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恋の女神は微笑まない (172)
2014.11.03 Mon
『えっと…。ここんところマスコミとか週刊誌とか…、まぁそういうこといろいろあって、そのたびにみんなに悲しい思いをさせて…………ゴメン。まずは謝らせてください』
そう言って大和が深く頭を下げたので、会場が一瞬ざわめき立ったが、大和の話がまだ終わりではないと分かると、すぐに静かになった。
事務所的にも、年齢的にも、恋愛の話題がそこまでご法度とというわけではないが、本人が、それもこんな場面で、その話題を出してくるなんて、異例中の異例だ。
琉ですら驚きを隠せない表情をしているから、恐らくは誰も知らないことだったのだろう。きっと裏では南條が泡を吹いているに違いない。
それにしても、大和は『ここんところ』と言って話を始めたが、千尋が知っているのは、お試しのお付き合いをする前に週刊誌に載った某女優と、千尋自身のことだけだ。
もしかしたらそれからも、何かしらの記事が載ったのだろうか。
わざと避けているのではなく、もともと千尋はそういう方面に興味がないから、意識していなければ、日常の中でスルーされてしまう。そんな些細な存在ではなかったはず、なのにな。
『でも…、アイドルつっても、俺も人間だから、人並みに恋はするし、相手も同じように俺のことを好きでいてくれたら、付き合うこともある…。…だからって、週刊誌とかに載るのが、いつもホントのこととは限んないんだけど…』
そういえば開演前、今日はDVD撮りだとアナウンスが流れていたっけ。
それなのに、こんなこと言っちゃって、DVDはどうなるんだろう。発売されないなんてことはないだろうけど、この部分はカットされてしまうんだろうか。
内容はともかくとしても、…大和の大切な言葉なのに。
『こういう仕事してるから、週刊誌とかネットとか……いろいろ書かれちゃうのは仕方ないて思ってるんだけど…、………………でも、そのせいで俺、大切な人をすごく傷付けちゃって…』
大和の口から『大切な人』という言葉が出たせいか、会場のあちこちから悲鳴のような声がいくつも上がったけれど、大和の次の言葉を待って、それもすぐに収まる。
隣の遥希が千尋のほうを見たのが分かったが、千尋は前を……大和を見たまま動かなかった。
『ゴメンね、いきなりこんな話して。でも…、悔しかったんだ、俺。何にも出来なかった自分が情けなくて…………悔しかった。…今さら謝っても遅いんだけど…、まだちゃんと謝れてもいないから、出来ることなら謝りたいな、て思ってる…』
大和は少し目を伏せたが、すぐに前を向いて、口を開いた。
『大切なものは失ってから気付く…て、俺らの歌にもあるけど、俺、初めて本気でそれを実感して…。…………だからみんなも、そんなことがないように、悔いのないように毎日を過ごしてね?』
そう言って話を締め括ると、大和はもう1度深く頭を下げてから、琉を見て頷き、そしてバンドのメンバーのほうにも、演奏を始めてくれるよう合図を送った。
ラストの曲が始まり、再び会場は湧き上がる。
締めの曲にふさわしく、しっとりとしつつも、壮大な演奏で始まるバラード。
話している間、大和は真っ直ぐに前を見ていて、ただの1度も千尋のほうを見なかったけれど。
千尋は大和から目を離さず、タイトルも知らないその歌を聞いていた。
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そう言って大和が深く頭を下げたので、会場が一瞬ざわめき立ったが、大和の話がまだ終わりではないと分かると、すぐに静かになった。
事務所的にも、年齢的にも、恋愛の話題がそこまでご法度とというわけではないが、本人が、それもこんな場面で、その話題を出してくるなんて、異例中の異例だ。
琉ですら驚きを隠せない表情をしているから、恐らくは誰も知らないことだったのだろう。きっと裏では南條が泡を吹いているに違いない。
それにしても、大和は『ここんところ』と言って話を始めたが、千尋が知っているのは、お試しのお付き合いをする前に週刊誌に載った某女優と、千尋自身のことだけだ。
もしかしたらそれからも、何かしらの記事が載ったのだろうか。
わざと避けているのではなく、もともと千尋はそういう方面に興味がないから、意識していなければ、日常の中でスルーされてしまう。そんな些細な存在ではなかったはず、なのにな。
『でも…、アイドルつっても、俺も人間だから、人並みに恋はするし、相手も同じように俺のことを好きでいてくれたら、付き合うこともある…。…だからって、週刊誌とかに載るのが、いつもホントのこととは限んないんだけど…』
そういえば開演前、今日はDVD撮りだとアナウンスが流れていたっけ。
それなのに、こんなこと言っちゃって、DVDはどうなるんだろう。発売されないなんてことはないだろうけど、この部分はカットされてしまうんだろうか。
内容はともかくとしても、…大和の大切な言葉なのに。
『こういう仕事してるから、週刊誌とかネットとか……いろいろ書かれちゃうのは仕方ないて思ってるんだけど…、………………でも、そのせいで俺、大切な人をすごく傷付けちゃって…』
大和の口から『大切な人』という言葉が出たせいか、会場のあちこちから悲鳴のような声がいくつも上がったけれど、大和の次の言葉を待って、それもすぐに収まる。
隣の遥希が千尋のほうを見たのが分かったが、千尋は前を……大和を見たまま動かなかった。
『ゴメンね、いきなりこんな話して。でも…、悔しかったんだ、俺。何にも出来なかった自分が情けなくて…………悔しかった。…今さら謝っても遅いんだけど…、まだちゃんと謝れてもいないから、出来ることなら謝りたいな、て思ってる…』
大和は少し目を伏せたが、すぐに前を向いて、口を開いた。
『大切なものは失ってから気付く…て、俺らの歌にもあるけど、俺、初めて本気でそれを実感して…。…………だからみんなも、そんなことがないように、悔いのないように毎日を過ごしてね?』
そう言って話を締め括ると、大和はもう1度深く頭を下げてから、琉を見て頷き、そしてバンドのメンバーのほうにも、演奏を始めてくれるよう合図を送った。
ラストの曲が始まり、再び会場は湧き上がる。
締めの曲にふさわしく、しっとりとしつつも、壮大な演奏で始まるバラード。
話している間、大和は真っ直ぐに前を見ていて、ただの1度も千尋のほうを見なかったけれど。
千尋は大和から目を離さず、タイトルも知らないその歌を聞いていた。
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