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pray (6)
2008.05.14 Wed
待って、待って、待って。
本当に日付けが変わってしまう…と焦りを覚えるくらいまで待って――――11時50分。
11時を過ぎたあたりから、時計をジッと気にしてはいたが、あと5分、あと5分待とうとしているうちに、12時まであと10分を切ってしまった。
「まだ、終わんないのかな…」
もし間に合わないのなら、せめて今日中に『おめでとう』くらい言っておきたい。たとえ留守電だったとしても。
真琴はカバンから携帯電話を取り出し、リダイヤルの中から遥斗の番号を表示させた。
もしまだ仕事中だとしたら留守電になるだろうから、仕事の邪魔にはなったりはしないだろう。
大きく息をついて、遥斗に電話を掛けると、しかし予想外にも、電話はすぐに繋がった。
『―――もしもし?』
ガヤガヤとざわついた電話の向こう。何となく仕事現場の雰囲気とは違うことに真琴は気が付いていた。
「あ、あの、ゴメン、今大丈夫?」
『平気だけど…』
「あの、あのね、」
まずは先日のことを謝ったほうがいいのか、やはり誕生日を祝ってやるのが先か、それとも今どこにいるのか尋ねるべきか、真琴が逡巡していると、
『遥斗くーん、何してるのー?』
受話器越しに聞こえる酔っ払った女の声。それに遥斗が『すいません、ちょっと』と答えている。
『どうしたの? マコ』
その声に急かされたせいか、遥斗は慌てたように真琴に用件を求める。
「ゴメン、忙しい?」
『あ、いや…ホラ、今日俺、誕生日だから…。そしたらスタッフさんとか、他のモデルの人とかが祝ってくれて、今』
「―――そ…なんだ」
スゥーッと、心の中が冷たいような、それでいて熱く重たいような感覚になっていく。それは一瞬のうちに全身に広がっていって。
『マコ?』
「あの…誕生日、おめでと…、一応、今日中に言っとこうかと思って…」
『あぁ、ありがとう』
みんなに、祝ってもらってるんだ。
よくあることだよね。はーちゃん、人気あるし。そういう現場で誕生日だって分かれば、祝おうってなるよね。
「……ゴメン」
分かってるよ。仕事のことだし、はーちゃんの誕生日なんだし、抜けられるわけないよね。分かってたよ。
「ゴメンね…」
バカみたい、泣いてるなんて。分かってたのに。
『マコ?』
これ以上遥斗の声を聞いていたら泣き出してしまう。もうこれ以上、遥斗のことを困らせたくはなかった。
「ゴメン…」
真琴は遥斗が何か喋ろうとしていたのが分かったけれど、もう1度謝ると、一方的に電話を切った。
「―――ヒック…」
涙でぼやけた視界に稚拙な手料理が並んでいて、それがどうしようもなくおかしかった。
こんなもので遥斗の誕生日を祝おうとしていた自分が最高におかしくて、惨めで、誰もいない部屋で、真琴は声を殺して泣いた。
本当に日付けが変わってしまう…と焦りを覚えるくらいまで待って――――11時50分。
11時を過ぎたあたりから、時計をジッと気にしてはいたが、あと5分、あと5分待とうとしているうちに、12時まであと10分を切ってしまった。
「まだ、終わんないのかな…」
もし間に合わないのなら、せめて今日中に『おめでとう』くらい言っておきたい。たとえ留守電だったとしても。
真琴はカバンから携帯電話を取り出し、リダイヤルの中から遥斗の番号を表示させた。
もしまだ仕事中だとしたら留守電になるだろうから、仕事の邪魔にはなったりはしないだろう。
大きく息をついて、遥斗に電話を掛けると、しかし予想外にも、電話はすぐに繋がった。
『―――もしもし?』
ガヤガヤとざわついた電話の向こう。何となく仕事現場の雰囲気とは違うことに真琴は気が付いていた。
「あ、あの、ゴメン、今大丈夫?」
『平気だけど…』
「あの、あのね、」
まずは先日のことを謝ったほうがいいのか、やはり誕生日を祝ってやるのが先か、それとも今どこにいるのか尋ねるべきか、真琴が逡巡していると、
『遥斗くーん、何してるのー?』
受話器越しに聞こえる酔っ払った女の声。それに遥斗が『すいません、ちょっと』と答えている。
『どうしたの? マコ』
その声に急かされたせいか、遥斗は慌てたように真琴に用件を求める。
「ゴメン、忙しい?」
『あ、いや…ホラ、今日俺、誕生日だから…。そしたらスタッフさんとか、他のモデルの人とかが祝ってくれて、今』
「―――そ…なんだ」
スゥーッと、心の中が冷たいような、それでいて熱く重たいような感覚になっていく。それは一瞬のうちに全身に広がっていって。
『マコ?』
「あの…誕生日、おめでと…、一応、今日中に言っとこうかと思って…」
『あぁ、ありがとう』
みんなに、祝ってもらってるんだ。
よくあることだよね。はーちゃん、人気あるし。そういう現場で誕生日だって分かれば、祝おうってなるよね。
「……ゴメン」
分かってるよ。仕事のことだし、はーちゃんの誕生日なんだし、抜けられるわけないよね。分かってたよ。
「ゴメンね…」
バカみたい、泣いてるなんて。分かってたのに。
『マコ?』
これ以上遥斗の声を聞いていたら泣き出してしまう。もうこれ以上、遥斗のことを困らせたくはなかった。
「ゴメン…」
真琴は遥斗が何か喋ろうとしていたのが分かったけれど、もう1度謝ると、一方的に電話を切った。
「―――ヒック…」
涙でぼやけた視界に稚拙な手料理が並んでいて、それがどうしようもなくおかしかった。
こんなもので遥斗の誕生日を祝おうとしていた自分が最高におかしくて、惨めで、誰もいない部屋で、真琴は声を殺して泣いた。
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