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その手なら離さないでね (10)
2016.08.02 Tue
「本当にありがとうございました」
彼女は何度もそう言って頭を下げた。サービスカウンターのお姉さんたちは、『再会できてよかったです』と笑っている。
母親として、子どもから目を離し、迷子にさせてしまった申し訳なさや罪悪感から、何度謝罪や感謝しても足りない気持ちだろうが、何よりも2人が再会できたことを喜ぶべきなのだ。
「ホラ」
睦月は、母親の腕の中のミズキに、持っていたジュースを差し出した。
これは睦月がミズキから貰ったものではあるけれど、もともとはミズキが貰ったものだし、先ほどまでは睦月とのやり取りがおもしろくて、その中の1つの遊びとして睦月にこれをくれたのだろうが、ジュースがいらない子どもなど、いるはずがないのだ。
しかしミズキは手を伸ばさなかった。
「ダメ、むちゅきの」
どうしてもそのジュースは睦月のものだと譲らない。
いや、くれると言うなら貰うが、2歳児でさえ受け取らないジュースを、21歳の大学生が貰っていいものなのかと、ちょっと悩む。
「ミズキくん、こっちのジュースあげるね」
睦月の困っている様子を感じ取ったのか、サービスカウンターのお姉さんが、ミズキにもう1本のジュースを渡した。
母親は大層遠慮したが、お姉さんが何度も勧めたので、恐縮しながらも受け取った。
「むちゅき、バイバーイ」
「つか、呼び捨てかよ」
「きゃはは」
ミズキが睦月のことを呼び捨てにしていたのは、もちろん最初に呼ばれたときから分かっていたが、敢えて最後の最後に突っ込んでみた。
子どもが見つかった安堵感から気付いていなかったのか、母親も睦月のその突っ込みで、ミズキが睦月のことを呼び捨てにしていると気が付いて、「むつきさん、て呼ばないとっ」と慌てて諭した。
別に睦月はミズキに呼び捨てにされたからといって、それに対して怒りなどはなく、ただ言ってみただけなので、母親に慌てられて、逆に申し訳ないと思ってしまった。
「バイバイ」
最後にもう1回だけ、さっきミズキが喜んでくれたように、鼻先を近付けてそう言った。
母親は何度もサービスカウンターのお姉さんや睦月たちに頭を下げて、去って行った。
「お客様、大変有り難うございました」
ミズキと母親の姿が見えなくなったところで、お姉さんが睦月に声を掛けた。
「あ…、いえ…」
改まって頭を下げられて、睦月はどう返していいか分からず、戸惑った。
ミズキを介して彼女とも何度か言葉は交わしたが、人見知りを解消するほどのことでもなかったので、この状況となって、どう話していいか分からなくなったのだ。
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彼女は何度もそう言って頭を下げた。サービスカウンターのお姉さんたちは、『再会できてよかったです』と笑っている。
母親として、子どもから目を離し、迷子にさせてしまった申し訳なさや罪悪感から、何度謝罪や感謝しても足りない気持ちだろうが、何よりも2人が再会できたことを喜ぶべきなのだ。
「ホラ」
睦月は、母親の腕の中のミズキに、持っていたジュースを差し出した。
これは睦月がミズキから貰ったものではあるけれど、もともとはミズキが貰ったものだし、先ほどまでは睦月とのやり取りがおもしろくて、その中の1つの遊びとして睦月にこれをくれたのだろうが、ジュースがいらない子どもなど、いるはずがないのだ。
しかしミズキは手を伸ばさなかった。
「ダメ、むちゅきの」
どうしてもそのジュースは睦月のものだと譲らない。
いや、くれると言うなら貰うが、2歳児でさえ受け取らないジュースを、21歳の大学生が貰っていいものなのかと、ちょっと悩む。
「ミズキくん、こっちのジュースあげるね」
睦月の困っている様子を感じ取ったのか、サービスカウンターのお姉さんが、ミズキにもう1本のジュースを渡した。
母親は大層遠慮したが、お姉さんが何度も勧めたので、恐縮しながらも受け取った。
「むちゅき、バイバーイ」
「つか、呼び捨てかよ」
「きゃはは」
ミズキが睦月のことを呼び捨てにしていたのは、もちろん最初に呼ばれたときから分かっていたが、敢えて最後の最後に突っ込んでみた。
子どもが見つかった安堵感から気付いていなかったのか、母親も睦月のその突っ込みで、ミズキが睦月のことを呼び捨てにしていると気が付いて、「むつきさん、て呼ばないとっ」と慌てて諭した。
別に睦月はミズキに呼び捨てにされたからといって、それに対して怒りなどはなく、ただ言ってみただけなので、母親に慌てられて、逆に申し訳ないと思ってしまった。
「バイバイ」
最後にもう1回だけ、さっきミズキが喜んでくれたように、鼻先を近付けてそう言った。
母親は何度もサービスカウンターのお姉さんや睦月たちに頭を下げて、去って行った。
「お客様、大変有り難うございました」
ミズキと母親の姿が見えなくなったところで、お姉さんが睦月に声を掛けた。
「あ…、いえ…」
改まって頭を下げられて、睦月はどう返していいか分からず、戸惑った。
ミズキを介して彼女とも何度か言葉は交わしたが、人見知りを解消するほどのことでもなかったので、この状況となって、どう話していいか分からなくなったのだ。
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