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6月 離れて歩くずぶ濡れ相合傘。 (14)
2009.04.08 Wed
真大は彼女のことを愛していて、そして翔真のことを憎んでいる。もし本当のことを言えば、翔真の誤解は解けるだろうけど、真大がずっと信じてきた彼女の想いは裏切られてしまう。
彼女のキレイな思い出を、今さら壊す必要なんてあるのかな。
「何、山口くん」
「いや、何でも…」
「ないわけないですよね、あれだけの反応しといて」
「……」
さっきまで普通にタメ口だったくせに、真大は急に敬語になって、しかもそれが決して敬う気持ちから来るものでないことも分かる。
それはつまり、はっきり言えよ、てことだ。
「……告って来たの、向こうなんだけど」
「え?」
「別れよう、て言ったのも」
結局は、見た目だけしか思われていなかった。
中身なんて何も見られていなかったし、はっきり言えばどうでもいいと思われていたわけで。
今、こうして真大に言われても、なかなか彼女のことを思い出せなかったのは、そんな思い出を封印してしまいたかったからかもしれない。
だってそんな惨めな思い。
「嘘……そんなの信じない…」
「うん、彼女のこと信じててやれよ。俺のこと恨んでるほうが、楽だろ?」
真大は何も言わなかった。
落とした視線は、濡れた地面を蹴る、自分の足先をジッと見つめていた。
「……つーかお前、その恨みのために、俺のこと追っ掛けて、ウチの大学入ったの?」
「はっ!? 違ぇよ、蒼ちゃんに会いたくて…あっ」
「……」
別に誘導尋問とか、そんなつもりじゃなかった。
真大はずっと、彼女を翔真に取られたと思い込んで、恨んでいたわけで、それなのに同じ大学に入学するというのは、恨みを晴らすために追い掛けて来たと思われても、致し方ない。
だからちょっと聞いてみただけなのに、うっかり口を滑らせたのは、真大のほうだ。
もちろん、今さら口にして言わなくたって、今までの、真大の蒼一郎に対する態度は分かりやすすぎたけれど。
「何だよ、その顔。弱み握られた、て思ってる?」
「…別に」
「別に何もしねぇよ。お前が誰のこと好きだろうが、俺には関係ねぇし」
言えば、真大はまだ半信半疑のようだったが、少しホッとした様子だった。
けれど、蒼一郎には郁雅がいる。
真大はそのことに、気付いてはいないのだろう。
単なる憧れならいいが、真大の思いは恋心だ。翔真の、『好きだろうが』と言うセリフに、真大は否定もごまかしもしなかったし、何よりその目は、明らかに恋慕の情を孕んでいる。
しかし蒼一郎が隠そうとしていることを、翔真が勝手に喋るわけにもいかない。
真大も、もうそのことには触れないで、と言うように押し黙ってしまったので、寮に着くまでの間、再びその話題が上ることはなかった。
真大と出会って、2か月弱。
ようやく解けた誤解に、ほんの少しだけ心が歩み寄ったような気はしたけれど、しかし確信してしまった真大の想いに、翔真は何とも言えない気持ちのまま、寮に戻った。
彼女のキレイな思い出を、今さら壊す必要なんてあるのかな。
「何、山口くん」
「いや、何でも…」
「ないわけないですよね、あれだけの反応しといて」
「……」
さっきまで普通にタメ口だったくせに、真大は急に敬語になって、しかもそれが決して敬う気持ちから来るものでないことも分かる。
それはつまり、はっきり言えよ、てことだ。
「……告って来たの、向こうなんだけど」
「え?」
「別れよう、て言ったのも」
結局は、見た目だけしか思われていなかった。
中身なんて何も見られていなかったし、はっきり言えばどうでもいいと思われていたわけで。
今、こうして真大に言われても、なかなか彼女のことを思い出せなかったのは、そんな思い出を封印してしまいたかったからかもしれない。
だってそんな惨めな思い。
「嘘……そんなの信じない…」
「うん、彼女のこと信じててやれよ。俺のこと恨んでるほうが、楽だろ?」
真大は何も言わなかった。
落とした視線は、濡れた地面を蹴る、自分の足先をジッと見つめていた。
「……つーかお前、その恨みのために、俺のこと追っ掛けて、ウチの大学入ったの?」
「はっ!? 違ぇよ、蒼ちゃんに会いたくて…あっ」
「……」
別に誘導尋問とか、そんなつもりじゃなかった。
真大はずっと、彼女を翔真に取られたと思い込んで、恨んでいたわけで、それなのに同じ大学に入学するというのは、恨みを晴らすために追い掛けて来たと思われても、致し方ない。
だからちょっと聞いてみただけなのに、うっかり口を滑らせたのは、真大のほうだ。
もちろん、今さら口にして言わなくたって、今までの、真大の蒼一郎に対する態度は分かりやすすぎたけれど。
「何だよ、その顔。弱み握られた、て思ってる?」
「…別に」
「別に何もしねぇよ。お前が誰のこと好きだろうが、俺には関係ねぇし」
言えば、真大はまだ半信半疑のようだったが、少しホッとした様子だった。
けれど、蒼一郎には郁雅がいる。
真大はそのことに、気付いてはいないのだろう。
単なる憧れならいいが、真大の思いは恋心だ。翔真の、『好きだろうが』と言うセリフに、真大は否定もごまかしもしなかったし、何よりその目は、明らかに恋慕の情を孕んでいる。
しかし蒼一郎が隠そうとしていることを、翔真が勝手に喋るわけにもいかない。
真大も、もうそのことには触れないで、と言うように押し黙ってしまったので、寮に着くまでの間、再びその話題が上ることはなかった。
真大と出会って、2か月弱。
ようやく解けた誤解に、ほんの少しだけ心が歩み寄ったような気はしたけれど、しかし確信してしまった真大の想いに、翔真は何とも言えない気持ちのまま、寮に戻った。
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COMMENT-FORM
柚子季杏 ⇒ 確かに~
何ともいえない複雑な胸中でしょうねぇ(´∀`;)
蒼くんのこともなぁ~、アレだけ一緒に行動してて、郁ちゃんとの事気付いてないのか…よっぽど郁が気を遣ってるんでしょうな(苦笑)
蒼くんだけならあっさりバレてそうだし^^;
>「嘘……そんなの信じない…」
>「うん、彼女のこと信じててやれよ。俺のこと恨んでるほうが、楽だろ?」
この遣り取りに悶えました(///∇//)テレテレ☆
こういう台詞をサラリと言ってのけて、それが様になるってーー!!!キャーー!!みたいなw
翔ちゃん格好いいよーー!ゆっちとは違った格好良さ…如月さんのとこはイイ男が多すぎて困っちゃいます!
蒼くんのこともなぁ~、アレだけ一緒に行動してて、郁ちゃんとの事気付いてないのか…よっぽど郁が気を遣ってるんでしょうな(苦笑)
蒼くんだけならあっさりバレてそうだし^^;
>「嘘……そんなの信じない…」
>「うん、彼女のこと信じててやれよ。俺のこと恨んでるほうが、楽だろ?」
この遣り取りに悶えました(///∇//)テレテレ☆
こういう台詞をサラリと言ってのけて、それが様になるってーー!!!キャーー!!みたいなw
翔ちゃん格好いいよーー!ゆっちとは違った格好良さ…如月さんのとこはイイ男が多すぎて困っちゃいます!
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
真大タンとしても、何を信じたらいいのか……て感じですよね。
自分だったら、とても立ち直れそうもないかな、て思います。
> こういう台詞をサラリと言ってのけて、それが様になるってーー!!!キャーー!!みたいなw
そうですよね。
こんなセリフが様になるって、なかなかないですよね。
亮タンとかが言ったら、むっちゃんに、「は?」みたいな顔されそう(^_^;)
コメントありがとうございました!
自分だったら、とても立ち直れそうもないかな、て思います。
> こういう台詞をサラリと言ってのけて、それが様になるってーー!!!キャーー!!みたいなw
そうですよね。
こんなセリフが様になるって、なかなかないですよね。
亮タンとかが言ったら、むっちゃんに、「は?」みたいな顔されそう(^_^;)
コメントありがとうございました!