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恋の女神は微笑まない (260)
2015.02.01 Sun
「…あ、お風呂鳴った」
涙が零れそうになって、でも南條の前でなんて絶対に泣きたくなくて、どうしようかと思ったら、ちょうどよくお風呂が沸いたメロディが聞こえて来た。
南條と違って、すごくタイミングがいい。
「風呂入って来るね!」
「え? あ、うん」
千尋は南條のほうを向かないようにしながら立ち上がる。
「南條、あの、大丈夫だから、俺が上がるの待たなくていいからね? 仕事行って?」
そういえば先ほど南條は、千尋が風呂から上がるのを待っているようなことを言っていたけれど、こんな話の後で、風呂上がりにまた南條と会うのは気恥ずかしくて、千尋は南條に背を向けたままそう言う。
まだ仕事中でもあるんだから、それを理由にすれば、帰ってもらいやすい。
「まぁ…、じゃあ行くけど…………風呂入ったらすぐ寝ろよ? 頭よく乾かして…」
「分かってるよ! オカンか!」
いや、たとえ母親でも、二十歳を過ぎたいい大人の男に向かって、こんなことは言わないだろう。
こんなことをいちいち言ってくれるのは、本当に南條くらいだ。
「あ、南條」
「何だ?」
「ありがとう、て言っといて、大和くんに」
「え?」
「だから、ありがとう、て。今日来てくれて、ありがとう、て言っといて」
南條は一体どういう意味で捉えたのか、千尋が振り返ると、南條は驚いたような顔をしていた。
きっと一瞬のうちにいろいろ考えたのだろう、千尋はそれを感じ取ったけれど、飽くまでも、大和が今日来てくれたことに対する感謝の意だということを強調した。
もし伝えられた大和が、『今までありがとう』という意味で受け取ってもいい、南條にも、本心と違って口ではそう言っているのだと思われてもいい、でも千尋は、大和が今日来てくれたことに対してありがとうと言ったのだ、ということにしておく。
「いいけど…………俺が言うのでいいのか? 自分で言わなくて」
「いいよ。だって別れたのに連絡するの、おかしいじゃん。今朝は間違い電話しちゃっただけで、ホントは店長に連絡するつもりだったんだし。大和くんからそう聞いてない?」
「聞いてるけど…。じゃあ、他に言うことは?」
「え?」
「礼を言うだけでいいのか? 他に伝えたいこととか…」
「ないよ。ありがとうだけ言っといて」
「………………」
南條はまだ何か言いたそうだったけれど、ただ、『分かった』とだけ言って、立ち上がった。
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涙が零れそうになって、でも南條の前でなんて絶対に泣きたくなくて、どうしようかと思ったら、ちょうどよくお風呂が沸いたメロディが聞こえて来た。
南條と違って、すごくタイミングがいい。
「風呂入って来るね!」
「え? あ、うん」
千尋は南條のほうを向かないようにしながら立ち上がる。
「南條、あの、大丈夫だから、俺が上がるの待たなくていいからね? 仕事行って?」
そういえば先ほど南條は、千尋が風呂から上がるのを待っているようなことを言っていたけれど、こんな話の後で、風呂上がりにまた南條と会うのは気恥ずかしくて、千尋は南條に背を向けたままそう言う。
まだ仕事中でもあるんだから、それを理由にすれば、帰ってもらいやすい。
「まぁ…、じゃあ行くけど…………風呂入ったらすぐ寝ろよ? 頭よく乾かして…」
「分かってるよ! オカンか!」
いや、たとえ母親でも、二十歳を過ぎたいい大人の男に向かって、こんなことは言わないだろう。
こんなことをいちいち言ってくれるのは、本当に南條くらいだ。
「あ、南條」
「何だ?」
「ありがとう、て言っといて、大和くんに」
「え?」
「だから、ありがとう、て。今日来てくれて、ありがとう、て言っといて」
南條は一体どういう意味で捉えたのか、千尋が振り返ると、南條は驚いたような顔をしていた。
きっと一瞬のうちにいろいろ考えたのだろう、千尋はそれを感じ取ったけれど、飽くまでも、大和が今日来てくれたことに対する感謝の意だということを強調した。
もし伝えられた大和が、『今までありがとう』という意味で受け取ってもいい、南條にも、本心と違って口ではそう言っているのだと思われてもいい、でも千尋は、大和が今日来てくれたことに対してありがとうと言ったのだ、ということにしておく。
「いいけど…………俺が言うのでいいのか? 自分で言わなくて」
「いいよ。だって別れたのに連絡するの、おかしいじゃん。今朝は間違い電話しちゃっただけで、ホントは店長に連絡するつもりだったんだし。大和くんからそう聞いてない?」
「聞いてるけど…。じゃあ、他に言うことは?」
「え?」
「礼を言うだけでいいのか? 他に伝えたいこととか…」
「ないよ。ありがとうだけ言っといて」
「………………」
南條はまだ何か言いたそうだったけれど、ただ、『分かった』とだけ言って、立ち上がった。
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