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僕らの青春に明日はない (88)
2010.05.30 Sun
この旅行券で、和衣が祐介を旅行に誘いたがっていること、それは言わなければ伝わらない。
もしかしたら祐介は気付いているかもしれないけれど、まさか、俺を旅行に誘いたいの? なんて言わないだろうし。
「旅行、行…」
「ん?」
殆ど聞き取れないくらいの声で、俯き加減に和衣が言うから、祐介は本当に聞き取れなくて、その顔を覗き込んだ。
何で聞こえなかったの? と、ちょっと切ない気持ちになったのが半分、恥ずかしいから聞こえなくてよかったと思う気持ちが半分。
でもやっぱり、聞こえなくてよかった、かな。
(だってそんな、旅行に誘うとか…)
いきなりそんなに積極的には、なれないし。
もうスカートは穿いていなくて、パンツが見えるのを気にしなくてもいいから、正座を崩した格好で座っていた和衣は、膝で祐介のほうにさらにずり寄って、ムギュ~と抱き付く腕に力を込める。
「…また今度言うね」
「そうなの?」
「うん。だから今は……もうちょっとこうやってて?」
ギュッと抱き締めてて。
それだけでも、十分ご褒美。
旅行は、また次の楽しみに取っておく。
「そういえば、ずっとちゃんと言えてなかったけど…」
「ん?」
「和衣、2位おめでとう。…で、もしかしたら言われたくないかもだけど……かわいかったよ」
「え…」
抱き締められたまま、和衣はハッと顔を上げる。
マスカラの付いた長いまつ毛を羽ばたかせ、和衣はパチパチと何度も瞬きをした。
「あ、いや、ゴメン。かわいいとか、言われたくないだろうな、とは思ったんだけど…」
黙り込んでしまった和衣を、気を悪くしたのだと思ったのか、祐介は慌てて付け加える。
和衣はずっと、かわいいとか言われたくない! と言って来たのだから、祐介がそう勘違いしてもおかしくはない。
――――そう、勘違い。
和衣は別に、祐介の"かわいい"という言葉に、機嫌を損ねたわけではない。祐介から初めてそんな言葉を聞いて、嬉しいのと照れ臭いのが一緒になって、何も言えなくなってしまったのだ。
「…んーん、嬉しい」
「え?」
「かわいい、て……祐介に言われて、すごい嬉しい」
はにかむように笑って、和衣は目を伏せた。
男だから、やっぱりかわいいとか言われるのは…と思っていたけれど、祐介に言われるのは、心地よくて、擽ったい。
「でももう…何か中途半端な格好になっちゃったよね。スカートからジャージに穿き返させてくれたのは、すっごい有り難いけど」
女の子モノのシャツとカーディガンを着て、化粧までしているのに、下は男物のジャージ。
自分の今の格好を見て、和衣は笑った。
もしかしたら祐介は気付いているかもしれないけれど、まさか、俺を旅行に誘いたいの? なんて言わないだろうし。
「旅行、行…」
「ん?」
殆ど聞き取れないくらいの声で、俯き加減に和衣が言うから、祐介は本当に聞き取れなくて、その顔を覗き込んだ。
何で聞こえなかったの? と、ちょっと切ない気持ちになったのが半分、恥ずかしいから聞こえなくてよかったと思う気持ちが半分。
でもやっぱり、聞こえなくてよかった、かな。
(だってそんな、旅行に誘うとか…)
いきなりそんなに積極的には、なれないし。
もうスカートは穿いていなくて、パンツが見えるのを気にしなくてもいいから、正座を崩した格好で座っていた和衣は、膝で祐介のほうにさらにずり寄って、ムギュ~と抱き付く腕に力を込める。
「…また今度言うね」
「そうなの?」
「うん。だから今は……もうちょっとこうやってて?」
ギュッと抱き締めてて。
それだけでも、十分ご褒美。
旅行は、また次の楽しみに取っておく。
「そういえば、ずっとちゃんと言えてなかったけど…」
「ん?」
「和衣、2位おめでとう。…で、もしかしたら言われたくないかもだけど……かわいかったよ」
「え…」
抱き締められたまま、和衣はハッと顔を上げる。
マスカラの付いた長いまつ毛を羽ばたかせ、和衣はパチパチと何度も瞬きをした。
「あ、いや、ゴメン。かわいいとか、言われたくないだろうな、とは思ったんだけど…」
黙り込んでしまった和衣を、気を悪くしたのだと思ったのか、祐介は慌てて付け加える。
和衣はずっと、かわいいとか言われたくない! と言って来たのだから、祐介がそう勘違いしてもおかしくはない。
――――そう、勘違い。
和衣は別に、祐介の"かわいい"という言葉に、機嫌を損ねたわけではない。祐介から初めてそんな言葉を聞いて、嬉しいのと照れ臭いのが一緒になって、何も言えなくなってしまったのだ。
「…んーん、嬉しい」
「え?」
「かわいい、て……祐介に言われて、すごい嬉しい」
はにかむように笑って、和衣は目を伏せた。
男だから、やっぱりかわいいとか言われるのは…と思っていたけれど、祐介に言われるのは、心地よくて、擽ったい。
「でももう…何か中途半端な格好になっちゃったよね。スカートからジャージに穿き返させてくれたのは、すっごい有り難いけど」
女の子モノのシャツとカーディガンを着て、化粧までしているのに、下は男物のジャージ。
自分の今の格好を見て、和衣は笑った。
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- 僕らの青春に明日はない (89) (2010/05/31)
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僕らの青春に明日はない (89)
2010.05.31 Mon
「でも高校のころ、スカートの下にジャージ穿いてる子いなかった?」
「あー、いたいた! あれ、何なんだろうね。祐介の高校にもいた? どこにもいんの? こっち来てから見なくなったけど……いなかの女子高生は、みんなしてんのかな?」
オシャレなのか、単なる防寒対策なのか、スカートの下にジャージを穿く女の子の気持ちは、男子である2人には理解しがたく、今思い出しても、何だか笑える。
「…ん」
祐介の腕の中で無邪気に笑っていた和衣は、急に降って来たキスに目を閉じた。
いつもより唇がペタペタするのは、きっと塗られたグロスのせい。
和衣が高校生のころに付き合っていた彼女は、今の和衣ほどのメイクもしない子だったから、リップグロスの付いた唇でのキスは初めて。
まさか自分がグロスを付けているほうになるなんて、夢にも思わなかったけれど。
「ゆっ…」
なぞるように下唇を舐められ、ビクッ…と和衣の体が震えた。
真大と違って、女装したからといって、人前で、しかもいつも以上に恋人とイチャイチャするなんてマネも出来ず、おまけにバタバタ忙しかったから、ずっと祐介が不足していた。
ん~…いっぱい補給されてる感じ……と、ここが寮の祐介の部屋だということを忘れて、和衣はキスに溺れそうになる。
「かず…」
唇が離れた瞬間、名前を呼ばれて、和衣は身も心もキュウ~~ンとなってしまう。
キスが終わってしまうのは寂しいけれど、名前を呼ばれると、そんな寂しさも忘れてしまうくらい、嬉しい気持ちがいっぱいになる。
「ゆーすけ…、唇、赤い…」
離れた祐介の唇が、何だか先ほどより赤い感じがする。
気のせい? 疲れ過ぎて、何だか視覚がおかしくなって来た? と首を傾げる和衣に、指先で自分の唇を拭った祐介が苦笑する。
「和衣のグロスが付いたんだよ」
「そ…そうなの!?」
口紅やグロスを付けてキスすると、そんなことあるんだ…と、和衣は妙なところで感心してしまう。
そんなことを知っているなんて、昔彼女とキスしたとき……と、和衣は得意の嫉妬心に駆られそうになり、慌ててそれを打ち消した。
「も…お化粧、落とすね?」
祐介にはかわいいと褒めてもらえたけれど、やっぱり祐介の前では、メイクした姿ではなく、いつも自分の顔でいたい。
和衣は先ほど投げ出してしまった、アイメイク用のリムーバーをコットンに取った。
「化粧落とすのに、こんなに使うの? て言ったら、『当たり前でしょ!』て怒られたんだけど、俺」
「俺も怒られたよー。値段もめっちゃ高いの、言ったら『もっと高いのなんて、いくらでもあるから』て言われちゃった。女の子て、ホント大変だよねー。ねぇねぇ、マスカラ落ちた?」
コットンにはたっぷりと、落ちたマスカラが付いているけれど、まだ何だかまつ毛がバサバサしている感じがする。
「目尻のほうに付いてるよ」
祐介は新しいコットンにリムーバーを取ると、和衣のまつ毛にまだ残っているマスカラを丁寧に落としてあげる。
和衣は不器用ではないが、わりと大雑把な性格をしているので、実はこういう作業には向いていないのだ。
「あー、いたいた! あれ、何なんだろうね。祐介の高校にもいた? どこにもいんの? こっち来てから見なくなったけど……いなかの女子高生は、みんなしてんのかな?」
オシャレなのか、単なる防寒対策なのか、スカートの下にジャージを穿く女の子の気持ちは、男子である2人には理解しがたく、今思い出しても、何だか笑える。
「…ん」
祐介の腕の中で無邪気に笑っていた和衣は、急に降って来たキスに目を閉じた。
いつもより唇がペタペタするのは、きっと塗られたグロスのせい。
和衣が高校生のころに付き合っていた彼女は、今の和衣ほどのメイクもしない子だったから、リップグロスの付いた唇でのキスは初めて。
まさか自分がグロスを付けているほうになるなんて、夢にも思わなかったけれど。
「ゆっ…」
なぞるように下唇を舐められ、ビクッ…と和衣の体が震えた。
真大と違って、女装したからといって、人前で、しかもいつも以上に恋人とイチャイチャするなんてマネも出来ず、おまけにバタバタ忙しかったから、ずっと祐介が不足していた。
ん~…いっぱい補給されてる感じ……と、ここが寮の祐介の部屋だということを忘れて、和衣はキスに溺れそうになる。
「かず…」
唇が離れた瞬間、名前を呼ばれて、和衣は身も心もキュウ~~ンとなってしまう。
キスが終わってしまうのは寂しいけれど、名前を呼ばれると、そんな寂しさも忘れてしまうくらい、嬉しい気持ちがいっぱいになる。
「ゆーすけ…、唇、赤い…」
離れた祐介の唇が、何だか先ほどより赤い感じがする。
気のせい? 疲れ過ぎて、何だか視覚がおかしくなって来た? と首を傾げる和衣に、指先で自分の唇を拭った祐介が苦笑する。
「和衣のグロスが付いたんだよ」
「そ…そうなの!?」
口紅やグロスを付けてキスすると、そんなことあるんだ…と、和衣は妙なところで感心してしまう。
そんなことを知っているなんて、昔彼女とキスしたとき……と、和衣は得意の嫉妬心に駆られそうになり、慌ててそれを打ち消した。
「も…お化粧、落とすね?」
祐介にはかわいいと褒めてもらえたけれど、やっぱり祐介の前では、メイクした姿ではなく、いつも自分の顔でいたい。
和衣は先ほど投げ出してしまった、アイメイク用のリムーバーをコットンに取った。
「化粧落とすのに、こんなに使うの? て言ったら、『当たり前でしょ!』て怒られたんだけど、俺」
「俺も怒られたよー。値段もめっちゃ高いの、言ったら『もっと高いのなんて、いくらでもあるから』て言われちゃった。女の子て、ホント大変だよねー。ねぇねぇ、マスカラ落ちた?」
コットンにはたっぷりと、落ちたマスカラが付いているけれど、まだ何だかまつ毛がバサバサしている感じがする。
「目尻のほうに付いてるよ」
祐介は新しいコットンにリムーバーを取ると、和衣のまつ毛にまだ残っているマスカラを丁寧に落としてあげる。
和衣は不器用ではないが、わりと大雑把な性格をしているので、実はこういう作業には向いていないのだ。
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