恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

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繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス (28)


 依織があの男と2人、雑踏の中に消えるのを呆然と見届け、それからどうやってJADEまで戻って来たのか、瑛貴にもよく分からなかった。
 とりあえず誰にも怒られなかったから、開店時間には間に合ったのだろう。

 依織のことは、よく知らない。
 まだ2回しかちゃんと会ったことはないし、その素性を詳しく語り合ったこともないから。
 ただ分かるのは、依織には男の恋人がいて、でも浮気をしているかもしれなくて、真相を聞こうか迷っているうち、ばったりと出くわした依織の隣には、また別の男がいたということ。

 しかもそれを見られた依織は、なぜか気まずそうな顔をしていた。
 瑛貴がこの街で働いているのは知っているのだから、会う可能性があることくらい分かっていていいはずなのに。
 浮気現場を見られたとでも思ったのだろうか。
 確かに瑛貴は、依織が他の男とあんなふうに歩いているところ見たことはあるが、そのことを依織は知らないのだから、何食わぬ顔をしていればバレないと思わなかったのだろうか。

 それともまさか、恋人が男だと知られたから?
 しかし、この界隈にはゲイもビアンも、七槻のような両性愛の人も大勢いて、そんなことをいちいち気にするような人間なんていない。

(でも依織、この辺じゃあんま遊ばないって言ってたしな…)

 瑛貴だって、この辺りの事情にそんなに詳しいわけではないが、もしかしたら依織はもっとそういうことが分からなくて、瑛貴に見られたのが気まずかったのかもしれない。
 いやしかし、それなら瑛貴がいると分かっていて、わざわざこの街に来る必要もないのに。

(あー分かんね)

 淡々と仕事をこなし、閉店時間になって、いつもどおり後片付けをした瑛貴は、終電に間に合うように店を出た。
 優輝には、「今夜なら空いてるけど、遊ばね?」と誘われたが、とてもそんな気分にはならなくて断った。

「…アッキー」

 店を出て駅に向かおうとした瑛貴に、背後から声が掛かる。
 喧噪の中、聞き覚えのある声にハッとして振り返れば、そこには依織が1人で立っていた。

「依織!」
「えへへ、アッキーの顔見たくて……来ちゃった」
「来ちゃったはいいけど…おま、それ、どうしたんだよ!」

 瑛貴は、依織がそこにいたことにも十分驚いたが、もっと驚いたのは、その口元に血が滲んでいたこと。
 眩いネオンの下、よく見れば依織の口の端は切れているし、頬もうっすら腫れている。

「あ…これ? ちょっとね。大丈夫、大したことないから」
「何で! 血出てんじゃん! 病院!? あ、警察!? さっき一緒にいた男にやられたんだろ!?」
「アッキー大丈夫! ホント大丈夫! 平気! 何ともないよ!」

 その傷と腫れは、どう見たって殴られたに決まっている。
 何があったかは知らないし、大したことがないと依織が言ったって、ケガをしたのは間違いないのだ。憤りで声を荒げる瑛貴に、しかし依織は、平気だからと繰り返す。

「だって殴られたんだろ? そんなのっ」
「そうだけど、もう平気だから…。警察なんて、俺が行きたくない」
「でも手当て…病院…」

 いくら依織が平気だと言ったところで、このままにはしておけない。
 病院に行くほどのケガはしていないのだとしても、傷の手当てくらいしなければ。



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カテゴリー:繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

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柚子季杏 ⇒

イオリン、愛を求めているのですね~切ない…。
お話がどう動いて行くのか、ドキドキです~。
男、としてではなく、女になりたいイオリン。
でも、女になりたいのは優しくされたいから、なのですよねぇ~。
うーん、その辺りに、今後のカギが隠されてるかな?

  • |2010.08.31
  • |Tue
  • |13:05
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如月久美子 ⇒ >柚子季さん

 多分、いわゆる「普通」に暮らしてる人には、イオリンの気持ち、なかなか分からないと思います。
 ましてや、スーパー鈍感なアッキーじゃ…(笑)
 寂しくて、1人じゃいたくないけど、誰かにそばにいてもらうには、女の子じゃないと無理…て勝手に思い込んでるイオリン。
 果たしてアッキー、それに気付けるんでしょうか。。。

 コメントありがとうございました!

  • |2010.08.31
  • |Tue
  • |20:08
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