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繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス (57)
2010.09.30 Thu
「…ねぇアッキー」
「ん?」
静かになった部屋に、依織の小さな声。
瑛貴が返事をすれば、仰向けに寝ていた依織がもぞもぞ動いて、体ごと瑛貴のほうを向いた。
「さっきメールしてたの、…彼女?」
「ぅん? 違うよ、七槻くん」
「七槻くん?」
「電車間に合った? てメール来た」
意外と心配性だよね、と瑛貴が笑えば、依織からも笑う気配がする。
瑛貴が少しだけ依織のほうを向くと、思っていたよりもずっと近い位置に、依織の顔があった。
「アッキー…彼女とメールしないの?」
「するよ? でもこんな時間…絶対寝てるし」
「今、何時…?」
「えっと…あ、ケータイ、カバンの中…」
壁掛けの時計を確認するには、部屋の中は暗過ぎた。
携帯電話を見ようと、瑛貴はいつもの癖で枕元を探ったが空振りで、そういえば先ほどメールの後、カバンの中にしまったことを思い出した。
「アッキー、ケータイのアラームとか設定してる人?」
「してない」
「ならいいじゃん。時間はもういい…」
ふとんを抜け出て携帯電話を取りに行こうとする瑛貴を、依織がやんわりと引き止める。
まだ外は暗いし、辺りは静かだし、世間が目覚めるにも早すぎる時間だということは分かるから。
「…アッキー」
「ん? 、依織、」
2人、向き合って入るふとんの中。
依織は腕を伸ばして、瑛貴のシャツの背中を掴んだ。
上に乗った依織の腕が重いということはなくて、けれどまるで抱き付くような依織の体勢に、瑛貴は咎めるような声で依織の名を呼んだが、その手は離れない。
「彼女、OLさんなんでしょ? …いつメールとかすんの?」
「昼とか…起きてるし」
「…へぇ」
自分から聞いておいて、依織からは気のない返事しか返って来ない。
静かだと思っていた空間、しかしカチカチと1秒を刻んでいく時計の音が、2人の話し声だけでなく部屋を満たしている。
「アッキー、彼女のこと…」
依織の言葉は、途中で途切れた。
長い沈黙。
視線を合わせたまま。
ゆっくりと依織が、瑛貴との距離をさらに詰めた。
「…、」
瑛貴の唇は、何事かを紡ごうとした。
その言葉が何だったのか、依織の名前を呼ぼうとしたのか、咎めようとしたのか、それはもう、瑛貴自身にも分からない。
ただ静かに、唇は重なった。
マスカラを落としても長い依織のまつ毛が、瞬きのたびに羽ばたく。
瑛貴も依織も、瞳を閉じなかった。
忙しなく動くのは秒針。
依織とのキスは、アルコールの味がしない。
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「ん?」
静かになった部屋に、依織の小さな声。
瑛貴が返事をすれば、仰向けに寝ていた依織がもぞもぞ動いて、体ごと瑛貴のほうを向いた。
「さっきメールしてたの、…彼女?」
「ぅん? 違うよ、七槻くん」
「七槻くん?」
「電車間に合った? てメール来た」
意外と心配性だよね、と瑛貴が笑えば、依織からも笑う気配がする。
瑛貴が少しだけ依織のほうを向くと、思っていたよりもずっと近い位置に、依織の顔があった。
「アッキー…彼女とメールしないの?」
「するよ? でもこんな時間…絶対寝てるし」
「今、何時…?」
「えっと…あ、ケータイ、カバンの中…」
壁掛けの時計を確認するには、部屋の中は暗過ぎた。
携帯電話を見ようと、瑛貴はいつもの癖で枕元を探ったが空振りで、そういえば先ほどメールの後、カバンの中にしまったことを思い出した。
「アッキー、ケータイのアラームとか設定してる人?」
「してない」
「ならいいじゃん。時間はもういい…」
ふとんを抜け出て携帯電話を取りに行こうとする瑛貴を、依織がやんわりと引き止める。
まだ外は暗いし、辺りは静かだし、世間が目覚めるにも早すぎる時間だということは分かるから。
「…アッキー」
「ん? 、依織、」
2人、向き合って入るふとんの中。
依織は腕を伸ばして、瑛貴のシャツの背中を掴んだ。
上に乗った依織の腕が重いということはなくて、けれどまるで抱き付くような依織の体勢に、瑛貴は咎めるような声で依織の名を呼んだが、その手は離れない。
「彼女、OLさんなんでしょ? …いつメールとかすんの?」
「昼とか…起きてるし」
「…へぇ」
自分から聞いておいて、依織からは気のない返事しか返って来ない。
静かだと思っていた空間、しかしカチカチと1秒を刻んでいく時計の音が、2人の話し声だけでなく部屋を満たしている。
「アッキー、彼女のこと…」
依織の言葉は、途中で途切れた。
長い沈黙。
視線を合わせたまま。
ゆっくりと依織が、瑛貴との距離をさらに詰めた。
「…、」
瑛貴の唇は、何事かを紡ごうとした。
その言葉が何だったのか、依織の名前を呼ぼうとしたのか、咎めようとしたのか、それはもう、瑛貴自身にも分からない。
ただ静かに、唇は重なった。
マスカラを落としても長い依織のまつ毛が、瞬きのたびに羽ばたく。
瑛貴も依織も、瞳を閉じなかった。
忙しなく動くのは秒針。
依織とのキスは、アルコールの味がしない。
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柚子季杏 ⇒
ちゅーキターー!!!!
七槻の心配が的中になる?!
いおりん、寂しいだけの気持ちからアッキーを・・・ってのとも違うようですし、アッキー、どうする?
いおりんが女装しないでも済むようになればいいなー。
でも彼女さんもイイ人っぽいし…うぅ。
七槻の心配が的中になる?!
いおりん、寂しいだけの気持ちからアッキーを・・・ってのとも違うようですし、アッキー、どうする?
いおりんが女装しないでも済むようになればいいなー。
でも彼女さんもイイ人っぽいし…うぅ。
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
とうとうやっちゃいました!
イオリン、やっちゃいましたよ~!
もうホントにアッキー……あれだけ七槻さんに心配されておきながら、この有様。
どうしてくれましょう(笑)
果たしてアッキー、イオリンの寂しさを埋めて上げられる存在になれるでしょうか。
コメントありがとうございました!
イオリン、やっちゃいましたよ~!
もうホントにアッキー……あれだけ七槻さんに心配されておきながら、この有様。
どうしてくれましょう(笑)
果たしてアッキー、イオリンの寂しさを埋めて上げられる存在になれるでしょうか。
コメントありがとうございました!