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それはすべて夜のせい
2010.12.12 Sun
おもしろくもないバラエティー番組に飽きてあくびをしたところで、奥からドアの開く音が聞こえ、ようやく悠也が風呂から上がったのだと分かった。
ちょっと前まではカラスの行水だった悠也が、どういうわけか最近は湯船に浸かる魅力にはまり、拓海よりもずっと長風呂になってしまった。
「ふぅ~」
スウェットの下穿きだけ穿いて、上着は右手に持ったままの悠也の左手に、持ち物は何もない。もちろん右手にもあるのは上着だけで。
タオルを持たない悠也がスリッパも穿かずにペタペタこちらに来る間にも、拭いていない髪からポタポタと雫が床に落ちている。
「悠ちゃん、少しは髪拭いてきなよ!」
拓海は慌ててタオルを持ってきて悠也の頭に被せた。
なのに、拓海が濡れた床を拭いてやっているのもお構いなしで、悠也はケラケラ笑っている。
「髪!」
少しも言うことを聞こうとしない悠也の頭を、拓海は半ば強引に拭き始めた。
「イデデ! ちょっ、待ってよ拓海!」
無理やりワシワシと髪を拭かれて、悠也は何とか逃れようとするけれど、うまく逃げ出せない。
「ちょっ、ちょっと待って! 痛、痛いってばっ! やっ、いたっ…!」
悠也のあまりの痛がりかたを不審に思って、拓海は髪を拭く手を止めた。
「どうしたの?」
悠也の顔を覗くため、顔を隠すタオルを取ろうとすると、
「っ! イタッ…ヤダ、ちょっと!」
「え? え?」
さらに痛がる悠也に、わけの分からない拓海はもう1度タオルを引っ張る。
「イダダッ! 耳がっ…!」
「耳?」
肩を竦めるようにしている悠也が、タオルの上から左耳を押さえているにことに気付き、拓海は右側からそっとタオルを剥いでいくと、悠也の左耳に輝くピアスに、タオルの糸がほつれて絡まり、そこに数本の髪の毛まで絡みついていた。
「拓海が乱暴にするから…」
少し涙声になっているのは、相当痛い証拠だ。
「ゴメン、大丈夫?」
「なわけないだろ! いてー…もう、何とかしてよ! 拓海」
涙目で睨まれ、不謹慎にも拓海は、(これがベッドの上とかだったらかわいいのになぁー)などと思ってしまったり。
「とにかくちょっとそこ座って? ほどいてやるから」
どんな状況になっているか見えないうえに、あからさまに不器用な悠也よりは、拓海に任せておくほうが無難だろう。
悠也はタオルを持っている拓海とタイミングを合わせて、ソロソロとソファに腰を下ろした。
「ちょっとタオル持ってられる?」
「ん、何?」
「糸はハサミで切ったほうが早いだろ?」
「ヤダよ!」
拓海のもっともな提案を、悠也は即座に拒絶した。
「何で? 大丈夫だって、髪は切らないから」
たとえ切れたとしても、絡んでいる数本だけだ。髪形に影響など出やしない。
ハサミを取りにいくのを邪魔しようとする悠也が、すぐに動けないのをいいことに、拓海はさっさとハサミを持ってきた。
「ヤダヤダ! ちゃんと絡んだのほどいてよ!」
「大丈夫だって、ジッとしててよ」
怖がって膝を立てて身を小さくしている悠也の向かいで、拓海は床に膝をつき、悠也の耳にかかる余計な髪を掻き上げた。
「ヤダよ、ヤダ…ひゃっ!」
刃先の冷たい感触が耳たぶに触れた瞬間、悠也はピクンと肩を跳ね上げた。
「バカ、危ないから、動くなよ」
「だって! ヤダよ、もぉ~…」
泣きが入っても、拓海はハサミを使うことをやめようとせず、絡んだ糸の切りやすい位置を探っている。
「早くしてよぉ…」
ギュッと身を硬くして、悠也は糸が切られるその瞬間を待っている。
耳の近くでザリザリと刃と刃の擦り合わされる音がリアルに聞こえて、悠也はきつく拓海のシャツを掴んだ。
「ま、だ…?」
「もうちょっと」
耳に拓海の吐息がかかる。
「ね、まだ…?」
「もうちょっ…あ、取れた!」
その言葉と同時に、重たかった頭の左側がふと軽くなった。
「取れたよ、悠ちゃん」
ようやく取れたタオルを見せられ、悠也はやっと息を緩めた。
―――のも束の間。
「ひゃあっ!」
左の耳たぶに温かい感触が走り、悠也はまた首を竦めた。
ゆっくりと拓海のほうを見ると、彼はニヤリとした表情でこちらを見ていて、拓海に耳たぶを舐められたのだとやっと気が付いた。
「しょーどく」
悪びれた様子もなくそう言う彼に、悠也は照れ隠しに「バカ」と返す。
「だーって、悠ちゃんの反応がかわいいんだもん」
「かわいいとか言う……んっ!?」
かわいいから。
だから、かわいくないことを言おうとする口はさっさと塞いで。
「悠ちゃんかわいいから、欲情しちゃった」
「……バカ」
拓海のキスをすんでのところでかわして。
「おい」
「さっき俺に痛い思いさせたから、今日はダメ!」
「ちゃんと消毒してやったじゃん」
「そんだけじゃ、サービスが足んない!」
悠也が八重歯を覗かせながら笑うと、拓海の口の端が少し上がる。
「じゃ、今日はスペシャルサービス付きで」
「ひゃひゃひゃひゃ。オヤジくせぇ~」
「うるさい」
「じゃ、ベッドまで運んで? お姫様抱っこね」
早速の無理難題を拓海に突き付けて、悠也は最高にゴキゲンだ。
「わーかったよ!」
ひょいっと、わりと簡単に悠也を持ち上げて寝室に向かう拓海に、悠也は満面の笑みでしがみ付く。
「次はねー」
「まだ何かあんの!?」
いいようにからかわれているだけと分かっていながら、拓海は突っ込み返さずにはいられない。
悠也はそんな拓海を見て、笑みを深くするばかり。
本当は耳元を掠めた拓海の吐息に、実は自分もちょっとその気になったんだよってことは、今日は内緒にしておこう。
*END*
いきなし悠ちゃんたち…。いや、何となく。
長くてすいません。切りどころが分かんなかった。
ちょっと前まではカラスの行水だった悠也が、どういうわけか最近は湯船に浸かる魅力にはまり、拓海よりもずっと長風呂になってしまった。
「ふぅ~」
スウェットの下穿きだけ穿いて、上着は右手に持ったままの悠也の左手に、持ち物は何もない。もちろん右手にもあるのは上着だけで。
タオルを持たない悠也がスリッパも穿かずにペタペタこちらに来る間にも、拭いていない髪からポタポタと雫が床に落ちている。
「悠ちゃん、少しは髪拭いてきなよ!」
拓海は慌ててタオルを持ってきて悠也の頭に被せた。
なのに、拓海が濡れた床を拭いてやっているのもお構いなしで、悠也はケラケラ笑っている。
「髪!」
少しも言うことを聞こうとしない悠也の頭を、拓海は半ば強引に拭き始めた。
「イデデ! ちょっ、待ってよ拓海!」
無理やりワシワシと髪を拭かれて、悠也は何とか逃れようとするけれど、うまく逃げ出せない。
「ちょっ、ちょっと待って! 痛、痛いってばっ! やっ、いたっ…!」
悠也のあまりの痛がりかたを不審に思って、拓海は髪を拭く手を止めた。
「どうしたの?」
悠也の顔を覗くため、顔を隠すタオルを取ろうとすると、
「っ! イタッ…ヤダ、ちょっと!」
「え? え?」
さらに痛がる悠也に、わけの分からない拓海はもう1度タオルを引っ張る。
「イダダッ! 耳がっ…!」
「耳?」
肩を竦めるようにしている悠也が、タオルの上から左耳を押さえているにことに気付き、拓海は右側からそっとタオルを剥いでいくと、悠也の左耳に輝くピアスに、タオルの糸がほつれて絡まり、そこに数本の髪の毛まで絡みついていた。
「拓海が乱暴にするから…」
少し涙声になっているのは、相当痛い証拠だ。
「ゴメン、大丈夫?」
「なわけないだろ! いてー…もう、何とかしてよ! 拓海」
涙目で睨まれ、不謹慎にも拓海は、(これがベッドの上とかだったらかわいいのになぁー)などと思ってしまったり。
「とにかくちょっとそこ座って? ほどいてやるから」
どんな状況になっているか見えないうえに、あからさまに不器用な悠也よりは、拓海に任せておくほうが無難だろう。
悠也はタオルを持っている拓海とタイミングを合わせて、ソロソロとソファに腰を下ろした。
「ちょっとタオル持ってられる?」
「ん、何?」
「糸はハサミで切ったほうが早いだろ?」
「ヤダよ!」
拓海のもっともな提案を、悠也は即座に拒絶した。
「何で? 大丈夫だって、髪は切らないから」
たとえ切れたとしても、絡んでいる数本だけだ。髪形に影響など出やしない。
ハサミを取りにいくのを邪魔しようとする悠也が、すぐに動けないのをいいことに、拓海はさっさとハサミを持ってきた。
「ヤダヤダ! ちゃんと絡んだのほどいてよ!」
「大丈夫だって、ジッとしててよ」
怖がって膝を立てて身を小さくしている悠也の向かいで、拓海は床に膝をつき、悠也の耳にかかる余計な髪を掻き上げた。
「ヤダよ、ヤダ…ひゃっ!」
刃先の冷たい感触が耳たぶに触れた瞬間、悠也はピクンと肩を跳ね上げた。
「バカ、危ないから、動くなよ」
「だって! ヤダよ、もぉ~…」
泣きが入っても、拓海はハサミを使うことをやめようとせず、絡んだ糸の切りやすい位置を探っている。
「早くしてよぉ…」
ギュッと身を硬くして、悠也は糸が切られるその瞬間を待っている。
耳の近くでザリザリと刃と刃の擦り合わされる音がリアルに聞こえて、悠也はきつく拓海のシャツを掴んだ。
「ま、だ…?」
「もうちょっと」
耳に拓海の吐息がかかる。
「ね、まだ…?」
「もうちょっ…あ、取れた!」
その言葉と同時に、重たかった頭の左側がふと軽くなった。
「取れたよ、悠ちゃん」
ようやく取れたタオルを見せられ、悠也はやっと息を緩めた。
―――のも束の間。
「ひゃあっ!」
左の耳たぶに温かい感触が走り、悠也はまた首を竦めた。
ゆっくりと拓海のほうを見ると、彼はニヤリとした表情でこちらを見ていて、拓海に耳たぶを舐められたのだとやっと気が付いた。
「しょーどく」
悪びれた様子もなくそう言う彼に、悠也は照れ隠しに「バカ」と返す。
「だーって、悠ちゃんの反応がかわいいんだもん」
「かわいいとか言う……んっ!?」
かわいいから。
だから、かわいくないことを言おうとする口はさっさと塞いで。
「悠ちゃんかわいいから、欲情しちゃった」
「……バカ」
拓海のキスをすんでのところでかわして。
「おい」
「さっき俺に痛い思いさせたから、今日はダメ!」
「ちゃんと消毒してやったじゃん」
「そんだけじゃ、サービスが足んない!」
悠也が八重歯を覗かせながら笑うと、拓海の口の端が少し上がる。
「じゃ、今日はスペシャルサービス付きで」
「ひゃひゃひゃひゃ。オヤジくせぇ~」
「うるさい」
「じゃ、ベッドまで運んで? お姫様抱っこね」
早速の無理難題を拓海に突き付けて、悠也は最高にゴキゲンだ。
「わーかったよ!」
ひょいっと、わりと簡単に悠也を持ち上げて寝室に向かう拓海に、悠也は満面の笑みでしがみ付く。
「次はねー」
「まだ何かあんの!?」
いいようにからかわれているだけと分かっていながら、拓海は突っ込み返さずにはいられない。
悠也はそんな拓海を見て、笑みを深くするばかり。
本当は耳元を掠めた拓海の吐息に、実は自分もちょっとその気になったんだよってことは、今日は内緒にしておこう。
*END*
いきなし悠ちゃんたち…。いや、何となく。
長くてすいません。切りどころが分かんなかった。
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