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恋の女神は微笑まない (118)
2014.08.30 Sat
『いや…、着いたから…』
「うん」
『…鍵開けて?』
「あぁ、そういうこと?」
遥希の部屋にも一応チャイムがあるんだから、それを押せば気付いただろうに、わざわざ電話なんて…と思いつつ、千尋は玄関に向かう。
「ハルちゃん、大和くん来たって。ドア開けるよー?」
「ううぅ…、待ってよぉ…」
「あ、ゴメン、もう開けちゃった」
「ちょっ」
のそのそと起き上がって、また一から缶を拾っていた遥希は、まだ部屋が片付いていないから、当然待ってくれと伝えたが、それより一瞬早く、千尋はドアの鍵を開けてしまった。
だったら、一体何のために聞いたんだ。
「何だ、お前もいたんだ」
「は?」
電話をして来るなら、一刻も早く遥希の声を聞きたがっていたであろう琉だと思っていたのに、大和が掛けてきたので、まさか本当に琉がいないのでは…? と一瞬頭をよぎったのだが、ドアを開けたら、目の前に立っていたのは琉だった。
千尋のセリフの前段には、そうした気持ちがあったのだが、そんなこと琉に伝わるわけもないから、千尋の言葉に、グッと眉を寄せた。
「いや、いてくれていいんだけど。今さらいなかったら、超面倒くさい」
「あぁっ?」
もしかしたら、いちいち琉の気に障るような言い方を、わざわざ選んで喋っているのだろうか…と、琉の後ろにいる大和は思う。
千尋は、自分の頭の中で話をどんどん進めて、勝手に完結していることがあって、しかもそれが、一緒にいる相手に伝わっていると思っているところがあるから、もしかしたら、今もそうなのかもしれない。
「つか、そこにピンポンあるのに、何で電話したの? 壊れてる?」
千尋は琉を無視して、大和に話し掛けた。
さっきからそれが、ずっと気になっていたのだ。
千尋が遥希の家に来るとき、大体遥希と一緒に来るから、チャイムを押すということが殆どないため、気付いていなかっただけで、音が鳴らなくなっていただろうか。
「いや…、もう時間も時間だから、チャイム鳴らしたら近所迷惑かな、て思って」
そう答える大和は、普通の声の大きさで喋る千尋と違って、うんと声を潜めている。
なるほど、そういうことか。世の中の人間は、そうやって周りに気を遣いながら生きているのだ、と感心しながら千尋が部屋の中を振り返れば、遥希がまだメソメソと缶を拾い集めていた。
「そんな気ぃ遣わなくても、この部屋の住人が一番騒がしくしてるから、平気なのに」
「は?」
声の大きさはともかく、この時間に、転んで空き缶をぶちまけた音の大きさに比べたら、チャイムの1回くらい、どうということもないだろう。
隣室が優しいおじいさんで本当によかったと、千尋は他人事ながら、そう思う。キレやすい若者とかだったら、遥希はいくつ命があっても足りないのではなかろうか。
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「うん」
『…鍵開けて?』
「あぁ、そういうこと?」
遥希の部屋にも一応チャイムがあるんだから、それを押せば気付いただろうに、わざわざ電話なんて…と思いつつ、千尋は玄関に向かう。
「ハルちゃん、大和くん来たって。ドア開けるよー?」
「ううぅ…、待ってよぉ…」
「あ、ゴメン、もう開けちゃった」
「ちょっ」
のそのそと起き上がって、また一から缶を拾っていた遥希は、まだ部屋が片付いていないから、当然待ってくれと伝えたが、それより一瞬早く、千尋はドアの鍵を開けてしまった。
だったら、一体何のために聞いたんだ。
「何だ、お前もいたんだ」
「は?」
電話をして来るなら、一刻も早く遥希の声を聞きたがっていたであろう琉だと思っていたのに、大和が掛けてきたので、まさか本当に琉がいないのでは…? と一瞬頭をよぎったのだが、ドアを開けたら、目の前に立っていたのは琉だった。
千尋のセリフの前段には、そうした気持ちがあったのだが、そんなこと琉に伝わるわけもないから、千尋の言葉に、グッと眉を寄せた。
「いや、いてくれていいんだけど。今さらいなかったら、超面倒くさい」
「あぁっ?」
もしかしたら、いちいち琉の気に障るような言い方を、わざわざ選んで喋っているのだろうか…と、琉の後ろにいる大和は思う。
千尋は、自分の頭の中で話をどんどん進めて、勝手に完結していることがあって、しかもそれが、一緒にいる相手に伝わっていると思っているところがあるから、もしかしたら、今もそうなのかもしれない。
「つか、そこにピンポンあるのに、何で電話したの? 壊れてる?」
千尋は琉を無視して、大和に話し掛けた。
さっきからそれが、ずっと気になっていたのだ。
千尋が遥希の家に来るとき、大体遥希と一緒に来るから、チャイムを押すということが殆どないため、気付いていなかっただけで、音が鳴らなくなっていただろうか。
「いや…、もう時間も時間だから、チャイム鳴らしたら近所迷惑かな、て思って」
そう答える大和は、普通の声の大きさで喋る千尋と違って、うんと声を潜めている。
なるほど、そういうことか。世の中の人間は、そうやって周りに気を遣いながら生きているのだ、と感心しながら千尋が部屋の中を振り返れば、遥希がまだメソメソと缶を拾い集めていた。
「そんな気ぃ遣わなくても、この部屋の住人が一番騒がしくしてるから、平気なのに」
「は?」
声の大きさはともかく、この時間に、転んで空き缶をぶちまけた音の大きさに比べたら、チャイムの1回くらい、どうということもないだろう。
隣室が優しいおじいさんで本当によかったと、千尋は他人事ながら、そう思う。キレやすい若者とかだったら、遥希はいくつ命があっても足りないのではなかろうか。
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