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7. 無邪気にはにかむ確信犯
2008.08.25 Mon
水瀬が風呂に入っている間に、グチャグチャになったシーツやら、脱ぎ散らかしたままになっていた水瀬の制服らを片付けていたら、石田の携帯電話が音を立てた。
「あーはいはい」
ベッドに丸めたシーツを放り投げて、石田は急いでカバンから携帯電話を取り出した。
「………………。はぁ?」
背面ディスプレイに表示された、発信者の名前―――――水瀬環。
本当に、「はぁ?」だ。
(アイツ、風呂入ってんじゃねぇの?)
訝しく思いながら、石田は水瀬かららしい着信を受ける。
『あ、石田ー』
「……何、お前。風呂入ってんじゃねぇの?」
出てみれば、やはりその電話は水瀬からで。
何が何だか、訳が分からない。
『あのさー、パンツ持って来るの忘れたから、持って来て?』
「はぁ?」
『だからー、パンツ!』
「ちょっと待て、お前、今どっから電話…」
電話越し。
妙に響いている水瀬の声。
「……お前、風呂から掛けてんの?」
『そう』
「待て待て待て。何で風呂にケータイ持ってってんだよ!」
『暇だから』
「…………」
よく分からない理由を、さも当然のように言ってのけて、水瀬は『早く、パンツー』とデリカシーの欠けらもないことを口にする。
「あーもう! 今持ってくから!」
何で携帯電話は持っていって、肝心の下着は忘れていくんだ!?
それでも慣れた手つきでタンスを漁ると、石田は言われたとおりに下着と着替えを持ってバスルームに向かった。
「おー、ご苦労ご苦労」
脱衣所とバスルームを仕切るドアを少し開けて、ご所望の着替えを用意したことを伝えれば、湯船の中の水瀬が満足そうにそう言った。
「ホントにお前は…」
「あ、石田。もう1個お願い聞いて?」
「はぁ? 何だよ」
「ケータイ、そっちに置いて? 濡れちゃう」
「……」
だったら最初から風呂になんか持ってくんなよ! ―――――とは、言っても聞かないだろうから、あえて何も言わず、石田は携帯電話を受け取るため、バスルームの中に入った。
「水瀬、ケータイ」
ホラ、と差し出された石田の手。
ニヤリ。
水瀬の口元が少し上がったのを、石田は見ていなかった。
「え? ――――うわっ!?」
携帯電話を受け取るために伸ばされた石田の手は、なぜか水瀬にしっかりと掴まれて。
しかもあろうことか、その手はグイと、湯船の中にいる水瀬のほうに引っ張られて。
結果。
ザッバーン! と、派手な音と水しぶきを上げて、石田の上半身は、そのまま湯船の中に上半身を突っ込んでしまった。
「~~~~~~…………おま……」
「ひゃはははは」
「笑ってる場合かーーーー!!!」
石田の荒げた声は、バスルームということもあって、大きく響き渡ったけれど、水瀬はまったくそれに怯むことなく笑い続けている。
「つーかお前、ケータイは!?」
上半身ずぶ濡れ。
こんな状態にさせられてもまだなお、そうした張本人の携帯電話の心配をするあたり、石田のお人よし加減は大したものかもしれない。
ハッと周囲を見回しても、水瀬の携帯電話らしき物体は見当たらなくて、まさか湯船の中に落としてしまったのかと、石田はさらに焦る。
「水瀬、ケータイ…」
「それはもういいの」
「もういいって…」
「だって、ケータイもう向こうに置いてあるし」
そう言って水瀬が指差したのは、脱衣場の方向。
石田は脱衣場と水瀬の顔を交互に見た。
「は?」
「ま、いいじゃん。石田もこんだけ濡れたんだから、風呂入んなきゃだろ? 入ろ?」
「…………」
えっと。
えっとー…。
最初、一緒に風呂に入るのを断って。
1人バスルームに向かった水瀬に、パンツがないから持って来いと携帯電話で呼び出され。
濡れたら困ると携帯電話を受け取ろうとしたところで、湯船に上半身を沈められ(しかもすでに携帯電話は脱衣場に片付けられていて)。
結果、一緒に風呂に入るはめに。
「……て、お前、わざとかーーーー!!!!」
「ひゃはははは!」
パンツを持たずに携帯電話を持っていったのも。
携帯電話を片付けろと、わがままを言ったのも。
すべては、当初に断られた、『一緒にお風呂』を実行するための、伏線でしかなかったのだ。
「入るよね? 石田」
「………………」
「ね?」
無邪気に笑っている、確信犯。
「…………はい」
ヘタレ石田の、下克上への日は遠い。
*END*
「あーはいはい」
ベッドに丸めたシーツを放り投げて、石田は急いでカバンから携帯電話を取り出した。
「………………。はぁ?」
背面ディスプレイに表示された、発信者の名前―――――水瀬環。
本当に、「はぁ?」だ。
(アイツ、風呂入ってんじゃねぇの?)
訝しく思いながら、石田は水瀬かららしい着信を受ける。
『あ、石田ー』
「……何、お前。風呂入ってんじゃねぇの?」
出てみれば、やはりその電話は水瀬からで。
何が何だか、訳が分からない。
『あのさー、パンツ持って来るの忘れたから、持って来て?』
「はぁ?」
『だからー、パンツ!』
「ちょっと待て、お前、今どっから電話…」
電話越し。
妙に響いている水瀬の声。
「……お前、風呂から掛けてんの?」
『そう』
「待て待て待て。何で風呂にケータイ持ってってんだよ!」
『暇だから』
「…………」
よく分からない理由を、さも当然のように言ってのけて、水瀬は『早く、パンツー』とデリカシーの欠けらもないことを口にする。
「あーもう! 今持ってくから!」
何で携帯電話は持っていって、肝心の下着は忘れていくんだ!?
それでも慣れた手つきでタンスを漁ると、石田は言われたとおりに下着と着替えを持ってバスルームに向かった。
「おー、ご苦労ご苦労」
脱衣所とバスルームを仕切るドアを少し開けて、ご所望の着替えを用意したことを伝えれば、湯船の中の水瀬が満足そうにそう言った。
「ホントにお前は…」
「あ、石田。もう1個お願い聞いて?」
「はぁ? 何だよ」
「ケータイ、そっちに置いて? 濡れちゃう」
「……」
だったら最初から風呂になんか持ってくんなよ! ―――――とは、言っても聞かないだろうから、あえて何も言わず、石田は携帯電話を受け取るため、バスルームの中に入った。
「水瀬、ケータイ」
ホラ、と差し出された石田の手。
ニヤリ。
水瀬の口元が少し上がったのを、石田は見ていなかった。
「え? ――――うわっ!?」
携帯電話を受け取るために伸ばされた石田の手は、なぜか水瀬にしっかりと掴まれて。
しかもあろうことか、その手はグイと、湯船の中にいる水瀬のほうに引っ張られて。
結果。
ザッバーン! と、派手な音と水しぶきを上げて、石田の上半身は、そのまま湯船の中に上半身を突っ込んでしまった。
「~~~~~~…………おま……」
「ひゃはははは」
「笑ってる場合かーーーー!!!」
石田の荒げた声は、バスルームということもあって、大きく響き渡ったけれど、水瀬はまったくそれに怯むことなく笑い続けている。
「つーかお前、ケータイは!?」
上半身ずぶ濡れ。
こんな状態にさせられてもまだなお、そうした張本人の携帯電話の心配をするあたり、石田のお人よし加減は大したものかもしれない。
ハッと周囲を見回しても、水瀬の携帯電話らしき物体は見当たらなくて、まさか湯船の中に落としてしまったのかと、石田はさらに焦る。
「水瀬、ケータイ…」
「それはもういいの」
「もういいって…」
「だって、ケータイもう向こうに置いてあるし」
そう言って水瀬が指差したのは、脱衣場の方向。
石田は脱衣場と水瀬の顔を交互に見た。
「は?」
「ま、いいじゃん。石田もこんだけ濡れたんだから、風呂入んなきゃだろ? 入ろ?」
「…………」
えっと。
えっとー…。
最初、一緒に風呂に入るのを断って。
1人バスルームに向かった水瀬に、パンツがないから持って来いと携帯電話で呼び出され。
濡れたら困ると携帯電話を受け取ろうとしたところで、湯船に上半身を沈められ(しかもすでに携帯電話は脱衣場に片付けられていて)。
結果、一緒に風呂に入るはめに。
「……て、お前、わざとかーーーー!!!!」
「ひゃはははは!」
パンツを持たずに携帯電話を持っていったのも。
携帯電話を片付けろと、わがままを言ったのも。
すべては、当初に断られた、『一緒にお風呂』を実行するための、伏線でしかなかったのだ。
「入るよね? 石田」
「………………」
「ね?」
無邪気に笑っている、確信犯。
「…………はい」
ヘタレ石田の、下克上への日は遠い。
*END*
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