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暴君王子のおっしゃることには! (105)
2012.08.14 Tue
「ううぅ~~~~」
前が見えない。
いきなりこんな降り方になるなんて、もしかして、これが流行りのゲリラ豪雨てヤツ?
と…飛べない…。
「に゛ゃ!?」
人間だって、歩くのがやっとという降り方だ。コウモリの姿で飛ぶには限界がある。
それでもがんばって前に進んでいたのだが、視界不良すぎて目の前の電柱に気付かず、一伽はそのまま電柱に激突した。
「にぃ~…」
豪雨のせいでゆっくりとしか飛べずにいたのが幸いして、ぶつかったことの体への衝撃は少なかったが、予想だにしない出来事に驚いた一伽は、ふらふらと地面へと落下した。
さらに悪いことに、道路がすでに冠水し始めていたことで、落下した一伽は、道路の端に集まって流れていた雨水に飲み込まれてしまった。
「うわっぷ! ッ、ん~~~! ぷはっ!」
人間なら、靴が水浸しになるくらいで済む深さなのだが、小さな今の体は、あっという間に流されてしまう。
水の中をゴロンゴロンと何回か回転したところで、一伽は運良く歩道のブロックの継ぎ目のところに手を引っ掛け、水の中から顔を出すことが出来た。
「はぁっ…はぁっ」
水の勢いに負けそうになりながらも、その先にグレーチングが見えて、このまま流れていったら側溝に落ちる…! と一伽は、必死に歩道まで這い上がった。
ひとまず、雨が凌げるところに移動しなければ――――そう思って、雨の避けられるビルの軒下に向かった一伽だったが。
「ギャッ!」
雨がすごくて飛び立てずにヨタヨタと歩いていたら、通り過ぎる車が撥ね上げた雨水が、思い切り浴びせ掛けられた。
「うぅ…ひどい…」
とっくの昔にずぶ濡れになっていたから、水が掛かったことに怒りはしないけれど、こういう目に遭うと、自分の存在が全然気付かれていない感じがして切ない。
吸血鬼だって、同じ地球の上で暮らす生き物なのに。
「ふ…ぅ、」
ようやくビルの軒下に避難した一伽は、安堵の溜め息をついた。
早く帰ろうと思ったけれど、雨がもう少し落ち着かないことには、飛び立ってもまた落っこちそうだから、仕方がない、しばらくはここにいよう。
けれど、一伽の災難は続いた。
「ヒッ…」
この激しい雨に、町行く人も先を急ぐことに気を取られ、周囲への注意力が薄れているのか、小さなコウモリはその存在を気付いてもらえず、一伽のすぐそばを人の足がバタバタと過ぎていくのだ。
あと数センチというところで、踏み潰される危機を逃れてはいるが、このままでは、いつ人間の足の下敷きになってもおかしくはない。
一伽は気力を振り絞って飛び上がると、軒先の、かろうじて雨の当たらないところにぶら下がった。コウモリなので、逆さにぶら下がることは苦でないのだが、今は体力が消耗しているので、結構大変…。
いっそ、人間の姿に戻って、電車とかで帰ったほうがいいんだろうか。でも今人間に戻ったって、ビショビショのドロドロだし、この雨でもし電車が止まっていたら、ますます帰る術がなくなってしまう。
(雨、全然止みそうもない…)
もしかしたら、一晩中降り続くかもしれない。
そうしたら一伽は、朝までここにぶら下がっていないといけないわけ?
(さすがにそれは無理…)
そんな耐久レースのような真似、出来るはずもないし、やりたくもない。
とすれば、一伽に残された道は1つしかない――――今、がんばって家まで飛んでいく。
「よしっ」
さっきよりはほんの少しだけ、雨足が弱まった気がしないでもないから(多分気のせいだけれど、自分にそう言い聞かせた)、今のうちに飛び立とう。
大丈夫、一伽は強い子だから。
そして小さなコウモリの一伽は、土砂降りの雨の中を、再び飛び立っていった。
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前が見えない。
いきなりこんな降り方になるなんて、もしかして、これが流行りのゲリラ豪雨てヤツ?
と…飛べない…。
「に゛ゃ!?」
人間だって、歩くのがやっとという降り方だ。コウモリの姿で飛ぶには限界がある。
それでもがんばって前に進んでいたのだが、視界不良すぎて目の前の電柱に気付かず、一伽はそのまま電柱に激突した。
「にぃ~…」
豪雨のせいでゆっくりとしか飛べずにいたのが幸いして、ぶつかったことの体への衝撃は少なかったが、予想だにしない出来事に驚いた一伽は、ふらふらと地面へと落下した。
さらに悪いことに、道路がすでに冠水し始めていたことで、落下した一伽は、道路の端に集まって流れていた雨水に飲み込まれてしまった。
「うわっぷ! ッ、ん~~~! ぷはっ!」
人間なら、靴が水浸しになるくらいで済む深さなのだが、小さな今の体は、あっという間に流されてしまう。
水の中をゴロンゴロンと何回か回転したところで、一伽は運良く歩道のブロックの継ぎ目のところに手を引っ掛け、水の中から顔を出すことが出来た。
「はぁっ…はぁっ」
水の勢いに負けそうになりながらも、その先にグレーチングが見えて、このまま流れていったら側溝に落ちる…! と一伽は、必死に歩道まで這い上がった。
ひとまず、雨が凌げるところに移動しなければ――――そう思って、雨の避けられるビルの軒下に向かった一伽だったが。
「ギャッ!」
雨がすごくて飛び立てずにヨタヨタと歩いていたら、通り過ぎる車が撥ね上げた雨水が、思い切り浴びせ掛けられた。
「うぅ…ひどい…」
とっくの昔にずぶ濡れになっていたから、水が掛かったことに怒りはしないけれど、こういう目に遭うと、自分の存在が全然気付かれていない感じがして切ない。
吸血鬼だって、同じ地球の上で暮らす生き物なのに。
「ふ…ぅ、」
ようやくビルの軒下に避難した一伽は、安堵の溜め息をついた。
早く帰ろうと思ったけれど、雨がもう少し落ち着かないことには、飛び立ってもまた落っこちそうだから、仕方がない、しばらくはここにいよう。
けれど、一伽の災難は続いた。
「ヒッ…」
この激しい雨に、町行く人も先を急ぐことに気を取られ、周囲への注意力が薄れているのか、小さなコウモリはその存在を気付いてもらえず、一伽のすぐそばを人の足がバタバタと過ぎていくのだ。
あと数センチというところで、踏み潰される危機を逃れてはいるが、このままでは、いつ人間の足の下敷きになってもおかしくはない。
一伽は気力を振り絞って飛び上がると、軒先の、かろうじて雨の当たらないところにぶら下がった。コウモリなので、逆さにぶら下がることは苦でないのだが、今は体力が消耗しているので、結構大変…。
いっそ、人間の姿に戻って、電車とかで帰ったほうがいいんだろうか。でも今人間に戻ったって、ビショビショのドロドロだし、この雨でもし電車が止まっていたら、ますます帰る術がなくなってしまう。
(雨、全然止みそうもない…)
もしかしたら、一晩中降り続くかもしれない。
そうしたら一伽は、朝までここにぶら下がっていないといけないわけ?
(さすがにそれは無理…)
そんな耐久レースのような真似、出来るはずもないし、やりたくもない。
とすれば、一伽に残された道は1つしかない――――今、がんばって家まで飛んでいく。
「よしっ」
さっきよりはほんの少しだけ、雨足が弱まった気がしないでもないから(多分気のせいだけれど、自分にそう言い聞かせた)、今のうちに飛び立とう。
大丈夫、一伽は強い子だから。
そして小さなコウモリの一伽は、土砂降りの雨の中を、再び飛び立っていった。
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