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繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス (58)
2010.10.01 Fri
長くも短くもない時間が過ぎ、触れたときと同じくらい静かに、ゆっくりと唇は離れた。
「…依織のバカ」
「アッキーこそ、拒否んなかったくせに…」
まだ、唇に吐息が掛かる距離。
最初にキスを仕掛けたのは依織だけれど、瑛貴は何の抵抗もせずに、それを受け入れた。
そんなの同罪だと、依織は思った。瑛貴もそう思う。
「キスなんか、…すんなよ」
「…今さら言うなよ」
依織は、瑛貴の背中に回した手を解かなかった。
ただ、瑛貴からは顔を逸らすようにして、その肩口に額を押し当てた。
「しょうがねぇじゃん。……アッキーのこと、好きなんだもん」
「…知らねぇよ」
「嘘つけ」
依織は腕に力を込めて、ギュウと瑛貴に抱き付いた。
「友だちに嘘つくなって言ったの、アッキーだぞ。俺には嘘つくな、て言ったくせに、アッキーのほうこそ、ずっと嘘ついてたじゃん」
「何で。嘘なんかついてない」
「嘘とおんなじだもん。だって俺がアッキーのこと好きなの、知ってるくせに、知らないふりしてた」
「それは…、」
言い淀んだ瑛貴の脳裏には、ふと七槻の顔が浮かんだ。
そういえば七槻は、ずっと瑛貴と依織の関係を指摘していた。鈍感な瑛貴に、懲りずに何度も繰り返した。忠告した。ハッキリと告げた。
『だって依織ってさ、アッキーのこと好きじゃん? LOVEで』
確かに瑛貴は、鈍感な男だ。
今までにも散々言われて来たし、いい加減、自分でも気付いている。
だからずっと、依織の気持ちに気付かなかった――――と言ったら、あまりにも滑稽だ。バカすぎる。そんなわけがない。
依織の瑛貴に対する態度も仕草も行動も、七槻から指摘されなくたってあからさまだったし、他の誰かに勘違いされるのも当然だったし、瑛貴だって、気付かないはずがない。
はずはないけれど。
(でも、しょうがねぇじゃん…)
――――依織は友だちなんだから。
それはずっと、瑛貴が言い続けてきたことだ。
依織は男で、友だちで――――だから好きだとか、そんな恋愛感情あるはずないし、何かあるはずもない。
誰かに何か言われるたびに、そう言い張っていた。
一緒に駅まで行くくらい。
始発を待つ間、一緒にいるくらい。
終電を逃したから、家に泊めてもらうくらい。
『依織なんだから、別に何もないよ』
それが瑛貴にとっての、最後の砦だった。
依織の気持ちに気付かないはずはなかったけれど、そんな魔法の言葉で言い訳をして、ずっと気付かないふりをしていた。
気付いていないと、思い込んでいた。
「キスなんか、すんなよ」
依織がキスなんかしなかったら、何も変わらずに済んだのに。
でも。
「しょうがねぇじゃん。アッキーのこと、好きなんだから」
「知らねぇよ」
「…嘘つき」
嘘をついてしまったから。
やっぱりもう、2人は友だちではいられないの?
――――なら、今の関係は?
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「…依織のバカ」
「アッキーこそ、拒否んなかったくせに…」
まだ、唇に吐息が掛かる距離。
最初にキスを仕掛けたのは依織だけれど、瑛貴は何の抵抗もせずに、それを受け入れた。
そんなの同罪だと、依織は思った。瑛貴もそう思う。
「キスなんか、…すんなよ」
「…今さら言うなよ」
依織は、瑛貴の背中に回した手を解かなかった。
ただ、瑛貴からは顔を逸らすようにして、その肩口に額を押し当てた。
「しょうがねぇじゃん。……アッキーのこと、好きなんだもん」
「…知らねぇよ」
「嘘つけ」
依織は腕に力を込めて、ギュウと瑛貴に抱き付いた。
「友だちに嘘つくなって言ったの、アッキーだぞ。俺には嘘つくな、て言ったくせに、アッキーのほうこそ、ずっと嘘ついてたじゃん」
「何で。嘘なんかついてない」
「嘘とおんなじだもん。だって俺がアッキーのこと好きなの、知ってるくせに、知らないふりしてた」
「それは…、」
言い淀んだ瑛貴の脳裏には、ふと七槻の顔が浮かんだ。
そういえば七槻は、ずっと瑛貴と依織の関係を指摘していた。鈍感な瑛貴に、懲りずに何度も繰り返した。忠告した。ハッキリと告げた。
『だって依織ってさ、アッキーのこと好きじゃん? LOVEで』
確かに瑛貴は、鈍感な男だ。
今までにも散々言われて来たし、いい加減、自分でも気付いている。
だからずっと、依織の気持ちに気付かなかった――――と言ったら、あまりにも滑稽だ。バカすぎる。そんなわけがない。
依織の瑛貴に対する態度も仕草も行動も、七槻から指摘されなくたってあからさまだったし、他の誰かに勘違いされるのも当然だったし、瑛貴だって、気付かないはずがない。
はずはないけれど。
(でも、しょうがねぇじゃん…)
――――依織は友だちなんだから。
それはずっと、瑛貴が言い続けてきたことだ。
依織は男で、友だちで――――だから好きだとか、そんな恋愛感情あるはずないし、何かあるはずもない。
誰かに何か言われるたびに、そう言い張っていた。
一緒に駅まで行くくらい。
始発を待つ間、一緒にいるくらい。
終電を逃したから、家に泊めてもらうくらい。
『依織なんだから、別に何もないよ』
それが瑛貴にとっての、最後の砦だった。
依織の気持ちに気付かないはずはなかったけれど、そんな魔法の言葉で言い訳をして、ずっと気付かないふりをしていた。
気付いていないと、思い込んでいた。
「キスなんか、すんなよ」
依織がキスなんかしなかったら、何も変わらずに済んだのに。
でも。
「しょうがねぇじゃん。アッキーのこと、好きなんだから」
「知らねぇよ」
「…嘘つき」
嘘をついてしまったから。
やっぱりもう、2人は友だちではいられないの?
――――なら、今の関係は?
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