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もうさようならの時間 (15)
2011.06.07 Tue
「…お盆にはまた来るわね、て言って、お母さんの具合がよくなったら、そう言って私、帰るつもりだったのよ…」
けれど、その言葉を伝えることのないまま、彼女がこの家に来て5日後に、おばあさんは静かに息を引き取った。
一緒にご飯を食べて、テレビを見て、話をしていたら、いつの間にかおばあさんは目を閉じていた。おばあさんの足元に蹲っていた三郎さんは、まっすぐにおばあさんを見つめていた。
睦月が来れないでいた、ほんの少しの間の出来事。
「…お母さんから、あなたの話も聞きました。三郎さんを散歩に連れてってくれる子がいるって」
「…」
「お母さん、すごく嬉しそうで…、来てくれるの、本当に嬉しい、て…」
おばあさんと女性の間に、そんな会話があったことを、睦月は知らない。
睦月はただやりたくて三郎さんを散歩させていただけだけれど、もしかしておばあさんには気を遣わせていたのかな、と思ったこともあって、…でもおばあさんが、今女性が言ったふうに思っていてくれていたんだったら、すごく嬉しいな。
「…これ、私に見せてくれて、」
「あ…」
女性はご仏壇のそばの引き出しから写真を持って来て、睦月に差し出した。
それは以前、睦月とおばあさんと三郎さんの3人で写ろうと、睦月が携帯電話のカメラでがんばって撮った写真だ。
三郎さんが、初めて見る携帯電話に興味津々で、じゃれたり舐めたりするから、大変だった。うまくいかなくて、『もぉー』とか言っている睦月に、おばあさんはずっと笑っていた。
翔真に頼んで現像してもらったのを、おばあさんに上げたのは、つい先月の話。
「お母さん、ずっと1人だったでしょ? 私が何か言っても、三郎さんがいるから寂しくないって言ってたけど、本当は…。だから、あなたが来てくれて…」
「別に俺は、そんな…」
睦月は別に、おばあさんのために、何か特別なことをしてあげたことなんかない。
おばあさんに挨拶して、三郎さんの散歩に行って、それでまた挨拶して、帰るだけ。ただ、それだけのこと。
「…それでもお母さんは、嬉しかったと思う…。足を悪くしてから、あんまり外に出なくなって、人付き合いもしなくなっていたから」
睦月とおばあさんの話の中心は、やはり三郎さんのことで、睦月は散歩中にあった出来事をおばあさんに話したし、おばあさんは、睦月が来ない間のことを話してくれた。
それから、足を悪くしてから、子どもがよく電話をくれるようになったとも言っていた。
すごく心配して、気を遣ってくれて、でも私、まだそんなにおばあさんじゃないのに、て笑っていた。
「そうなの…。…話せば、ケンカばっかりだったのに…」
女性は小さく鼻を啜って、何度も瞬きをした。
睦月も、話をしていたときのおばあさんの様子が思い起こされ、涙がまた溢れそうになったので、何でもない振りで、そばで丸くなっている三郎さんを撫でた。
「…三郎さん、こんなに仲良くなったのに、あなたに会えなくなっちゃったら、寂しがっちゃうわね」
「えっ?」
睦月と三郎さんの様子を見ていた彼女が放った言葉に、睦月は驚いて顔を上げた。
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けれど、その言葉を伝えることのないまま、彼女がこの家に来て5日後に、おばあさんは静かに息を引き取った。
一緒にご飯を食べて、テレビを見て、話をしていたら、いつの間にかおばあさんは目を閉じていた。おばあさんの足元に蹲っていた三郎さんは、まっすぐにおばあさんを見つめていた。
睦月が来れないでいた、ほんの少しの間の出来事。
「…お母さんから、あなたの話も聞きました。三郎さんを散歩に連れてってくれる子がいるって」
「…」
「お母さん、すごく嬉しそうで…、来てくれるの、本当に嬉しい、て…」
おばあさんと女性の間に、そんな会話があったことを、睦月は知らない。
睦月はただやりたくて三郎さんを散歩させていただけだけれど、もしかしておばあさんには気を遣わせていたのかな、と思ったこともあって、…でもおばあさんが、今女性が言ったふうに思っていてくれていたんだったら、すごく嬉しいな。
「…これ、私に見せてくれて、」
「あ…」
女性はご仏壇のそばの引き出しから写真を持って来て、睦月に差し出した。
それは以前、睦月とおばあさんと三郎さんの3人で写ろうと、睦月が携帯電話のカメラでがんばって撮った写真だ。
三郎さんが、初めて見る携帯電話に興味津々で、じゃれたり舐めたりするから、大変だった。うまくいかなくて、『もぉー』とか言っている睦月に、おばあさんはずっと笑っていた。
翔真に頼んで現像してもらったのを、おばあさんに上げたのは、つい先月の話。
「お母さん、ずっと1人だったでしょ? 私が何か言っても、三郎さんがいるから寂しくないって言ってたけど、本当は…。だから、あなたが来てくれて…」
「別に俺は、そんな…」
睦月は別に、おばあさんのために、何か特別なことをしてあげたことなんかない。
おばあさんに挨拶して、三郎さんの散歩に行って、それでまた挨拶して、帰るだけ。ただ、それだけのこと。
「…それでもお母さんは、嬉しかったと思う…。足を悪くしてから、あんまり外に出なくなって、人付き合いもしなくなっていたから」
睦月とおばあさんの話の中心は、やはり三郎さんのことで、睦月は散歩中にあった出来事をおばあさんに話したし、おばあさんは、睦月が来ない間のことを話してくれた。
それから、足を悪くしてから、子どもがよく電話をくれるようになったとも言っていた。
すごく心配して、気を遣ってくれて、でも私、まだそんなにおばあさんじゃないのに、て笑っていた。
「そうなの…。…話せば、ケンカばっかりだったのに…」
女性は小さく鼻を啜って、何度も瞬きをした。
睦月も、話をしていたときのおばあさんの様子が思い起こされ、涙がまた溢れそうになったので、何でもない振りで、そばで丸くなっている三郎さんを撫でた。
「…三郎さん、こんなに仲良くなったのに、あなたに会えなくなっちゃったら、寂しがっちゃうわね」
「えっ?」
睦月と三郎さんの様子を見ていた彼女が放った言葉に、睦月は驚いて顔を上げた。
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カテゴリー:Baby Baby Baby Love
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けいったん ⇒ No title
おばあさんの最後が 誰も居ない独りきりでは なくて 娘さんと 一緒で淋しくなかったのが 唯一救われますね。
おばあさんと三郎さんの 一人一匹暮らしの中で むっちゃんが 時々 来て 話しをするのが 楽しかったんだろうな。
おあばさんが 居なくなった この家には 三郎さんだけには させられないですよね。
むっちゃんには可哀想だけど 笑って さようならしようね。
(o^―^o)ゝbyebye☆
おばあさんと三郎さんの 一人一匹暮らしの中で むっちゃんが 時々 来て 話しをするのが 楽しかったんだろうな。
おあばさんが 居なくなった この家には 三郎さんだけには させられないですよね。
むっちゃんには可哀想だけど 笑って さようならしようね。
(o^―^o)ゝbyebye☆
- |2011.06.07
- |Tue
- |19:08
- |URL
- |EDIT|
如月久美子 ⇒ >けいったんさん
最期の瞬間に一緒にいれるのは、お別れは寂しいけれど、嬉しいことですよね。
おばあさんは寂しくなかったと思います。三郎さんもいますしね(*^_^*)
さてさてむっちゃん、ちゃんと笑ってお別れできるでしょうか。
三郎さんだけを残してはいけないですからね。
コメントありがとうございました!
おばあさんは寂しくなかったと思います。三郎さんもいますしね(*^_^*)
さてさてむっちゃん、ちゃんと笑ってお別れできるでしょうか。
三郎さんだけを残してはいけないですからね。
コメントありがとうございました!