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繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス (39)
2010.09.11 Sat
それからたっぷり1時間くらい掛けて街を一回りしたころ、ようやく東の空が明るくなり始めて、夜明けを予感させた。
駅にも少なからず人が向かい始めている。
「多分さ、今この駅にいる人たちの中で、俺らが一番歩いてきたよね?」
「ふはっ、お前が歩こう、つったんだろ?」
駅にいるのは、出張にでも向かうのであろうビジネスマンか、瑛貴たちのように終電に乗り遅れ、これから家へと向かおうとする人たち。
みんなここが最寄り駅なのだろう。
わざわざ遠回りして来たのなんて、絶対に瑛貴と依織の2人だけに違いない。
「じゃあアッキー、また今度ね?」
「え? は? 何で?」
突然足を止めた依織に、定期券の入った財布を取り出そうとしていた瑛貴が驚いたのも無理はない。
依織が別れの言葉を切り出したのは、まだ改札を抜ける前だからだ。前に一緒に駅に来たときは、依織も普通に改札内に入って、ホームまで依織を見送りに来たのに。
「んー、俺、電車乗んなくても帰れるからさぁ」
「はぁ?」
「アッキーには嘘つかないって言ったしね。だから今日はここでバイバイ」
ポカンとしている瑛貴に、依織は笑顔で手を振った。
「は? 何言ってんの、依織。え? 電車乗んなくていいのに、こんな時間まで何してたんだよ」
「…………。あはっ、アッキーてやっぱおもしろいねっ」
「何でだよ」
瑛貴にしたら、至極当たり前のことを聞いたつもりなのに、瑛貴の言葉に依織に吹き出し、声を上げて笑い出すから、何が何だか意味が分からない。
てっきり瑛貴は、依織が電車で帰るものだと思っていたから、何も気に止めず一緒にいたのだ。
帰る術があるのなら、JADEの狭いソファで窮屈になっていることも、意味もなく街中を歩き続けることもなかったのに。
「おもしろい、てか……おかしいの、お前じゃねぇの? え、俺が変なの?」
「アッキーが変だなんて言ってないじゃん」
依織はそう言うけれど、瑛貴はからかわれているようにしか思えない。
だって最初に会ったときだって、瑛貴は絡まれていた依織を心配して、駅まで送って行ったのだ。依織が電車で帰るものだと思っていたって、何の不思議もないのに。
「んー、だって歩くと家まで20分くらい掛かるからさぁ。送ってもらうには遠すぎるでしょ? アッキーすごい心配してたし、電車で帰ろっかな、て思って。てか、んふふふふ。きっと彼女も、アッキーのそういうとこ、好きになったんだろうね」
「は? 意味分かんね」
「そういう鈍感なとこ」
「え、バカにしてる?」
どうしてここでまた彼女の話が出て来るんだ? と、『意味分かんね』と言った言葉どおり、瑛貴には依織がこんなにも笑っている意味が分からない。
やっぱり俺、おかしいの? と瑛貴は首を傾げれば、依織がもう1度吹き出した。
「すぐに帰んなかったのはね、」
依織は一瞬だけ視線を落とした後、笑顔のまま顔を上げた。
依織がこんなにも笑っているのは、明け方の妙なテンションのせいだからだろうか。――――いや、依織はいつだって笑っている。笑顔。
「…すぐに帰んなかったのは、アッキーと、ちょっとでも長く一緒にいたかったからだよっ?」
「………………、えっ?」
「あはっ。じゃーね、アッキー」
「え、ちょっ、うわっ」
依織の言葉が頭の隅々にまで行き渡るより前、トンッと背中を押された瑛貴は、何も身構えていなかったせいもあって、大した力でもないのに簡単によろめいて、そのまま改札を抜けてしまった。
ちょうど手を突いたところが、改札機のカード読み取り部で、手にしていた定期券を読み込んで、改札が開いてしまったのだ。
「ちょっ依織…!」
「じゃあね、バイバイ」
依織は手を振りながら、街の中へと消えていく。
日が昇り、また1日が始まっていく。
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駅にも少なからず人が向かい始めている。
「多分さ、今この駅にいる人たちの中で、俺らが一番歩いてきたよね?」
「ふはっ、お前が歩こう、つったんだろ?」
駅にいるのは、出張にでも向かうのであろうビジネスマンか、瑛貴たちのように終電に乗り遅れ、これから家へと向かおうとする人たち。
みんなここが最寄り駅なのだろう。
わざわざ遠回りして来たのなんて、絶対に瑛貴と依織の2人だけに違いない。
「じゃあアッキー、また今度ね?」
「え? は? 何で?」
突然足を止めた依織に、定期券の入った財布を取り出そうとしていた瑛貴が驚いたのも無理はない。
依織が別れの言葉を切り出したのは、まだ改札を抜ける前だからだ。前に一緒に駅に来たときは、依織も普通に改札内に入って、ホームまで依織を見送りに来たのに。
「んー、俺、電車乗んなくても帰れるからさぁ」
「はぁ?」
「アッキーには嘘つかないって言ったしね。だから今日はここでバイバイ」
ポカンとしている瑛貴に、依織は笑顔で手を振った。
「は? 何言ってんの、依織。え? 電車乗んなくていいのに、こんな時間まで何してたんだよ」
「…………。あはっ、アッキーてやっぱおもしろいねっ」
「何でだよ」
瑛貴にしたら、至極当たり前のことを聞いたつもりなのに、瑛貴の言葉に依織に吹き出し、声を上げて笑い出すから、何が何だか意味が分からない。
てっきり瑛貴は、依織が電車で帰るものだと思っていたから、何も気に止めず一緒にいたのだ。
帰る術があるのなら、JADEの狭いソファで窮屈になっていることも、意味もなく街中を歩き続けることもなかったのに。
「おもしろい、てか……おかしいの、お前じゃねぇの? え、俺が変なの?」
「アッキーが変だなんて言ってないじゃん」
依織はそう言うけれど、瑛貴はからかわれているようにしか思えない。
だって最初に会ったときだって、瑛貴は絡まれていた依織を心配して、駅まで送って行ったのだ。依織が電車で帰るものだと思っていたって、何の不思議もないのに。
「んー、だって歩くと家まで20分くらい掛かるからさぁ。送ってもらうには遠すぎるでしょ? アッキーすごい心配してたし、電車で帰ろっかな、て思って。てか、んふふふふ。きっと彼女も、アッキーのそういうとこ、好きになったんだろうね」
「は? 意味分かんね」
「そういう鈍感なとこ」
「え、バカにしてる?」
どうしてここでまた彼女の話が出て来るんだ? と、『意味分かんね』と言った言葉どおり、瑛貴には依織がこんなにも笑っている意味が分からない。
やっぱり俺、おかしいの? と瑛貴は首を傾げれば、依織がもう1度吹き出した。
「すぐに帰んなかったのはね、」
依織は一瞬だけ視線を落とした後、笑顔のまま顔を上げた。
依織がこんなにも笑っているのは、明け方の妙なテンションのせいだからだろうか。――――いや、依織はいつだって笑っている。笑顔。
「…すぐに帰んなかったのは、アッキーと、ちょっとでも長く一緒にいたかったからだよっ?」
「………………、えっ?」
「あはっ。じゃーね、アッキー」
「え、ちょっ、うわっ」
依織の言葉が頭の隅々にまで行き渡るより前、トンッと背中を押された瑛貴は、何も身構えていなかったせいもあって、大した力でもないのに簡単によろめいて、そのまま改札を抜けてしまった。
ちょうど手を突いたところが、改札機のカード読み取り部で、手にしていた定期券を読み込んで、改札が開いてしまったのだ。
「ちょっ依織…!」
「じゃあね、バイバイ」
依織は手を振りながら、街の中へと消えていく。
日が昇り、また1日が始まっていく。
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