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繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス (66)
2010.10.09 Sat
最初から、荷物なんてそんなに多くはないから、手際の悪い瑛貴でも、身支度はすぐに整った。
「じゃ、帰るね」
「うん」
「あの…いろいろありがと。泊めてくれたりとか…」
「…………、ふはっ! アッキー、もぉー!」
終電を逃して困っている瑛貴を何とかしてあげたいという気持ちはもちろんあったが、それ以上に下心がなかったと言ったら嘘になる。
それでキスまでして、さっきだってあれだけ言ったのに、最後に瑛貴の言ったことが『泊めてくれてありがとう』なんて、もう吹き出さずにはいられない。
「だ、だって、ありがとうはありがとうじゃん! 何だよ、依織!」
「あはは、何でもないよー」
恥ずかしさからか、わずかに頬を染めながら、子どものように拗ねた表情で、瑛貴は荷物を抱えて玄関に向かう。
「待ってよアッキー! ねぇ、駅まで送ってこっか?」
「ん? いいよ、道分かる」
「そういうことじゃなくて! あっはっはっ」
駅まで送る=道が分からないから、というつもりで言ったわけではないのに、瑛貴にすごくまじめな顔で返事をされて、収まっていた笑いがまた込み上げて来る。
そして当の瑛貴は、どうして笑われるのか分からずに、不思議顔をしていて。
本当にまったく、どこまで鈍感な男なんだろう。
でもそんな瑛貴に愛想を尽かすことなく惚れている彼女がいて、依織もまた、然りなのだが。
「じゃあね、依織」
瑛貴は困ったように眉を下げて、依織に背を向けた。
「…ねぇアッキー」
その背中に声が掛かる。
けれど、ドアノブに手を掛けていた瑛貴が、その声に振り返ろうとするより先、依織が背中に抱き付いて来た。
もちろん瑛貴は何も身構えていなかったから、勢いのままドアにぶつかってしまった。
「イッテー。何すんだよ依織」
「…アッキーにまた会いたい」
先ほどまで大笑いしていたのと同じ人物とは思えないテンションで、依織は背中越しに瑛貴に呟いた。
瑛貴は依織とドアの間に挟まれた体を、何とか捻って依織のほうを振り返った。
よく見れば、依織は裸足のまま、片足を土間まで踏み入れていた。
「会いたいの」
「…」
瑛貴の胸に顔を押し付けたまま、依織は言った。
もう瑛貴は、先ほどのように、会いたかったら連絡すればいい、とか、店に来ればいい、なんて言うことは出来なくて。
静かに時を刻んでいく。
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「じゃ、帰るね」
「うん」
「あの…いろいろありがと。泊めてくれたりとか…」
「…………、ふはっ! アッキー、もぉー!」
終電を逃して困っている瑛貴を何とかしてあげたいという気持ちはもちろんあったが、それ以上に下心がなかったと言ったら嘘になる。
それでキスまでして、さっきだってあれだけ言ったのに、最後に瑛貴の言ったことが『泊めてくれてありがとう』なんて、もう吹き出さずにはいられない。
「だ、だって、ありがとうはありがとうじゃん! 何だよ、依織!」
「あはは、何でもないよー」
恥ずかしさからか、わずかに頬を染めながら、子どものように拗ねた表情で、瑛貴は荷物を抱えて玄関に向かう。
「待ってよアッキー! ねぇ、駅まで送ってこっか?」
「ん? いいよ、道分かる」
「そういうことじゃなくて! あっはっはっ」
駅まで送る=道が分からないから、というつもりで言ったわけではないのに、瑛貴にすごくまじめな顔で返事をされて、収まっていた笑いがまた込み上げて来る。
そして当の瑛貴は、どうして笑われるのか分からずに、不思議顔をしていて。
本当にまったく、どこまで鈍感な男なんだろう。
でもそんな瑛貴に愛想を尽かすことなく惚れている彼女がいて、依織もまた、然りなのだが。
「じゃあね、依織」
瑛貴は困ったように眉を下げて、依織に背を向けた。
「…ねぇアッキー」
その背中に声が掛かる。
けれど、ドアノブに手を掛けていた瑛貴が、その声に振り返ろうとするより先、依織が背中に抱き付いて来た。
もちろん瑛貴は何も身構えていなかったから、勢いのままドアにぶつかってしまった。
「イッテー。何すんだよ依織」
「…アッキーにまた会いたい」
先ほどまで大笑いしていたのと同じ人物とは思えないテンションで、依織は背中越しに瑛貴に呟いた。
瑛貴は依織とドアの間に挟まれた体を、何とか捻って依織のほうを振り返った。
よく見れば、依織は裸足のまま、片足を土間まで踏み入れていた。
「会いたいの」
「…」
瑛貴の胸に顔を押し付けたまま、依織は言った。
もう瑛貴は、先ほどのように、会いたかったら連絡すればいい、とか、店に来ればいい、なんて言うことは出来なくて。
静かに時を刻んでいく。
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