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12月 手ぶらのぼくにプレゼント強要。 (5)
2009.06.08 Mon
「カズくん?」
「…人を好きになると、ハッピーなことばっかじゃないよね。俺も昔、すっごい好きだった子に失恋しちゃって、そのときは、もう絶対誰にも好きになんない! て思ってね、彼女より好きになる人なんか、絶対に出て来ないって思ったけど、でも今は、……今好きな人のこと、すっごい大事で、大好き」
そう言う和衣の表情が本当に幸せそうで、きっと今の恋を手に入れるまでに、いろんな思いをしてきたんだろうな、と思う。
こんなに思ってもらえる相手が、羨ましい。
蒼一郎は、いつか真大にもそんな人が現れると言ったけれど、とてもそんなふうには思えない。
…だって、ロクなことがなかったし。
「俺ね、恋してもロクなことないんですよ」
「え?」
こんなこと、和衣に話すべきことじゃない。
そう思うのに、和衣の優しい気持ちに触れていると、つい頑なな心を開いてしまいそうになる。
「高校のころに付き合ってた彼女もね、先輩に取られちゃって」
「取られ…」
「ひどい話でしょ。だからその先輩のこと、ずっと恨んでたの。大っ嫌いだった。……でもね、なのに、ホントは彼女のほうが裏切ってたんだって。俺と付き合ってたのに、その先輩に告白したって」
「そんな…」
和衣の表情が、愕然としたものに変わった。
そんなに簡単に人の心を裏切れるなんて、信じられない、て顔。
でも真大だって、そんなこと、信じたくはなかったけれど。
「何か、何信じたらいいか、分かんなくなっちゃって。…てか、そんなのまだ信じらんない。でも…」
「ん?」
「そのことね、ホントは彼女のほうが、てこと、その先輩から聞いたの。だから最初は何言ってんの、て思って。でもね、その人…その先輩ね、彼女のこと、信じててやれって言ったの…」
真大は何度も瞬きをした。
何だか話しているうち、鼻の奥がツンとして、涙が零れそうな気がしたから。
「その先輩のこと……真大、今も嫌いなの?」
真大の言う先輩が、まさか翔真だなんて思ってもみない和衣は、思い掛けない真大の告白を聞いて、心配そうに、窺うように尋ねてきた。
「…どうかな。前みたいに、大っ嫌いとかは思わないですけど」
「仲直りとか、しないの?」
「許してくれないと思う。その先輩とね、その後、別の理由でケンカしちゃって。ケンカっていうか…俺が一方的に言っただけなんですけど。結局その人とは、それっきりだから」
今になってみれば、何であんなに激昂したのかと思うほど、翔真に対して怒りが湧いて、ひどい言葉も投げ掛けた。
蒼一郎とのこと、蒼一郎が郁雅と付き合っていることだって、翔真は何も悪くないし、関係ないのに、あんまりにも自分が惨めで、切なくて、苦しくて。
「でももう怒ってないんでしょ? 恨んだりとか、嫌ったりとかしてないんでしょ?」
「まぁ…ですね」
「だったらそのこと、言ったら? その人だって、真大にずっと嫌われたままだって思ってるの、ツライよ。人に嫌われてるって、だってヤじゃん」
「でも、もう話もしないし……まともに会ってないんで。そのうち、俺のこともどうでもよくなると思いますから」
真大がそう言えば、まるで和衣は、自分が当事者のように辛そうな顔をした。
けれど、あの夏の日以来、翔真とまともに顔を合わせていないのも、事実だ。
避けているのは真大のほうだけれど、翔真だって別にそれを気にするふうでもなく、構内で見掛けたからといって、こちらを気にもしていない。
もう2人は、そういう関係になってしまったのだ。
「何か…寂しいね」
「え?」
「どうでもいいとか、そう思われるのって、何か寂しいよね。…でも、もしかしたらどっかで俺も、そんなふうに思われてんのかな」
目を伏せた和衣は、ガラスの器の中に残ったミニトマトをフォークの先でつついた。
「…人を好きになると、ハッピーなことばっかじゃないよね。俺も昔、すっごい好きだった子に失恋しちゃって、そのときは、もう絶対誰にも好きになんない! て思ってね、彼女より好きになる人なんか、絶対に出て来ないって思ったけど、でも今は、……今好きな人のこと、すっごい大事で、大好き」
そう言う和衣の表情が本当に幸せそうで、きっと今の恋を手に入れるまでに、いろんな思いをしてきたんだろうな、と思う。
こんなに思ってもらえる相手が、羨ましい。
蒼一郎は、いつか真大にもそんな人が現れると言ったけれど、とてもそんなふうには思えない。
…だって、ロクなことがなかったし。
「俺ね、恋してもロクなことないんですよ」
「え?」
こんなこと、和衣に話すべきことじゃない。
そう思うのに、和衣の優しい気持ちに触れていると、つい頑なな心を開いてしまいそうになる。
「高校のころに付き合ってた彼女もね、先輩に取られちゃって」
「取られ…」
「ひどい話でしょ。だからその先輩のこと、ずっと恨んでたの。大っ嫌いだった。……でもね、なのに、ホントは彼女のほうが裏切ってたんだって。俺と付き合ってたのに、その先輩に告白したって」
「そんな…」
和衣の表情が、愕然としたものに変わった。
そんなに簡単に人の心を裏切れるなんて、信じられない、て顔。
でも真大だって、そんなこと、信じたくはなかったけれど。
「何か、何信じたらいいか、分かんなくなっちゃって。…てか、そんなのまだ信じらんない。でも…」
「ん?」
「そのことね、ホントは彼女のほうが、てこと、その先輩から聞いたの。だから最初は何言ってんの、て思って。でもね、その人…その先輩ね、彼女のこと、信じててやれって言ったの…」
真大は何度も瞬きをした。
何だか話しているうち、鼻の奥がツンとして、涙が零れそうな気がしたから。
「その先輩のこと……真大、今も嫌いなの?」
真大の言う先輩が、まさか翔真だなんて思ってもみない和衣は、思い掛けない真大の告白を聞いて、心配そうに、窺うように尋ねてきた。
「…どうかな。前みたいに、大っ嫌いとかは思わないですけど」
「仲直りとか、しないの?」
「許してくれないと思う。その先輩とね、その後、別の理由でケンカしちゃって。ケンカっていうか…俺が一方的に言っただけなんですけど。結局その人とは、それっきりだから」
今になってみれば、何であんなに激昂したのかと思うほど、翔真に対して怒りが湧いて、ひどい言葉も投げ掛けた。
蒼一郎とのこと、蒼一郎が郁雅と付き合っていることだって、翔真は何も悪くないし、関係ないのに、あんまりにも自分が惨めで、切なくて、苦しくて。
「でももう怒ってないんでしょ? 恨んだりとか、嫌ったりとかしてないんでしょ?」
「まぁ…ですね」
「だったらそのこと、言ったら? その人だって、真大にずっと嫌われたままだって思ってるの、ツライよ。人に嫌われてるって、だってヤじゃん」
「でも、もう話もしないし……まともに会ってないんで。そのうち、俺のこともどうでもよくなると思いますから」
真大がそう言えば、まるで和衣は、自分が当事者のように辛そうな顔をした。
けれど、あの夏の日以来、翔真とまともに顔を合わせていないのも、事実だ。
避けているのは真大のほうだけれど、翔真だって別にそれを気にするふうでもなく、構内で見掛けたからといって、こちらを気にもしていない。
もう2人は、そういう関係になってしまったのだ。
「何か…寂しいね」
「え?」
「どうでもいいとか、そう思われるのって、何か寂しいよね。…でも、もしかしたらどっかで俺も、そんなふうに思われてんのかな」
目を伏せた和衣は、ガラスの器の中に残ったミニトマトをフォークの先でつついた。
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柚子季杏 ⇒ ゜+.゜.(⊃Д`*)゜+.゜
カズちゃんて裏表が全くって位無いから、発する言葉が、見せる表情が、クイッと素直に心をノックしてくれちゃいますよね~。
スルスルって入り込んでくる…。
ゆっちもこういうところに惹かれたんだろうなぁ(*´∀`*)
気にしてますなんて顔を、翔ちゃんがしちゃってたら、それまたマヒロたん自己嫌悪になって悩むでしょうに…翔ちゃんも気にして無いって風を装うしかなかったのよ~~?
あぁ…お互いに気に掛かっているのに、この擦れ違い、もどかしさ!
恋愛の醍醐味、そして青春ですなぁ(しみじみ)
スルスルって入り込んでくる…。
ゆっちもこういうところに惹かれたんだろうなぁ(*´∀`*)
気にしてますなんて顔を、翔ちゃんがしちゃってたら、それまたマヒロたん自己嫌悪になって悩むでしょうに…翔ちゃんも気にして無いって風を装うしかなかったのよ~~?
あぁ…お互いに気に掛かっているのに、この擦れ違い、もどかしさ!
恋愛の醍醐味、そして青春ですなぁ(しみじみ)
りり ⇒ 真大ちゃんが
翔ちゃんをもう嫌ったり恨んだりしていないことにちょっとホッとします。
柚子季さまのコメにもあるますように、カズちゃんのオープンな心が人を素直に柔らかくしてくれるんでしょうね。
この対話で、真大ちゃんが、翔ちゃんの気持ちを少しでも考えてみてくれないかな…。
恋をすれば、まるでいつも自分だけが知らずに惨めな思いをする、真大ちゃんホント可哀想です。
相思相愛の相手に巡り会ってほしい、それが翔ちゃんだったらいいな!と思います。
柚子季さまのコメにもあるますように、カズちゃんのオープンな心が人を素直に柔らかくしてくれるんでしょうね。
この対話で、真大ちゃんが、翔ちゃんの気持ちを少しでも考えてみてくれないかな…。
恋をすれば、まるでいつも自分だけが知らずに惨めな思いをする、真大ちゃんホント可哀想です。
相思相愛の相手に巡り会ってほしい、それが翔ちゃんだったらいいな!と思います。
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
> カズちゃんて裏表が全くって位無いから、発する言葉が、見せる表情が、クイッと素直に心をノックしてくれちゃいますよね~。
> スルスルって入り込んでくる…。
> ゆっちもこういうところに惹かれたんだろうなぁ(*´∀`*)
こんなに素直になれたらいいなぁ、という私の願望もだいぶ籠ってます(^_^;)
素直すぎて、器用になれないこともいっぱいあるんだけれど、すごく一生懸命……確かにゆっちさんが惚れるのも無理はない…(笑)
> あぁ…お互いに気に掛かっているのに、この擦れ違い、もどかしさ!
気にしてるけれど、今さら言えない! みたいな。
ホント、傍から見てるともどかしいですよね。
でも確かにこれが青春の醍醐味かも…vv
コメントありがとうございました!
> スルスルって入り込んでくる…。
> ゆっちもこういうところに惹かれたんだろうなぁ(*´∀`*)
こんなに素直になれたらいいなぁ、という私の願望もだいぶ籠ってます(^_^;)
素直すぎて、器用になれないこともいっぱいあるんだけれど、すごく一生懸命……確かにゆっちさんが惚れるのも無理はない…(笑)
> あぁ…お互いに気に掛かっているのに、この擦れ違い、もどかしさ!
気にしてるけれど、今さら言えない! みたいな。
ホント、傍から見てるともどかしいですよね。
でも確かにこれが青春の醍醐味かも…vv
コメントありがとうございました!
如月久美子 ⇒ >りりさん
> 翔ちゃんをもう嫌ったり恨んだりしていないことにちょっとホッとします。
当時はただ感情に任せて怒り爆発だったけれど、今になったら、自分でも何でこんなに怒ってたの? て気持ちなんだと思います。
でも今さら、どんなふうに接していいか、分からないし…みたいな。
> 柚子季さまのコメにもあるますように、カズちゃんのオープンな心が人を素直に柔らかくしてくれるんでしょうね。
カズちゃん、自分にも他人にも、常に正直。
だから相手も素直になれるのかも。
こんなふうになれたらなぁ…と、自分でも思います。
> 恋をすれば、まるでいつも自分だけが知らずに惨めな思いをする、真大ちゃんホント可哀想です。
楽しいことや嬉しいこともいっぱいあるんですけどね。
真大タン、この年でつらいこといっぱいありすぎて、すでに恋にお疲れ気味です。
この心を癒せるのは翔ちゃんなのか……カズちゃんなのか?
12月はまだまだ続きますので、どうぞお付き合いよろしくです。
コメントありがとうございました!
当時はただ感情に任せて怒り爆発だったけれど、今になったら、自分でも何でこんなに怒ってたの? て気持ちなんだと思います。
でも今さら、どんなふうに接していいか、分からないし…みたいな。
> 柚子季さまのコメにもあるますように、カズちゃんのオープンな心が人を素直に柔らかくしてくれるんでしょうね。
カズちゃん、自分にも他人にも、常に正直。
だから相手も素直になれるのかも。
こんなふうになれたらなぁ…と、自分でも思います。
> 恋をすれば、まるでいつも自分だけが知らずに惨めな思いをする、真大ちゃんホント可哀想です。
楽しいことや嬉しいこともいっぱいあるんですけどね。
真大タン、この年でつらいこといっぱいありすぎて、すでに恋にお疲れ気味です。
この心を癒せるのは翔ちゃんなのか……カズちゃんなのか?
12月はまだまだ続きますので、どうぞお付き合いよろしくです。
コメントありがとうございました!