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恋の女神は微笑まない (55)
2014.06.29 Sun
「えと…、千尋、くん?」
「ん? あ、ゴメン。今夜の予定を思い出してるはずが、いつの間にか全然違うこと考えてた」
「えっ……」
いや、今夜の予定は、特別何もないということを、考え始めて1秒もしないうちに思い出していたけれど、いつの間にか全然違うことを考えていたのは本当のことだったので、正直に答えたのに、彼は言葉を詰まらせてしまった。
別に千尋もこのことに関して、特別な反応を期待していたわけではないが、そんな…絶句されると、何だか変なことを言ったみたいで、居心地が悪い。
もしこれから彼と食事に行ったら、ずっとこの調子なんだろうか。だとしたら、大和とのことを抜きにしても、ちょっと嫌かも…。
いや、この数分の出来事だけで彼のすべてを判断してはいけないことは分かっている。
しかし、世の中には『第一印象』という言葉もあるくらいで、例えば合コンだってそうなわけだから、千尋は今相手から受ける印象と、それに対する自分の気持ちを大事にしてもいいと思う。
「ゴメン、これから一緒にご飯は無理かも」
ただ単にご飯を食べるだけなら大丈夫かもしれないが、彼は最初に、千尋ともっと喋りたかった、と言ったのだ。でも、残念ながら千尋は、彼とはもうこれ以上、喋りたいとは思わない。というか、会話を続けていける自信がない。
だから、本当にゴメンなさいだけれど、一緒にご飯には行けない。
「そっか…。いや、あのときもそんなに喋ったわけじゃないし、ダメだろうな、とは思ってたんだけど、それでも、何も言わないまま終わるなんて出来なくて…」
「ゴメンなさい」
「いや…、俺のほうこそ、いきなり押し掛けて、ゴメン」
先ほど千尋が想像したとおり、彼はあっさりと身を引いた。
それに比べて大和ときたら、千尋が大和のことを嫌いだとはっきりと言ってくれなければ諦められない、なんて言って。挙げ句にお試しで付き合うことを提案してきたのだ。
テレビの見過ぎじゃない? ていうか、出演したドラマにそんなにがあったの? なんて思わないでもないけれど、そんなことを言われて、愛想が尽きなかったのは自分だ。
別に、映画のような恋がしたいわけじゃないのに。
「彼氏がいるのに、あわよくば奪っちゃおうなんて、柄でもないことは分かってたんだけど」
「………………ん?」
苦笑する男の言葉に、今度は千尋のほうが言葉を詰まらせた。
それは、この優男の頭の中に、そんな気宇壮大な計画があったことに驚いたからではなくて、彼の口から『彼氏がいるのに』なんてセリフが吐き出されたからだ。
この場合の『彼氏』とはやはり、三人称の代名詞のことではなく、恋人である男のことを言っているのだろう。
しかし千尋は、この男に彼氏がいるなど話した覚えはない。
いや、合コンで彼に会ったこと自体、殆ど覚えていないのだから、そんな話はしていない、と断言は出来ないが、大和とお試しの恋人になったのは、合コンの会場を去ってからなので、やはり彼に恋人がいることなど話してはいないはずだ。
「えと………………え?」
「え?」
「いや、あの、今何て…? 彼氏がどうとか、て…」
聞き間違いというには、あまりにも長いセリフだったから、多分聞き間違いではなかったんだろうけど、聞き返さずにはいられなかった。
一体どうしてこの男の発想の中に、そういうことが出てくるのだ。
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「ん? あ、ゴメン。今夜の予定を思い出してるはずが、いつの間にか全然違うこと考えてた」
「えっ……」
いや、今夜の予定は、特別何もないということを、考え始めて1秒もしないうちに思い出していたけれど、いつの間にか全然違うことを考えていたのは本当のことだったので、正直に答えたのに、彼は言葉を詰まらせてしまった。
別に千尋もこのことに関して、特別な反応を期待していたわけではないが、そんな…絶句されると、何だか変なことを言ったみたいで、居心地が悪い。
もしこれから彼と食事に行ったら、ずっとこの調子なんだろうか。だとしたら、大和とのことを抜きにしても、ちょっと嫌かも…。
いや、この数分の出来事だけで彼のすべてを判断してはいけないことは分かっている。
しかし、世の中には『第一印象』という言葉もあるくらいで、例えば合コンだってそうなわけだから、千尋は今相手から受ける印象と、それに対する自分の気持ちを大事にしてもいいと思う。
「ゴメン、これから一緒にご飯は無理かも」
ただ単にご飯を食べるだけなら大丈夫かもしれないが、彼は最初に、千尋ともっと喋りたかった、と言ったのだ。でも、残念ながら千尋は、彼とはもうこれ以上、喋りたいとは思わない。というか、会話を続けていける自信がない。
だから、本当にゴメンなさいだけれど、一緒にご飯には行けない。
「そっか…。いや、あのときもそんなに喋ったわけじゃないし、ダメだろうな、とは思ってたんだけど、それでも、何も言わないまま終わるなんて出来なくて…」
「ゴメンなさい」
「いや…、俺のほうこそ、いきなり押し掛けて、ゴメン」
先ほど千尋が想像したとおり、彼はあっさりと身を引いた。
それに比べて大和ときたら、千尋が大和のことを嫌いだとはっきりと言ってくれなければ諦められない、なんて言って。挙げ句にお試しで付き合うことを提案してきたのだ。
テレビの見過ぎじゃない? ていうか、出演したドラマにそんなにがあったの? なんて思わないでもないけれど、そんなことを言われて、愛想が尽きなかったのは自分だ。
別に、映画のような恋がしたいわけじゃないのに。
「彼氏がいるのに、あわよくば奪っちゃおうなんて、柄でもないことは分かってたんだけど」
「………………ん?」
苦笑する男の言葉に、今度は千尋のほうが言葉を詰まらせた。
それは、この優男の頭の中に、そんな気宇壮大な計画があったことに驚いたからではなくて、彼の口から『彼氏がいるのに』なんてセリフが吐き出されたからだ。
この場合の『彼氏』とはやはり、三人称の代名詞のことではなく、恋人である男のことを言っているのだろう。
しかし千尋は、この男に彼氏がいるなど話した覚えはない。
いや、合コンで彼に会ったこと自体、殆ど覚えていないのだから、そんな話はしていない、と断言は出来ないが、大和とお試しの恋人になったのは、合コンの会場を去ってからなので、やはり彼に恋人がいることなど話してはいないはずだ。
「えと………………え?」
「え?」
「いや、あの、今何て…? 彼氏がどうとか、て…」
聞き間違いというには、あまりにも長いセリフだったから、多分聞き間違いではなかったんだろうけど、聞き返さずにはいられなかった。
一体どうしてこの男の発想の中に、そういうことが出てくるのだ。
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