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繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス (75)
2010.10.18 Mon
「まだ早かったかなー」
「早いね、完全に」
ファミレスから駅までの距離があまりに短すぎて、ゆっくり歩いても殆ど時間潰しにはならなかった。
それでも駅近くには、チラホラ人の姿がある。
「まだ時間あるでしょ? もうちょっと一緒にいよ?」
何をしていようか瑛貴が迷っていたら、依織に腕を引かれた。
向かったのはいつもの路地裏。普段は暗闇に紛れるそこも、今は柔らかな朝日が差し込み始めている。
一緒にいるだけだとしても、駅前だと誰に見られるか分からないし…と依織が思ってくれたのかは知らないが、いつもはただ何となくキスをしている場所で、今は何となく話の続きをする。
「つかアッキー、仕事終わってすぐ帰りたいなら、もっと近くに住めばいいのに」
「ダメダメ、近すぎんのはダメ」
「何で」
「だって俺んちが近くにあったら、絶対、帰れなくなったヤツが、泊めてーて上がり込んでくるに決まってるもん。時々ならいいけど、しょっちゅうはキツイ」
泰我のように朝までオールで遊べるか、毎回タクシーで帰れる人間ばかりならいいが、ホストクラブで働いているとはいえ、そこまで体力や金銭的に余裕のある人間ばかりではない。
瑛貴がJADEの近くに住んでいるとなれば、体よく利用されるのは、目に見えている。
「あぁ…何かアッキーなら、そうなりそう…」
「…それ、絶対いい意味で言ってないだろ、お前」
「あはは」
先輩としての威厳が少なめなことは、依織に言われるまでもなく、瑛貴自身がよく分かっているのだ。
七槻からは、それがアッキーのいいところじゃん? なんて、何の慰めにもならない慰めの言葉を時々掛けられているし。
「七槻くんも、結構言うね」
「ホントだよ。つか俺、七槻くんとは同い年だし、店に入ったのも俺のほうが早かったのにさぁ」
「ウッソ。アッキー、七槻くんと同い年なの!?」
「そうだよ、うっせぇな」
客がホストを選ぶときに見る男メニューの写真が、写真スタジオの技術向上のおかげで実物の何割増しにもなっている中、七槻は間違いなく写真どおりかそれ以上のキレイな顔立ちをしていることもあって、童顔の瑛貴と比べると、やはり同い年には見えない。
瑛貴もそれは十分に承知しているが、改めてそんなに驚かれると、ちょっと切ない。
「ゴメンゴメン、アッキー! でもいいじゃん童顔だって。かわいいんだし」
「お前に言われたくない」
「それって、俺がかわいい、てこと?」
「…」
「冗談じゃん」
冷ややかな視線を向けて来る瑛貴に、依織は笑いながら肩を竦めた。
「…アッキー」
「ん?」
依織は隣の瑛貴に凭れるようにして、その肩に頭を乗せた。
瑛貴はチラリと依織を見たが、無理に押し退けようとはしなかった。
「…ん」
少し首を捻って、唇を重ねる。
そういえば、女の子の格好をしている依織とキスをするのは、意外にも初めてだった。
昨夜も一緒に歩いていた男とも、依織はこんなふうにキスをするのだろうか。それともいきなり肉欲的な行為から始まるのだろうか。
(…別にどっちだっていいけど)
「…ぅん?」
少しだけ唇を離して、依織が尋ねるように瑛貴の目を見る。
瑛貴は、「何でもない」と答えようとしたが、それより先に依織が「何?」と聞き返した。
「…女の子の格好してるとき、キスすんの初めてだと思っただけ」
思ったことはそれだけではなかったけれど、すべてを話す気にはならなくて、瑛貴はそのことだけを話した。
けれど、それだけで依織は、瑛貴が本当に思っていたことまでを感じ取ったのか、小さく溜め息をついた。
「アッキーとはね」
「…どっかの男とは、してんだもんな」
「しょうがないじゃん、アッキーは俺のモンじゃないんだし」
瑛貴が、言うつもりのなかった言葉を滑らせれば、依織は「1人は寂しいもん」と付け加えて目を伏せた。
依織に会えないときは、俺だって寂しいよ、とは言わなかった。
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「早いね、完全に」
ファミレスから駅までの距離があまりに短すぎて、ゆっくり歩いても殆ど時間潰しにはならなかった。
それでも駅近くには、チラホラ人の姿がある。
「まだ時間あるでしょ? もうちょっと一緒にいよ?」
何をしていようか瑛貴が迷っていたら、依織に腕を引かれた。
向かったのはいつもの路地裏。普段は暗闇に紛れるそこも、今は柔らかな朝日が差し込み始めている。
一緒にいるだけだとしても、駅前だと誰に見られるか分からないし…と依織が思ってくれたのかは知らないが、いつもはただ何となくキスをしている場所で、今は何となく話の続きをする。
「つかアッキー、仕事終わってすぐ帰りたいなら、もっと近くに住めばいいのに」
「ダメダメ、近すぎんのはダメ」
「何で」
「だって俺んちが近くにあったら、絶対、帰れなくなったヤツが、泊めてーて上がり込んでくるに決まってるもん。時々ならいいけど、しょっちゅうはキツイ」
泰我のように朝までオールで遊べるか、毎回タクシーで帰れる人間ばかりならいいが、ホストクラブで働いているとはいえ、そこまで体力や金銭的に余裕のある人間ばかりではない。
瑛貴がJADEの近くに住んでいるとなれば、体よく利用されるのは、目に見えている。
「あぁ…何かアッキーなら、そうなりそう…」
「…それ、絶対いい意味で言ってないだろ、お前」
「あはは」
先輩としての威厳が少なめなことは、依織に言われるまでもなく、瑛貴自身がよく分かっているのだ。
七槻からは、それがアッキーのいいところじゃん? なんて、何の慰めにもならない慰めの言葉を時々掛けられているし。
「七槻くんも、結構言うね」
「ホントだよ。つか俺、七槻くんとは同い年だし、店に入ったのも俺のほうが早かったのにさぁ」
「ウッソ。アッキー、七槻くんと同い年なの!?」
「そうだよ、うっせぇな」
客がホストを選ぶときに見る男メニューの写真が、写真スタジオの技術向上のおかげで実物の何割増しにもなっている中、七槻は間違いなく写真どおりかそれ以上のキレイな顔立ちをしていることもあって、童顔の瑛貴と比べると、やはり同い年には見えない。
瑛貴もそれは十分に承知しているが、改めてそんなに驚かれると、ちょっと切ない。
「ゴメンゴメン、アッキー! でもいいじゃん童顔だって。かわいいんだし」
「お前に言われたくない」
「それって、俺がかわいい、てこと?」
「…」
「冗談じゃん」
冷ややかな視線を向けて来る瑛貴に、依織は笑いながら肩を竦めた。
「…アッキー」
「ん?」
依織は隣の瑛貴に凭れるようにして、その肩に頭を乗せた。
瑛貴はチラリと依織を見たが、無理に押し退けようとはしなかった。
「…ん」
少し首を捻って、唇を重ねる。
そういえば、女の子の格好をしている依織とキスをするのは、意外にも初めてだった。
昨夜も一緒に歩いていた男とも、依織はこんなふうにキスをするのだろうか。それともいきなり肉欲的な行為から始まるのだろうか。
(…別にどっちだっていいけど)
「…ぅん?」
少しだけ唇を離して、依織が尋ねるように瑛貴の目を見る。
瑛貴は、「何でもない」と答えようとしたが、それより先に依織が「何?」と聞き返した。
「…女の子の格好してるとき、キスすんの初めてだと思っただけ」
思ったことはそれだけではなかったけれど、すべてを話す気にはならなくて、瑛貴はそのことだけを話した。
けれど、それだけで依織は、瑛貴が本当に思っていたことまでを感じ取ったのか、小さく溜め息をついた。
「アッキーとはね」
「…どっかの男とは、してんだもんな」
「しょうがないじゃん、アッキーは俺のモンじゃないんだし」
瑛貴が、言うつもりのなかった言葉を滑らせれば、依織は「1人は寂しいもん」と付け加えて目を伏せた。
依織に会えないときは、俺だって寂しいよ、とは言わなかった。
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柚子季 杏 ⇒
わっ!
俺だって・・・・・・最後の一文、来ましたねー。
あっきーもボチボチ気持ちを決めるのでしょうか?
ドキドキ ((*´д`*)) ドキドキ
俺だって・・・・・・最後の一文、来ましたねー。
あっきーもボチボチ気持ちを決めるのでしょうか?
ドキドキ ((*´д`*)) ドキドキ
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
鈍感アッキー、何でこんなにもやもや・イライラしているのか、果たして分かってるんでしょうか(笑)
イオリンも大変な相手を好きになったものです。
誰かアッキーの背中を押してやってくれないかと、書いてるほうもジリジリです(^_^;)
コメントありがとうございました!
イオリンも大変な相手を好きになったものです。
誰かアッキーの背中を押してやってくれないかと、書いてるほうもジリジリです(^_^;)
コメントありがとうございました!