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ろくな愛をしらない 01
2008.01.25 Fri
【久住慶太】
友人の松下歩(まつしたあゆむ)は、大学の同級生だが、1つ年上だ。
それは彼が1年浪人してから大学に入ったからで、聞きもしないのに歩は「俺、高3のとき、全然受験勉強しなかったんだよねー」と、あっさり打ち明けてきた。
それも入学式、たまたま隣になった俺に。
結局、そのまま仲良くなって、2年生になった今も一緒にいるんだけど。
そして俺は、歩の策略で学生会とやらに入らされて、結構忙しい大学生活を送ってる。
学生会ってのは、高校とかの生徒会みたいなもんで、各委員会やらサークル・同好会なんかを取り仕切ってる組織のこと。
2年の俺は結構中途半端な立場だけど、もともと人の上に立つような性質じゃないから、1年生に交じって雑用をこなすのが、主な仕事だ。
ちなみに、俺よりずっとチャラチャラとだらしない性格の歩が学生会に入ったのは、テンション高めの同級生、藤崎真琴に誘われたからで、真琴は、友だちの春原拓海さんがいるから入ったらしい(友だちって言っても、春原さんのほうが1つ先輩で、でも昔からの知り合いらしくて、全然、先輩後輩の雰囲気じゃない)。
それに、役員でもないのに、春原さんの友だちの相川智紀(あいかわともき)さんがしょっちゅう顔を出すせいで、意味もなく女の子の出入りが多い。
春原さんもそうだけど、とくに彼はキラキラオーラが強いから。
俺には無縁の世界だなぁーて思う。
だって、相川さんには彼女が3人いるだとか、いや4人だとか、金髪のハーフとホテルに入るトコを見かけただとか、とにかく女関係の噂の絶えない人だから。
そういう下世話な話題にはあんまり興味ないけど、自分とは世界が違うんだって、思う。
まぁ、この容姿だもんね。
最初から土俵が違うし。
でもそんな人を(しかも役員でもないのに)学生会室に入り浸らせて、関係ない女の子が好き勝手に出入りして、仮にも学生を代表する組織が、こんなことでいいのかな、とは思うけど。
……でも。
そんな無縁の世界にいるはずの人が、俺の隣で焼き肉食ってるんだよなぁ…。
俺の前には歩がいて、歩の横には春原さんがいて、その向かい、つまり俺の横には相川さんが座ってる。誠に変な組み合わせ。
歩とメシを食いに行く話をしていたところに春原さんが混じって、3人で店に行ってみれば、そこには腹を空かした相川さんがいたという。
「拓海、遅ぇんだよ。俺マジで腹減ってんだけど!」
挨拶もそこそこに、不満をぶつけてくる相川さんに驚いてるのはどうやら俺だけらしく、春原さんは「ゴメンゴメン」なんて言いながら席に着くし、元から物事を深く考えないたちの歩は、別に気にするふうもなく、春原さんの隣に座った。
そうなると必然的に俺は相川さんの横に。
今さら人見知りするほどの間柄ではないけれど、何となく緊張する。
今までそれほど話したことがあるわけでもないから、共通の話題もなくて、俺は歩と話すばかり。
春原さんと相川さんはもともと親友だから、話題が尽きなくて、結局4人でいるとは言っても、はっきりと2対2に分かれている状態。
まぁ、それはそれで別に良かったんだけれど。
なのに。
会計を済ませて店を出たところで、事態は一変した。
歩が、約束があるからって、先に帰ると言い出したのだ。俺もそれに乗っかって一緒に帰ろうとしたら、
「じゃあ、慶太、一緒にトモのウチ行こー」
春原さんにガシッと肩を組まれて。
トモって誰!? て思ったら、相川智紀の「トモ」らしい。いや、それは別にいんだけど。そうじゃなくて、何で俺を誘うの!?
ビックリして相川さんを見れば、「あぁ、いいよ」なんて簡単に了承するし、歩は助けるどころかあっさりと、「じゃあね~」なんて言いながら、帰っていった。
結局俺は断り切れなくて、春原さんと一緒に相川さんのお宅へ。
2人とも、別にただの大学生なのに、外見はまるでモデルのようだから、キラキラオーラ全開。
そんな2人に挟まれて…………何か居た堪れない。
俺もこんな顔だったら、なんて贅沢は言わないけど、でもやっぱり男としては憧れる。女の子がキャーキャー言うのも、無理ないよね。
「……なぁ、俺の顔、何か付いてる?」
「へ!?」
春原さんが携帯を持って部屋を出てから少しして、相川さんに急に声を掛けられて、俺はビクッと肩を跳ね上げた。
「な、にが…?」
「さっきから俺のこと、ずっと見てない?」
「そんなこと…」
……ないわけがない。
確かにずっと見てたけれど、まさか気付かれているとは思ってなかった。
でもずっと見てたなんて知られたら恥ずかしいし、とにかく俺は必死にごまかすための言葉を探した。
「違うの? 何か俺、すげぇ自意識過剰な奴みたいじゃん」
煙草を片手にそう苦笑する相川さんは、その仕草の1つ1つが様になってる。何て言うか、ドラマのワンシーンのような。
「お前さぁ、その顔、わざと?」
「は? 顔? 何がですか?」
俺、変な顔してたかな?
っていうか、アンタらの顔のせいで軽く落ち込んでるってのに、そんなこと言われたくないんですが。
ペタペタと両手で頬の辺りを触ってたら、相川さんがいきなり吹き出した。ベッドの上で腹抱えて……あの、タバコ危ないんですが。
ってか、この人こういうキャラなの?
「どうした? トモの声、外までだだ漏れだけど」
電話を終えた春原さんが、呆れ顔で戻ってきた。
とりあえず相川さんと2人きりって状況を抜け出せてホッとしたのも束の間、なぜか春原さんが帰り支度を始めて。
「拓海、どこ行くの?」
「帰るー。悠ちゃんからお呼び出し。バイト終わったって」
「あぁ、恋人さん?」
「そ」
ニヤッと口の端を上げて、春原さんが携帯をチラつかせる。あぁー…この人も日常の仕草がドラマだー…。
…って、そうじゃなくて!
「あ、じゃあ俺も…」
帰る、と続けるより先、
「じゃあ久住ー、2人で何するー?」
「はい!?」
思わず声に出してしまいましたよ。
だってそりゃそうでしょ? 何で相川さんが俺を引き止めるわけ?
「何だよ、嫌なのかよ」
イヤイヤイヤイヤ、あのですね、嫌だとか嫌じゃないとか、そういう問題じゃなくてですね。何でなのか、って話ですよ。
「トモー、慶太がめっちゃ驚いてる」
思考回路がパニック寸前の俺に、春原さんが助け船。でも顔が笑ってるんですが…。
「ま、とりあえず俺は帰るから」
「へ!?」
春原さん! 何で帰っちゃうんすか!?
「じゃーねー」
ヒラヒラと手を振って、春原さんが帰っていって……部屋には俺と相川さんの2人きり。
何なの!? この組み合わせ!
いや、親しくなるにはいいチャンスだけど、でも、でも!!
「はっはっ! お前、ホントおもしれぇヤツ! 俺と2人きりなの、そんなに嫌?」
「嫌とか、別にそういうわけじゃないですけど……相川さんこそ、俺なんかと一緒でおもしろいっすか?」
慣れた仕草でタバコを灰皿に押し付けて、相川さんが近付いてくる。隣に腰を下ろされて、距離が……近い。
相川さんて、何となくクールそうなイメージがあるから、こんな破顔したの、間近で見るなんて……そんなことを思ってたら、相川さんの眉間にしわが寄った。
「俺さぁ、さっきも聞いたよな?」
「え?」
溜め息混じりにそう問われても、よく分からない。
俺、相川さんの機嫌を損ねるようなこと、したっけ? だってほんの数秒前まで笑ってたんだよ、この人。
「その顔、わざとやってんのかって」
「か、顔って……何? そんな変な顔してます?」
「そうじゃなくて…」
もう1度、今度はもっと深い溜め息。
それからグイと、顔が急接近してきて。
「あ…相川さん??」
顔が…………近いっ!!
いくら男前の顔だって言ったって、ここまで近づけられれば、戸惑うし、逃げたくもなる。
自然と俺の背中は反って、相川さんの顔との距離を離そうとするけれど、ジワジワと近づいてくるその顔に、距離は遠くなるどころか、俺の背中のほうが先に限界を迎えた。
「ッ…、」
もうこれ以上反らせないってとこで、相川さんの両手が、俺の頭をガシッと掴んだ。
「な…な、に…?」
唇に感じる、相川さんの吐息。
じっと見据えられて。
「そんな顔でジッと見られてると、誘われちゃうんだけど」
「さそ…!? なっ…」
そんな顔ってどんな顔!? じゃなくて、誘われるって! 誘ってないし!
てか、何で!? あんた男でしょ!?
「ふはっ、分かりやす! 思ってること、みんな顔に出ちゃってる。かわいー」
イヤイヤ、だって!
俺だってポーカーフェイスくらい出来ますけど、こんな状況でそんなこと出来るわけないでしょう!?
それより、かわいいって!?
「あの、離し…」
「ね、キスしていい?」
「はい!?」
ビックリしすぎて、声が裏返った。
えっと、俺の聞き間違いじゃないですよね!? いや、むしろ聞き間違いであってくれたほうがいい!
「ダメ?」
「ダメて、あの、ちょっ……ん、」
俺がイイもダメも言う前に、相川さんは俺との距離をゼロにした。
「―――――…………」
唇が触れ合った瞬間、その近すぎる距離、俺は思わず目を閉じた。
いくら相川さんのほうが体格がよくて力があるって言ったって、俺だって男だし、本気で抵抗すれば逃れられないこともないはずなのに。
俺は相川さんからのキスを受け入れていて。
「……ッ…」
舌がっ…!
唇を割って入り込んで来た相川さんの舌に驚いて、俺は押し返そうと相川さんの胸に突っ張っていた手で、そのシャツを掴んだ。
逃げたいけれど、相川さんの手が許してくれない。
徐々に俺のほうに圧し掛かって来て、さっきまでにもう反らし切れないくらい背中を反らしていた俺は、そのまま床へと倒れ込んでしまった。
幸いにも柔らかなラグマットの上、頭はクッションに助けられ、体は痛くないけれど。
「あいか……んっ…」
首を捩って何とかキスから逃れて、喋ろうとしても、けれどすぐにまた塞がれる。
もう、冗談なんかで済まされるようなキスじゃなくて。
何で? 何で? 何で?
「ッ!?」
頭を押さえていた手が離れて、逃げようとしたけれど、それより先、脇腹を撫で上げる感触に体が震えた。
「なっ…」
驚いて目を開ければ、まだ吐息を感じるほどの距離に相川さんの顔があって。その口元がニヤリと歪んで。
「ちょっ、やっ…」
シャツの裾から相川さんの手が入ってくる。
その体を押しのけようとするのに、相手は利き手じゃない左手で俺の肩を押さえているだけなのに、少しも動かせなくて。
「相川さん!」
何なんだ? 酔ってるのか、この人は。俺は男だぞ。いや、酒なんか1滴も飲んでないはず。なのに何だって……
「ヤダッ…」
目の前がぼやける。
「…………久住……」
痛いほど力強く押さえ付けられていた肩への力がふと抜けて、その手が俺の眼尻に触れる。
……俺、泣いてる…。
こめかみのほうへと伝う涙を拭われて、ようやく気が付いた。
「あいか…」
肩で息をしながら呆然としていると、相川さんは俺のことバカにしたように笑って、乱れた前髪を掻き上げた。
相川さんの突然の行動に恐怖と驚きを覚えながらも、頭の片隅にどこか冷静な自分がいて、あぁ、どこまでも様になる人だ……なんて、今さらながらに思ってしまう俺はバカか?
相川さんが親指が、俺の濡れた唇を拭う。
熱い指の感触。
獣のような目だ。
「何で…」
「冗談だよ、バーカ」
友人の松下歩(まつしたあゆむ)は、大学の同級生だが、1つ年上だ。
それは彼が1年浪人してから大学に入ったからで、聞きもしないのに歩は「俺、高3のとき、全然受験勉強しなかったんだよねー」と、あっさり打ち明けてきた。
それも入学式、たまたま隣になった俺に。
結局、そのまま仲良くなって、2年生になった今も一緒にいるんだけど。
そして俺は、歩の策略で学生会とやらに入らされて、結構忙しい大学生活を送ってる。
学生会ってのは、高校とかの生徒会みたいなもんで、各委員会やらサークル・同好会なんかを取り仕切ってる組織のこと。
2年の俺は結構中途半端な立場だけど、もともと人の上に立つような性質じゃないから、1年生に交じって雑用をこなすのが、主な仕事だ。
ちなみに、俺よりずっとチャラチャラとだらしない性格の歩が学生会に入ったのは、テンション高めの同級生、藤崎真琴に誘われたからで、真琴は、友だちの春原拓海さんがいるから入ったらしい(友だちって言っても、春原さんのほうが1つ先輩で、でも昔からの知り合いらしくて、全然、先輩後輩の雰囲気じゃない)。
それに、役員でもないのに、春原さんの友だちの相川智紀(あいかわともき)さんがしょっちゅう顔を出すせいで、意味もなく女の子の出入りが多い。
春原さんもそうだけど、とくに彼はキラキラオーラが強いから。
俺には無縁の世界だなぁーて思う。
だって、相川さんには彼女が3人いるだとか、いや4人だとか、金髪のハーフとホテルに入るトコを見かけただとか、とにかく女関係の噂の絶えない人だから。
そういう下世話な話題にはあんまり興味ないけど、自分とは世界が違うんだって、思う。
まぁ、この容姿だもんね。
最初から土俵が違うし。
でもそんな人を(しかも役員でもないのに)学生会室に入り浸らせて、関係ない女の子が好き勝手に出入りして、仮にも学生を代表する組織が、こんなことでいいのかな、とは思うけど。
……でも。
そんな無縁の世界にいるはずの人が、俺の隣で焼き肉食ってるんだよなぁ…。
俺の前には歩がいて、歩の横には春原さんがいて、その向かい、つまり俺の横には相川さんが座ってる。誠に変な組み合わせ。
歩とメシを食いに行く話をしていたところに春原さんが混じって、3人で店に行ってみれば、そこには腹を空かした相川さんがいたという。
「拓海、遅ぇんだよ。俺マジで腹減ってんだけど!」
挨拶もそこそこに、不満をぶつけてくる相川さんに驚いてるのはどうやら俺だけらしく、春原さんは「ゴメンゴメン」なんて言いながら席に着くし、元から物事を深く考えないたちの歩は、別に気にするふうもなく、春原さんの隣に座った。
そうなると必然的に俺は相川さんの横に。
今さら人見知りするほどの間柄ではないけれど、何となく緊張する。
今までそれほど話したことがあるわけでもないから、共通の話題もなくて、俺は歩と話すばかり。
春原さんと相川さんはもともと親友だから、話題が尽きなくて、結局4人でいるとは言っても、はっきりと2対2に分かれている状態。
まぁ、それはそれで別に良かったんだけれど。
なのに。
会計を済ませて店を出たところで、事態は一変した。
歩が、約束があるからって、先に帰ると言い出したのだ。俺もそれに乗っかって一緒に帰ろうとしたら、
「じゃあ、慶太、一緒にトモのウチ行こー」
春原さんにガシッと肩を組まれて。
トモって誰!? て思ったら、相川智紀の「トモ」らしい。いや、それは別にいんだけど。そうじゃなくて、何で俺を誘うの!?
ビックリして相川さんを見れば、「あぁ、いいよ」なんて簡単に了承するし、歩は助けるどころかあっさりと、「じゃあね~」なんて言いながら、帰っていった。
結局俺は断り切れなくて、春原さんと一緒に相川さんのお宅へ。
2人とも、別にただの大学生なのに、外見はまるでモデルのようだから、キラキラオーラ全開。
そんな2人に挟まれて…………何か居た堪れない。
俺もこんな顔だったら、なんて贅沢は言わないけど、でもやっぱり男としては憧れる。女の子がキャーキャー言うのも、無理ないよね。
「……なぁ、俺の顔、何か付いてる?」
「へ!?」
春原さんが携帯を持って部屋を出てから少しして、相川さんに急に声を掛けられて、俺はビクッと肩を跳ね上げた。
「な、にが…?」
「さっきから俺のこと、ずっと見てない?」
「そんなこと…」
……ないわけがない。
確かにずっと見てたけれど、まさか気付かれているとは思ってなかった。
でもずっと見てたなんて知られたら恥ずかしいし、とにかく俺は必死にごまかすための言葉を探した。
「違うの? 何か俺、すげぇ自意識過剰な奴みたいじゃん」
煙草を片手にそう苦笑する相川さんは、その仕草の1つ1つが様になってる。何て言うか、ドラマのワンシーンのような。
「お前さぁ、その顔、わざと?」
「は? 顔? 何がですか?」
俺、変な顔してたかな?
っていうか、アンタらの顔のせいで軽く落ち込んでるってのに、そんなこと言われたくないんですが。
ペタペタと両手で頬の辺りを触ってたら、相川さんがいきなり吹き出した。ベッドの上で腹抱えて……あの、タバコ危ないんですが。
ってか、この人こういうキャラなの?
「どうした? トモの声、外までだだ漏れだけど」
電話を終えた春原さんが、呆れ顔で戻ってきた。
とりあえず相川さんと2人きりって状況を抜け出せてホッとしたのも束の間、なぜか春原さんが帰り支度を始めて。
「拓海、どこ行くの?」
「帰るー。悠ちゃんからお呼び出し。バイト終わったって」
「あぁ、恋人さん?」
「そ」
ニヤッと口の端を上げて、春原さんが携帯をチラつかせる。あぁー…この人も日常の仕草がドラマだー…。
…って、そうじゃなくて!
「あ、じゃあ俺も…」
帰る、と続けるより先、
「じゃあ久住ー、2人で何するー?」
「はい!?」
思わず声に出してしまいましたよ。
だってそりゃそうでしょ? 何で相川さんが俺を引き止めるわけ?
「何だよ、嫌なのかよ」
イヤイヤイヤイヤ、あのですね、嫌だとか嫌じゃないとか、そういう問題じゃなくてですね。何でなのか、って話ですよ。
「トモー、慶太がめっちゃ驚いてる」
思考回路がパニック寸前の俺に、春原さんが助け船。でも顔が笑ってるんですが…。
「ま、とりあえず俺は帰るから」
「へ!?」
春原さん! 何で帰っちゃうんすか!?
「じゃーねー」
ヒラヒラと手を振って、春原さんが帰っていって……部屋には俺と相川さんの2人きり。
何なの!? この組み合わせ!
いや、親しくなるにはいいチャンスだけど、でも、でも!!
「はっはっ! お前、ホントおもしれぇヤツ! 俺と2人きりなの、そんなに嫌?」
「嫌とか、別にそういうわけじゃないですけど……相川さんこそ、俺なんかと一緒でおもしろいっすか?」
慣れた仕草でタバコを灰皿に押し付けて、相川さんが近付いてくる。隣に腰を下ろされて、距離が……近い。
相川さんて、何となくクールそうなイメージがあるから、こんな破顔したの、間近で見るなんて……そんなことを思ってたら、相川さんの眉間にしわが寄った。
「俺さぁ、さっきも聞いたよな?」
「え?」
溜め息混じりにそう問われても、よく分からない。
俺、相川さんの機嫌を損ねるようなこと、したっけ? だってほんの数秒前まで笑ってたんだよ、この人。
「その顔、わざとやってんのかって」
「か、顔って……何? そんな変な顔してます?」
「そうじゃなくて…」
もう1度、今度はもっと深い溜め息。
それからグイと、顔が急接近してきて。
「あ…相川さん??」
顔が…………近いっ!!
いくら男前の顔だって言ったって、ここまで近づけられれば、戸惑うし、逃げたくもなる。
自然と俺の背中は反って、相川さんの顔との距離を離そうとするけれど、ジワジワと近づいてくるその顔に、距離は遠くなるどころか、俺の背中のほうが先に限界を迎えた。
「ッ…、」
もうこれ以上反らせないってとこで、相川さんの両手が、俺の頭をガシッと掴んだ。
「な…な、に…?」
唇に感じる、相川さんの吐息。
じっと見据えられて。
「そんな顔でジッと見られてると、誘われちゃうんだけど」
「さそ…!? なっ…」
そんな顔ってどんな顔!? じゃなくて、誘われるって! 誘ってないし!
てか、何で!? あんた男でしょ!?
「ふはっ、分かりやす! 思ってること、みんな顔に出ちゃってる。かわいー」
イヤイヤ、だって!
俺だってポーカーフェイスくらい出来ますけど、こんな状況でそんなこと出来るわけないでしょう!?
それより、かわいいって!?
「あの、離し…」
「ね、キスしていい?」
「はい!?」
ビックリしすぎて、声が裏返った。
えっと、俺の聞き間違いじゃないですよね!? いや、むしろ聞き間違いであってくれたほうがいい!
「ダメ?」
「ダメて、あの、ちょっ……ん、」
俺がイイもダメも言う前に、相川さんは俺との距離をゼロにした。
「―――――…………」
唇が触れ合った瞬間、その近すぎる距離、俺は思わず目を閉じた。
いくら相川さんのほうが体格がよくて力があるって言ったって、俺だって男だし、本気で抵抗すれば逃れられないこともないはずなのに。
俺は相川さんからのキスを受け入れていて。
「……ッ…」
舌がっ…!
唇を割って入り込んで来た相川さんの舌に驚いて、俺は押し返そうと相川さんの胸に突っ張っていた手で、そのシャツを掴んだ。
逃げたいけれど、相川さんの手が許してくれない。
徐々に俺のほうに圧し掛かって来て、さっきまでにもう反らし切れないくらい背中を反らしていた俺は、そのまま床へと倒れ込んでしまった。
幸いにも柔らかなラグマットの上、頭はクッションに助けられ、体は痛くないけれど。
「あいか……んっ…」
首を捩って何とかキスから逃れて、喋ろうとしても、けれどすぐにまた塞がれる。
もう、冗談なんかで済まされるようなキスじゃなくて。
何で? 何で? 何で?
「ッ!?」
頭を押さえていた手が離れて、逃げようとしたけれど、それより先、脇腹を撫で上げる感触に体が震えた。
「なっ…」
驚いて目を開ければ、まだ吐息を感じるほどの距離に相川さんの顔があって。その口元がニヤリと歪んで。
「ちょっ、やっ…」
シャツの裾から相川さんの手が入ってくる。
その体を押しのけようとするのに、相手は利き手じゃない左手で俺の肩を押さえているだけなのに、少しも動かせなくて。
「相川さん!」
何なんだ? 酔ってるのか、この人は。俺は男だぞ。いや、酒なんか1滴も飲んでないはず。なのに何だって……
「ヤダッ…」
目の前がぼやける。
「…………久住……」
痛いほど力強く押さえ付けられていた肩への力がふと抜けて、その手が俺の眼尻に触れる。
……俺、泣いてる…。
こめかみのほうへと伝う涙を拭われて、ようやく気が付いた。
「あいか…」
肩で息をしながら呆然としていると、相川さんは俺のことバカにしたように笑って、乱れた前髪を掻き上げた。
相川さんの突然の行動に恐怖と驚きを覚えながらも、頭の片隅にどこか冷静な自分がいて、あぁ、どこまでも様になる人だ……なんて、今さらながらに思ってしまう俺はバカか?
相川さんが親指が、俺の濡れた唇を拭う。
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獣のような目だ。
「何で…」
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COMMENT-FORM
イチゴ ⇒ 男前率高い!
学生会!いいなあ!一度遊びに行きたい!
相川さん、がんばれー!!
慶太くんの常識人キャラが新鮮です。
うちにはいないタイプなので!笑!
続き、楽しみにしてますvvv
相川さん、がんばれー!!
慶太くんの常識人キャラが新鮮です。
うちにはいないタイプなので!笑!
続き、楽しみにしてますvvv
- |2008.01.26
- |Sat
- |01:12
- |URL
- |EDIT|
さいつき ⇒ はじめまして。
お初にコメントさせていただきます。
彩月です。
いつもニヤニヤしながら拝見してます。
慶太くん可愛いですね!すっごい初々しいwww
相川さん・・・ 続きが気になるぅ~vv
彩月です。
いつもニヤニヤしながら拝見してます。
慶太くん可愛いですね!すっごい初々しいwww
相川さん・・・ 続きが気になるぅ~vv
如月久美子 ⇒ >イチゴさん
悠ちゃんの前ではデレデレの拓海くんも、大学では結構、真面目ポジションの常識人なんです。
そして超美形!!
悠ちゃんの愛の力、恐るべし! です。
そして新登場の慶太くん。
若いわりにまったく浮ついていないという……マコちゃんと同い年だなんて、私が一番信じられない…。
こちらもかわいがってやってください!
そして超美形!!
悠ちゃんの愛の力、恐るべし! です。
そして新登場の慶太くん。
若いわりにまったく浮ついていないという……マコちゃんと同い年だなんて、私が一番信じられない…。
こちらもかわいがってやってください!
如月久美子 ⇒ >彩月さん
初めまして、こんにちは。
ご訪問、ありがとうございます。
楽しんでもらえてるみたいで、ありがとうございますっ!!
慶太くん、書いてる私もびっくりの、初々しさ。
なのに、相川さんみたいなのに、捕まっちゃって…(^_^;)
また遊びに来てくださいね♪
ご訪問、ありがとうございます。
楽しんでもらえてるみたいで、ありがとうございますっ!!
慶太くん、書いてる私もびっくりの、初々しさ。
なのに、相川さんみたいなのに、捕まっちゃって…(^_^;)
また遊びに来てくださいね♪