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暴君王子のおっしゃることには! (107)
2012.08.16 Thu
「いっちゃん、寒くない? お風呂入ろうね?」
「うぅー…」
暑いからって、一伽は夏になるとシャワーだけで済ませてしまう人なんだけれど、雪乃はお風呂大好きだから、こんな真夏の夜だって、お風呂はちゃんと沸いているのだ。
一伽の泣き方が少し落ち着いてきたところで声を掛ければ、一伽はコクリと頷いた。
「雨、すごいもんね。いっちゃん、駅から走ってきたの? 大変だったね」
そういえば今朝、一伽は傘を持たずに家を出た。
天気予報は晴れと言っていたから、傘を持っていかなかったのは雪乃も一緒なのだが、帰宅するタイミングが早かったので、難を逃れたのだ。
「いっちゃん?」
あらかた水分を拭き取ったところで、風呂場へと向かうと、一伽がキュッと雪乃の手を握った。泣き止んだ一伽の瞳に、再び涙が浮かんでいる。
最寄りの駅からは、普通に歩いたって5分くらいだ。それだけの距離の間に、一体何があったというのだろう。
「いっちゃ…」
「…じゃない」
「え? ん?」
「駅からじゃな…………わぁーん!!」
それだけ言うと、一伽はまた声を上げて泣き始めた。
だって、一伽がずぶ濡れのドロドロなのは、駅から家まで傘がなかったからじゃない。
志信の家を出て、コウモリの姿で飛び始めて間もなく雨は降り出したが、その雨は瞬く間に豪雨となって、小さなコウモリの一伽に降り注いだのだ。
激しい雨に飛び続けられなくなった一伽は、電柱にぶつかって地面に落下すると、側溝に流れ落ちそうになり、車に思い切り水を浴びせ掛けられ、人間に踏み潰されそうにもなった。
こんな惨めな思い、生まれて初めてだ。
「そっか…、大変だったね、いっちゃん」
「ヒック…」
雪乃がバスタオルで、一伽の顔を優しく拭いてくれる。
本当は一伽は志信の家でも大変おもしろくない思いをしたのだが、雪乃に優しくされているうち、気持ちが落ち着いてきたので、言うのはやめた。
「いっちゃん、風邪引かないように、ちゃんとあったまってね? 俺、着替え用意してくるから」
「…ユキちゃん、優しい。うへ、俺、王様みたいだ。ねぇねぇ、服は脱がせてくんないの?」
「自分で脱ぎなさいっ」
一伽も本気で言っていたわけではないようで、濡れた服をポイポイ脱ぎ捨てている。
少しだけれど、ようやく一伽に笑顔が戻って、雪乃はちょっとホッとした。
「いっちゃん、ちゃんとあったまるんだよ?」
「はーい」
もうどうせ寝るだけだろうし、一伽はメンズファッションの店に勤めているくせに、寝るときの格好なんて、良くてTシャツと短パン、でなければパンツ1枚という人だから、雪乃は適当に替えの下着とTシャツを用意すことにした。
あ、上がったら何か飲むかな?
でも、冷蔵庫の中にはコーラとビールしか……もっと優しい飲み物のほうがいい気はするけれど、一伽にホッとミルクとか、何かちょっと似合わないかな。
昨日お店から貰ったハーブティの茶葉があるから、それを淹れてあげよう。雪乃も光宏を見習って、ちょっとは上手に淹れられるようになったはずだから。
…と、雪乃がお茶の支度をしてから、着替えを持って風呂場に行ったら。
「ちょっ、いっちゃん! 何でもう上がってんの!?」
つい先ほど、ちゃんと温まれと言って雪乃が風呂場を離れてから、まだ10分くらいしか経っていない。
髪と体は洗ったようだから、その時間を考えると、絶対に湯船になんか浸かってない!
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「うぅー…」
暑いからって、一伽は夏になるとシャワーだけで済ませてしまう人なんだけれど、雪乃はお風呂大好きだから、こんな真夏の夜だって、お風呂はちゃんと沸いているのだ。
一伽の泣き方が少し落ち着いてきたところで声を掛ければ、一伽はコクリと頷いた。
「雨、すごいもんね。いっちゃん、駅から走ってきたの? 大変だったね」
そういえば今朝、一伽は傘を持たずに家を出た。
天気予報は晴れと言っていたから、傘を持っていかなかったのは雪乃も一緒なのだが、帰宅するタイミングが早かったので、難を逃れたのだ。
「いっちゃん?」
あらかた水分を拭き取ったところで、風呂場へと向かうと、一伽がキュッと雪乃の手を握った。泣き止んだ一伽の瞳に、再び涙が浮かんでいる。
最寄りの駅からは、普通に歩いたって5分くらいだ。それだけの距離の間に、一体何があったというのだろう。
「いっちゃ…」
「…じゃない」
「え? ん?」
「駅からじゃな…………わぁーん!!」
それだけ言うと、一伽はまた声を上げて泣き始めた。
だって、一伽がずぶ濡れのドロドロなのは、駅から家まで傘がなかったからじゃない。
志信の家を出て、コウモリの姿で飛び始めて間もなく雨は降り出したが、その雨は瞬く間に豪雨となって、小さなコウモリの一伽に降り注いだのだ。
激しい雨に飛び続けられなくなった一伽は、電柱にぶつかって地面に落下すると、側溝に流れ落ちそうになり、車に思い切り水を浴びせ掛けられ、人間に踏み潰されそうにもなった。
こんな惨めな思い、生まれて初めてだ。
「そっか…、大変だったね、いっちゃん」
「ヒック…」
雪乃がバスタオルで、一伽の顔を優しく拭いてくれる。
本当は一伽は志信の家でも大変おもしろくない思いをしたのだが、雪乃に優しくされているうち、気持ちが落ち着いてきたので、言うのはやめた。
「いっちゃん、風邪引かないように、ちゃんとあったまってね? 俺、着替え用意してくるから」
「…ユキちゃん、優しい。うへ、俺、王様みたいだ。ねぇねぇ、服は脱がせてくんないの?」
「自分で脱ぎなさいっ」
一伽も本気で言っていたわけではないようで、濡れた服をポイポイ脱ぎ捨てている。
少しだけれど、ようやく一伽に笑顔が戻って、雪乃はちょっとホッとした。
「いっちゃん、ちゃんとあったまるんだよ?」
「はーい」
もうどうせ寝るだけだろうし、一伽はメンズファッションの店に勤めているくせに、寝るときの格好なんて、良くてTシャツと短パン、でなければパンツ1枚という人だから、雪乃は適当に替えの下着とTシャツを用意すことにした。
あ、上がったら何か飲むかな?
でも、冷蔵庫の中にはコーラとビールしか……もっと優しい飲み物のほうがいい気はするけれど、一伽にホッとミルクとか、何かちょっと似合わないかな。
昨日お店から貰ったハーブティの茶葉があるから、それを淹れてあげよう。雪乃も光宏を見習って、ちょっとは上手に淹れられるようになったはずだから。
…と、雪乃がお茶の支度をしてから、着替えを持って風呂場に行ったら。
「ちょっ、いっちゃん! 何でもう上がってんの!?」
つい先ほど、ちゃんと温まれと言って雪乃が風呂場を離れてから、まだ10分くらいしか経っていない。
髪と体は洗ったようだから、その時間を考えると、絶対に湯船になんか浸かってない!
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