだが、何の精になるかは自由だから、睦月も、サンタが嫌なら別の妖精にだってなれたはずだ。
「だって何かさぁ、亮がサンタになる、て言うから。そっかぁ、じゃあ俺もなろうかな、て」
亮というのは睦月の恋人であり、彼もまたサンタクロースである。
睦月と亮は最初の学校のときに出会って恋人同士になったのだが、卒業後、亮がサンタクロースの学校に行くと言うので、睦月もそうしたのだ。
「え、そういう理由なの? マジで?」
たいていサンタになりたがる妖精は、『人間はサンタクロースの存在を信じている』と思っていて、子どもが好きで、その喜ぶ顔を見たいから、というのが理由なのに。
でもまぁ、いささか動機は不純だが、恋人を追い掛けて同じ進路に進むのだから、睦月も意外と一途のようだ――――と翔真が思ったのも束の間。
「うん。それに、サンタの仕事なんて、年に1回じゃん? 何か楽そうだなぁ、て思って」
「むっちゃん…」
亮と一緒だから、ていうのも、本当はどうでもいいの?
楽そうだから、サンタになったの?
「でもさぁ、なってみたら超メンドイし、人間なんてサンタのこと、ぜ~んぜん信じてないしさぁ。…はぁ~あ、サンタなんもうか辞めちゃおっかなー」
「えー、むっちゃん、マジ? でも今日のプレゼント配るのだけは、とりあえずちゃんとやってよね? 一応、まだサンタなんだから」
「分かってるよぉ」
サンタに限らず、妖精のことを信じない人間は多くいるから、サンタを辞めた睦月が何の妖精になるかは知らないが、今のやさぐれた気持ちが解消されるとは思えないのだが。
とりあえず今日の仕事だけは、ちゃんと終わらせてもらわなければ困る。
「むっちゃん、もうすぐ出発するから、コート脱いで」
「えーマジ!? 雪降ってるよ? ねぇショウちゃん、雪降ってるよ?」
「降ってても」
寒い~! と縋り付いてみても、翔真の返事はすげなくて、睦月は渋々コートを脱いだ。
「てかさぁ、ショウちゃーん、去年のクリスマスも雪降ってなかった? 何なの、もぉー!」
「クリスマスだから、雪の精も張り切ってんだろ?」
「ふざけんなよ、サンタの身にもなってみろ!」
人間の世界では、ホワイトクリスマス、なんて言って、クリスマスに雪が降ったら喜ばれるのに、寒いのが嫌いな睦月には、相当ウケが悪いようだ。
そういえば去年も同じ光景を見たなぁ…と、翔真は溜め息を零す。
「人間を喜ばすのが妖精の仕事なんだから、文句言わない。ホラ、もう出発するよ?」
「に゛ー…」
ショウちゃん優しくないー…と、恨めしそうな顔をした睦月を無視して、翔真はソリを発進させた。
サンタクロースは煙突からやって来ると思われがちだが、実際はそうではない。
この時代、煙突のない家はたくさんあるし、それ以前にサンタクロースは妖精なので、別に煙突がなくても、玄関の鍵が閉まっていても、家の中に入ることは出来るのだ(不法侵入ではない、妖精なので)。
「むっちゃん、はい」
「ん」
眠っている子どもの枕元に、そっとプレゼントを置いていく。
睦月は、人間なんて誰もサンタクロースのことを信じてない! と主張するが、信じている人にはサンタクロースの姿は見えると言われているので、慎重に行動しなければならない。
翔真が思うに、サンタクロースを信じているのは主に子どもだが、しかし子どもは、サンタが来るような時間にはもう寝ているから、結局のところ、サンタの姿を見える人がいない――――誰もサンタを信じていない、という結論に達するのだと思う。
「よしオッケ。次行こ」
「んー」
時間的にもうすでに眠くなってきているのか、段々と睦月の口数が少なくなってきている。
大体睦月は、寒いのも苦手で、夜はすぐに眠くなるのに、一体どうしてサンタが楽な仕事だなんて思ったんだろう。
「むっちゃん、ソリに乗ってる最中に寝ないでよ? 落ちたら危ないから」
「寒すぎて眠れないよ」
「寒さと睡魔なら、寒さのほうが勝つんだ?」
「間違いなくね。ねぇショウちゃん、マジでコート着ちゃダメなの? もうこれだけの数配って来たけど、1回も誰にも気付かれなかったんだからさ、服なんかどうでもよくない?」
「ダーメ。つか、このサンタ服だって、結構あったかくない?」
人間がコスプレで着るサンタ服と違って、本当のサンタが着る服は、それだけでちゃんと防寒できるだけの機能が備わっているから、睦月がこれだけ寒がるのもどうかと思うが。
(ていうか、寒がりの妖精て…)
睦月曰く、サンタだって寒いものは寒いんだ! …らしいのだが、でもやっぱり、妖精なのに寒がりというのは、同じ妖精として、いまいち理解しがたいところだ。
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「えぇー!」
「去年みたいに、最初から全部積み直すよりはいいでしょ!?」
「はい…」
一応、非難めいた声は上げたが、去年の苦労なら、睦月が一番よく分かっている。
またあんな思いをするくらいなら、このプレゼントを抱えていったほうが、まだマシだ。
「よし、荷物はみんな積んだし、準備オッケーかな。あとは出発の順番を待つだけ……て、むっちゃん、いい加減コート脱ぎなよ」
「え、何で?」
「何でじゃなくて! コート着ちゃったら、制服見えないでしょ」
サンタクロースの制服である赤い上着とズボンの上から、もこもこの白いコートを着ている睦月は、どう見てもサンタには見えない。
一応、赤い帽子は被っているけれど……うん、すごくミスマッチ。
「だって寒いじゃん。てか、どうせ人間になんて俺らのこと見えないんだから、服装なんて何だっていいじゃんねぇ?」
「でも決まりなんだから、ちゃんとしないと。それに、サンタさんのこと信じてる子には見えるって言うし」
「そんなヤツいねぇよ。人間なんて、俺らのこと全然信じてねぇもん」
睦月はそう言って、抱えていたクマのぬいぐるみの包みを、ギュッと抱き締めた。
サンタクロースなんて、こんなに大変な思いをしてプレゼントを配っているのに、人間はその存在を全然信じようとしてくれない。こんな理不尽、納得いかない。
「あーあ、何で俺、サンタになんかなったんだろ…」
「おいおい、むっちゃん。今ここでそれを言う? これからプレゼント配りに行くのに」
「だってさぁ、そう思わない? プレゼント配ったとこで、人間なんて、誰もサンタのことなんか信じてないし」
「えー? じゃあむっちゃん、マジで何でサンタになったの? 他にもいろいろあったのに」
サンタクロースは、大まかに言うと妖精の一種なのだが、他にも妖精は、雪の精とか花の精とか、とにかくいろいろな種類がいる。
生まれたての妖精は、実はまだ何の精かは決まっていなくて、最初に普通の学校に通った後、それぞれの精の学校に進学して、何かしらの精になるのだが、何の精になるかは自由だから、睦月も、サンタが嫌なら別の妖精にだってなれたはずだ。
「だって何かさぁ、亮がサンタになる、て言うから。そっかぁ、じゃあ俺もなろうかな、て」
亮というのは睦月の恋人であり、彼もまたサンタクロースである。
睦月と亮は最初の学校のときに出会って恋人同士になったのだが、卒業後、亮がサンタクロースの学校に行くと言うので、睦月もそうしたのだ。
「え、そういう理由なの? マジで?」
たいていサンタになりたがる妖精は、『人間はサンタクロースの存在を信じている』と思っていて、子どもが好きで、その喜ぶ顔を見たいから、というのが理由なのに。
でもまぁ、いささか動機は不純だが、恋人を追い掛けて同じ進路に進むのだから、睦月も意外と一途のようだ――――と翔真が思ったのも束の間。
「うん。それに、サンタの仕事なんて、年に1回じゃん? 何か楽そうだなぁ、て思って」
「むっちゃん…」
亮と一緒だから、ていうのも、本当はどうでもいいの?
楽そうだから、サンタになったの?
「でもさぁ、なってみたら超メンドイし、人間なんてサンタのこと、ぜ~んぜん信じてないしさぁ。…はぁ~あ、サンタなんもうか辞めちゃおっかなー」
「えー、むっちゃん、マジ? でも今日のプレゼント配るのだけは、とりあえずちゃんとやってよね? 一応、まだサンタなんだから」
「分かってるよぉ」
サンタに限らず、妖精のことを信じない人間は多くいるから、サンタを辞めた睦月が何の妖精になるかは知らないが、今のやさぐれた気持ちが解消されるとは思えないのだが。
とりあえず今日の仕事だけは、ちゃんと終わらせてもらわなければ困る。
「むっちゃん、もうすぐ出発するから、コート脱いで」
「えーマジ!? 雪降ってるよ? ねぇショウちゃん、雪降ってるよ?」
「降ってても」
寒い~! と縋り付いてみても、翔真の返事はすげなくて、睦月は渋々コートを脱いだ。
「てかさぁ、ショウちゃーん、去年のクリスマスも雪降ってなかった? 何なの、もぉー!」
「クリスマスだから、雪の精も張り切ってんだろ?」
「ふざけんなよ、サンタの身にもなってみろ!」
人間の世界では、ホワイトクリスマス、なんて言って、クリスマスに雪が降ったら喜ばれるのに、寒いのが嫌いな睦月には、相当ウケが悪いようだ。
そういえば去年も同じ光景を見たなぁ…と、翔真は溜め息を零す。
「人間を喜ばすのが妖精の仕事なんだから、文句言わない。ホラ、もう出発するよ?」
「に゛ー…」
ショウちゃん優しくないー…と、恨めしそうな顔をした睦月を無視して、翔真はソリを発進させた。
サンタクロースは煙突からやって来ると思われがちだが、実際はそうではない。
この時代、煙突のない家はたくさんあるし、それ以前にサンタクロースは妖精なので、別に煙突がなくても、玄関の鍵が閉まっていても、家の中に入ることは出来るのだ(不法侵入ではない、妖精なので)。
「むっちゃん、はい」
「ん」
眠っている子どもの枕元に、そっとプレゼントを置いていく。
睦月は、人間なんて誰もサンタクロースのことを信じてない! と主張するが、信じている人にはサンタクロースの姿は見えると言われているので、慎重に行動しなければならない。
翔真が思うに、サンタクロースを信じているのは主に子どもだが、しかし子どもは、サンタが来るような時間にはもう寝ているから、結局のところ、サンタの姿を見える人がいない――――誰もサンタを信じていない、という結論に達するのだと思う。
「よしオッケ。次行こ」
「んー」
時間的にもうすでに眠くなってきているのか、段々と睦月の口数が少なくなってきている。
大体睦月は、寒いのも苦手で、夜はすぐに眠くなるのに、一体どうしてサンタが楽な仕事だなんて思ったんだろう。
「むっちゃん、ソリに乗ってる最中に寝ないでよ? 落ちたら危ないから」
「寒すぎて眠れないよ」
「寒さと睡魔なら、寒さのほうが勝つんだ?」
「間違いなくね。ねぇショウちゃん、マジでコート着ちゃダメなの? もうこれだけの数配って来たけど、1回も誰にも気付かれなかったんだからさ、服なんかどうでもよくない?」
「ダーメ。つか、このサンタ服だって、結構あったかくない?」
人間がコスプレで着るサンタ服と違って、本当のサンタが着る服は、それだけでちゃんと防寒できるだけの機能が備わっているから、睦月がこれだけ寒がるのもどうかと思うが。
(ていうか、寒がりの妖精て…)
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