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繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス (6)
2010.08.09 Mon
「まーったく、ひどい言い草。あんな坊主の言うことなんか、信じないでね。えっと……依織、さん?」
「はい。友だちはみんな依織って呼ぶから、そう呼んでください」
「ふぅん、友だちは、ね」
「はい、友だちは」
七槻が口の端を上げて、意味深な雰囲気を持たせて言えば、依織もかわいらしい笑顔で繰り返した。
女の子の格好をしているけれど、実は男なんだってことを知っているのも友だち。
本当の名前を呼ぶのも友だち。
依織のことを人よりも少し深く知ることの出来るのは友だちだけだけれど、しかしそれ以上の関係にもなれないのだ。
「りょーかい。俺も依織って呼ぶ。だから依織も俺のこと、ナツて呼んでいいよ」
「ナツ? 七槻だから?」
「そう。お友だちだから、特別ね」
『七槻』が本名かは不明だが、その名前に因んだあだ名は確かに特別らしく、瑛貴や優輝など、この店の大抵の従業員は名前か、それに敬称を付けて呼ぶし、お客は源氏名で呼んでいる。
七槻に憧れている優輝は、出会って間もない(どころか、ほんの数分しか経っていない)のに、『ナツ』と呼ばせてもらえることになった依織を、羨ましそうに見ている。
でも実際のところ、もし自分もそう呼んで構わないと言われたところで、きっと緊張して、そんなふうに気軽には呼べないだろうが。
「もう、お店始まる時間ですか?」
「んー…開店まではまだ時間あるけど、そろそろ準備始めないと? かな? てか、お友だちーて言ったんだから、敬語やめてよ」
ホストや内勤たち従業員の増え始めた店内を見渡して、七槻は少し小首を傾げた。
瑛貴にしたら、いつもより遅い出勤時間なのだが、七槻にしては珍しく早く出勤したので、もう開店準備とか始める時間だっけ? と、実はよく分かっていない。
開店準備も従業員の大切な仕事で、それは年齢や入店歴に関係ないことだが、やはり指名本数の多いナンバークラスではなく、後輩が率先してやることになっている。
もちろんそんな決まりがあるわけではなくて、そんなに優しく面倒見のいい性格ではない七槻だって、従業員として、開店準備や片付けぐらいやろうと思うのだが、逆に後輩に気を遣わせてしまうので、先頭に立ってやらないようにしているのだ。
七槻の言葉に、もうそんな時間になっていると気が付いた優輝は、ヤバッ…! と、七槻や泰我に頭を下げて、急いで開店準備に加わりに行った。
「じゃあ、邪魔になるし、俺、帰ります……おっとと、帰るね」
「え、何で? 今日は遊びに来てくれたんじゃないの?」
「俺、ホストクラブで遊べるほど、お金なんて持ってないよ。泰我くんが働いてるの、どんなとこかなーて、ちょっと見に来ただけ。中に入れてもらえて、すっごいラッキー」
最初に言ったとおり、依織は本当に、泰我が働いている店を見てみようと思っていただけらしく、開店前とはいえ、JADEの中に入れてもらえたことを素直に喜んでいる。
店としても、いくら依織が泰我の友人でも、金のない人間を客には出来ないから、七槻も無理に引き止めることは出来ない。
「じゃあ俺、送るよ。駅まで? それとも…」
そう言って七槻は、さりげなく依織の肩を抱いた。
基本、七槻の営業スタイルは色恋営業なので、その気がなくても、恋人らしい振る舞いをするのはいつものこと。
しかしそこには泰我が割り込んだ。
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「はい。友だちはみんな依織って呼ぶから、そう呼んでください」
「ふぅん、友だちは、ね」
「はい、友だちは」
七槻が口の端を上げて、意味深な雰囲気を持たせて言えば、依織もかわいらしい笑顔で繰り返した。
女の子の格好をしているけれど、実は男なんだってことを知っているのも友だち。
本当の名前を呼ぶのも友だち。
依織のことを人よりも少し深く知ることの出来るのは友だちだけだけれど、しかしそれ以上の関係にもなれないのだ。
「りょーかい。俺も依織って呼ぶ。だから依織も俺のこと、ナツて呼んでいいよ」
「ナツ? 七槻だから?」
「そう。お友だちだから、特別ね」
『七槻』が本名かは不明だが、その名前に因んだあだ名は確かに特別らしく、瑛貴や優輝など、この店の大抵の従業員は名前か、それに敬称を付けて呼ぶし、お客は源氏名で呼んでいる。
七槻に憧れている優輝は、出会って間もない(どころか、ほんの数分しか経っていない)のに、『ナツ』と呼ばせてもらえることになった依織を、羨ましそうに見ている。
でも実際のところ、もし自分もそう呼んで構わないと言われたところで、きっと緊張して、そんなふうに気軽には呼べないだろうが。
「もう、お店始まる時間ですか?」
「んー…開店まではまだ時間あるけど、そろそろ準備始めないと? かな? てか、お友だちーて言ったんだから、敬語やめてよ」
ホストや内勤たち従業員の増え始めた店内を見渡して、七槻は少し小首を傾げた。
瑛貴にしたら、いつもより遅い出勤時間なのだが、七槻にしては珍しく早く出勤したので、もう開店準備とか始める時間だっけ? と、実はよく分かっていない。
開店準備も従業員の大切な仕事で、それは年齢や入店歴に関係ないことだが、やはり指名本数の多いナンバークラスではなく、後輩が率先してやることになっている。
もちろんそんな決まりがあるわけではなくて、そんなに優しく面倒見のいい性格ではない七槻だって、従業員として、開店準備や片付けぐらいやろうと思うのだが、逆に後輩に気を遣わせてしまうので、先頭に立ってやらないようにしているのだ。
七槻の言葉に、もうそんな時間になっていると気が付いた優輝は、ヤバッ…! と、七槻や泰我に頭を下げて、急いで開店準備に加わりに行った。
「じゃあ、邪魔になるし、俺、帰ります……おっとと、帰るね」
「え、何で? 今日は遊びに来てくれたんじゃないの?」
「俺、ホストクラブで遊べるほど、お金なんて持ってないよ。泰我くんが働いてるの、どんなとこかなーて、ちょっと見に来ただけ。中に入れてもらえて、すっごいラッキー」
最初に言ったとおり、依織は本当に、泰我が働いている店を見てみようと思っていただけらしく、開店前とはいえ、JADEの中に入れてもらえたことを素直に喜んでいる。
店としても、いくら依織が泰我の友人でも、金のない人間を客には出来ないから、七槻も無理に引き止めることは出来ない。
「じゃあ俺、送るよ。駅まで? それとも…」
そう言って七槻は、さりげなく依織の肩を抱いた。
基本、七槻の営業スタイルは色恋営業なので、その気がなくても、恋人らしい振る舞いをするのはいつものこと。
しかしそこには泰我が割り込んだ。
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