スポンサーサイト
--.--.-- --
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
- BL小説ランキング参加中です。クリックいただけたら嬉しいです。
- コメントや拍手、ありがとうございます。拍手の公開コメントへのお返事はこちらから。それ以外は、コメントをいただいた記事に返信いたします。
- お題配布サイト「明日」はひっそりまったり更新中です。毎日更新しない日誌「遊び心がない」もよろしくね。
カテゴリー:スポンサー広告
繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス (68)
2010.10.11 Mon
「じゃあね」
「あ、アッキーちょっと待って。ね、こっち来て?」
「は? ちょっ時間!」
駅に入ろうとする瑛貴を、依織が引き止めた。
ここまで来ておいて、今日も終電に乗り遅れたなんて、そんなの絶対に嫌なのに、依織は瑛貴の儚い抵抗を無視して、「まだ大丈夫」と瑛貴の腕を引っ張って行く。
そんな自信を持って大丈夫と言い切れるくらいの、時間の余裕があるとは思えないのに。
わけも分からず瑛貴が連れ込まれたのは路地裏。駅前は、終電に急ぐ人でごった返していたのに、さすがにこの場所には誰もいなくて。
「何だよ依織。お前、これでまた乗り遅れたら…」
「大丈夫、すーぐ」
「だから何が、て――――ちょっ…」
一体何なんだ、と瑛貴は聞きたかったのに。
でもその一言も言えないうちに、依織の両手が瑛貴の肩を掴んで、その顔が近付いてきて。
「――――…………」
何てことだ。
また、依織とキスをしてしまった。
「依織、おまっ…」
「えへへ。バイバイのチュー。したくなっちゃった」
唇を離した依織は、少しも悪びれずに笑っている。
瑛貴は頭を抱えた。
「バッカじゃねぇの、お前。てかバカだろ、絶対」
「うん、バカかも。あ、ホラ時間! 終電乗り遅れるよ?」
「誰のせいだよ!」
もっと依織に詰め寄ってやろうと思ったのに、時間を指摘されると、瑛貴の立場は弱い。
こんなことで電車に乗り遅れたくはないし、そのせいで依織の家に泊まるはめにもなりたくはないと、駅まで急ぐ瑛貴の背後、『アッキー、バイバーイ』という楽しげな声が聞こえたが、瑛貴はそれを無視した。
飛び乗った最終電車は、相変わらず嫌になるくらい混雑していて、酒臭い。
瑛貴は押し潰され掛けながら、ただボンヤリと窓の外の景色を眺める。いつもと同じ光景。
(また、キスした…)
こんな簡単な手に引っ掛かる自分は、相当単純な性格なのだろう。
だからなのだろうか、依織が懲りずにこんなことをしてくるのは。
『バイバイのチュー。したくなっちゃった』
依織は、そう言って笑っていた。
そんなのどこのバカップルだよ、と思ったが、それ以前に瑛貴と依織は恋人同士ではない――――告白はされたけれど。
(そういえば、何も返事してない…)
依織への気持ちが恋愛感情でない以上、依織からの告白は受け入れられないと、ちゃんと言わなければならないのに、でもそうしたら、もう依織と会えないような気がして、瑛貴は依織を突き放せない。
依織のことは嫌いではないし、出来ればこれからも会いたいし、でも男同士だからということでなく、恋人にはなれないのに。
本当にまったくズルイ男。
瑛貴自身もそう思う。
一体依織は、こんな男のどこがよくて好きだなんて言うのだろう。
けれどそれなら、瑛貴だって、よく依織に愛想を尽かさないものだと思う。
性格も感覚もまるで違うし、全然合わない。
確かに依織は好きだと言ったけれど、瑛貴にしたら、依織はただの友だちだと思って――――いや、(自分自身に言い聞かせるように)思い込んでいただけで、普通そんなヤツにキスなんてされたら、今までのように会いたいなんて思わないだろうに。
ならば、と自分の気持ちを整理する。
真夕子と比べて依織はどうなのか、という問題。
紛れもなく真夕子は瑛貴の恋人で、瑛貴は真夕子のことを愛している。しかし、それを依織に当て嵌めようとすれば、『愛情』や『恋愛感情』では括れないカテゴリのような気がして。
(あーもう、何なんだよっ)
わけの分からない苛立ちに、瑛貴はぶんと首を振ったら、その拍子にドアに頭をぶつけてしまい、痛いやら、周囲の視線が突き刺さって恥ずかしいやら。
結局、何の答も出ないまま、降りるべき駅に到着してしまった。
back next
「あ、アッキーちょっと待って。ね、こっち来て?」
「は? ちょっ時間!」
駅に入ろうとする瑛貴を、依織が引き止めた。
ここまで来ておいて、今日も終電に乗り遅れたなんて、そんなの絶対に嫌なのに、依織は瑛貴の儚い抵抗を無視して、「まだ大丈夫」と瑛貴の腕を引っ張って行く。
そんな自信を持って大丈夫と言い切れるくらいの、時間の余裕があるとは思えないのに。
わけも分からず瑛貴が連れ込まれたのは路地裏。駅前は、終電に急ぐ人でごった返していたのに、さすがにこの場所には誰もいなくて。
「何だよ依織。お前、これでまた乗り遅れたら…」
「大丈夫、すーぐ」
「だから何が、て――――ちょっ…」
一体何なんだ、と瑛貴は聞きたかったのに。
でもその一言も言えないうちに、依織の両手が瑛貴の肩を掴んで、その顔が近付いてきて。
「――――…………」
何てことだ。
また、依織とキスをしてしまった。
「依織、おまっ…」
「えへへ。バイバイのチュー。したくなっちゃった」
唇を離した依織は、少しも悪びれずに笑っている。
瑛貴は頭を抱えた。
「バッカじゃねぇの、お前。てかバカだろ、絶対」
「うん、バカかも。あ、ホラ時間! 終電乗り遅れるよ?」
「誰のせいだよ!」
もっと依織に詰め寄ってやろうと思ったのに、時間を指摘されると、瑛貴の立場は弱い。
こんなことで電車に乗り遅れたくはないし、そのせいで依織の家に泊まるはめにもなりたくはないと、駅まで急ぐ瑛貴の背後、『アッキー、バイバーイ』という楽しげな声が聞こえたが、瑛貴はそれを無視した。
飛び乗った最終電車は、相変わらず嫌になるくらい混雑していて、酒臭い。
瑛貴は押し潰され掛けながら、ただボンヤリと窓の外の景色を眺める。いつもと同じ光景。
(また、キスした…)
こんな簡単な手に引っ掛かる自分は、相当単純な性格なのだろう。
だからなのだろうか、依織が懲りずにこんなことをしてくるのは。
『バイバイのチュー。したくなっちゃった』
依織は、そう言って笑っていた。
そんなのどこのバカップルだよ、と思ったが、それ以前に瑛貴と依織は恋人同士ではない――――告白はされたけれど。
(そういえば、何も返事してない…)
依織への気持ちが恋愛感情でない以上、依織からの告白は受け入れられないと、ちゃんと言わなければならないのに、でもそうしたら、もう依織と会えないような気がして、瑛貴は依織を突き放せない。
依織のことは嫌いではないし、出来ればこれからも会いたいし、でも男同士だからということでなく、恋人にはなれないのに。
本当にまったくズルイ男。
瑛貴自身もそう思う。
一体依織は、こんな男のどこがよくて好きだなんて言うのだろう。
けれどそれなら、瑛貴だって、よく依織に愛想を尽かさないものだと思う。
性格も感覚もまるで違うし、全然合わない。
確かに依織は好きだと言ったけれど、瑛貴にしたら、依織はただの友だちだと思って――――いや、(自分自身に言い聞かせるように)思い込んでいただけで、普通そんなヤツにキスなんてされたら、今までのように会いたいなんて思わないだろうに。
ならば、と自分の気持ちを整理する。
真夕子と比べて依織はどうなのか、という問題。
紛れもなく真夕子は瑛貴の恋人で、瑛貴は真夕子のことを愛している。しかし、それを依織に当て嵌めようとすれば、『愛情』や『恋愛感情』では括れないカテゴリのような気がして。
(あーもう、何なんだよっ)
わけの分からない苛立ちに、瑛貴はぶんと首を振ったら、その拍子にドアに頭をぶつけてしまい、痛いやら、周囲の視線が突き刺さって恥ずかしいやら。
結局、何の答も出ないまま、降りるべき駅に到着してしまった。
back next
- 関連記事
-
- 繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス (69) (2010/10/12)
- 繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス (68) (2010/10/11)
- 繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス (67) (2010/10/10)
- BL小説ランキング参加中です。クリックいただけたら嬉しいです。
- コメントや拍手、ありがとうございます。拍手の公開コメントへのお返事はこちらから。それ以外は、コメントをいただいた記事に返信いたします。
- お題配布サイト「明日」はひっそりまったり更新中です。毎日更新しない日誌「遊び心がない」もよろしくね。
カテゴリー:繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス
テーマ:自作BL小説 ジャンル:小説・文学
コメントの投稿はこちらから ♥
COMMENT-FORM
音夜 ⇒ なんか、も・・・
・・もうね、アッキーくんはふつうの男の代表みたいで、そのズルイとことか痛く心情が分る自分もいたりしてね(苦笑)
そんなアッキーくんの気持ちを描ける如月様は凄ごい!
にしても、依織くんがめちゃくちゃ切ないですね(T T)
どーすんねやろなぁアッキーくんは・・・
そんなアッキーくんの気持ちを描ける如月様は凄ごい!
にしても、依織くんがめちゃくちゃ切ないですね(T T)
どーすんねやろなぁアッキーくんは・・・
- |2010.10.11
- |Mon
- |12:17
- |URL
- |EDIT|
如月久美子 ⇒ >音夜さん
書いてるとき、アッキーを嫌な男にさせたくなくて、一生懸命になっていた覚えがあります…(^_^;)
悪いことしてるなぁ…と分かってはいるんだけど、ついつい流されてしまうアッキー。
いっそ罪悪感がなければ、こんなに悩まないんですけどね(苦笑)
そんなアッキーのこと、ちゃんと書けてますでしょうか!?
すごいとか言われちゃったら、舞い上がっちゃいます~!!
早くイオリンを幸せな気持ちにさせてあげたい…。
コメントありがとうございました!
悪いことしてるなぁ…と分かってはいるんだけど、ついつい流されてしまうアッキー。
いっそ罪悪感がなければ、こんなに悩まないんですけどね(苦笑)
そんなアッキーのこと、ちゃんと書けてますでしょうか!?
すごいとか言われちゃったら、舞い上がっちゃいます~!!
早くイオリンを幸せな気持ちにさせてあげたい…。
コメントありがとうございました!