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繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス (28)
2010.08.31 Tue
依織があの男と2人、雑踏の中に消えるのを呆然と見届け、それからどうやってJADEまで戻って来たのか、瑛貴にもよく分からなかった。
とりあえず誰にも怒られなかったから、開店時間には間に合ったのだろう。
依織のことは、よく知らない。
まだ2回しかちゃんと会ったことはないし、その素性を詳しく語り合ったこともないから。
ただ分かるのは、依織には男の恋人がいて、でも浮気をしているかもしれなくて、真相を聞こうか迷っているうち、ばったりと出くわした依織の隣には、また別の男がいたということ。
しかもそれを見られた依織は、なぜか気まずそうな顔をしていた。
瑛貴がこの街で働いているのは知っているのだから、会う可能性があることくらい分かっていていいはずなのに。
浮気現場を見られたとでも思ったのだろうか。
確かに瑛貴は、依織が他の男とあんなふうに歩いているところ見たことはあるが、そのことを依織は知らないのだから、何食わぬ顔をしていればバレないと思わなかったのだろうか。
それともまさか、恋人が男だと知られたから?
しかし、この界隈にはゲイもビアンも、七槻のような両性愛の人も大勢いて、そんなことをいちいち気にするような人間なんていない。
(でも依織、この辺じゃあんま遊ばないって言ってたしな…)
瑛貴だって、この辺りの事情にそんなに詳しいわけではないが、もしかしたら依織はもっとそういうことが分からなくて、瑛貴に見られたのが気まずかったのかもしれない。
いやしかし、それなら瑛貴がいると分かっていて、わざわざこの街に来る必要もないのに。
(あー分かんね)
淡々と仕事をこなし、閉店時間になって、いつもどおり後片付けをした瑛貴は、終電に間に合うように店を出た。
優輝には、「今夜なら空いてるけど、遊ばね?」と誘われたが、とてもそんな気分にはならなくて断った。
「…アッキー」
店を出て駅に向かおうとした瑛貴に、背後から声が掛かる。
喧噪の中、聞き覚えのある声にハッとして振り返れば、そこには依織が1人で立っていた。
「依織!」
「えへへ、アッキーの顔見たくて……来ちゃった」
「来ちゃったはいいけど…おま、それ、どうしたんだよ!」
瑛貴は、依織がそこにいたことにも十分驚いたが、もっと驚いたのは、その口元に血が滲んでいたこと。
眩いネオンの下、よく見れば依織の口の端は切れているし、頬もうっすら腫れている。
「あ…これ? ちょっとね。大丈夫、大したことないから」
「何で! 血出てんじゃん! 病院!? あ、警察!? さっき一緒にいた男にやられたんだろ!?」
「アッキー大丈夫! ホント大丈夫! 平気! 何ともないよ!」
その傷と腫れは、どう見たって殴られたに決まっている。
何があったかは知らないし、大したことがないと依織が言ったって、ケガをしたのは間違いないのだ。憤りで声を荒げる瑛貴に、しかし依織は、平気だからと繰り返す。
「だって殴られたんだろ? そんなのっ」
「そうだけど、もう平気だから…。警察なんて、俺が行きたくない」
「でも手当て…病院…」
いくら依織が平気だと言ったところで、このままにはしておけない。
病院に行くほどのケガはしていないのだとしても、傷の手当てくらいしなければ。
back next
とりあえず誰にも怒られなかったから、開店時間には間に合ったのだろう。
依織のことは、よく知らない。
まだ2回しかちゃんと会ったことはないし、その素性を詳しく語り合ったこともないから。
ただ分かるのは、依織には男の恋人がいて、でも浮気をしているかもしれなくて、真相を聞こうか迷っているうち、ばったりと出くわした依織の隣には、また別の男がいたということ。
しかもそれを見られた依織は、なぜか気まずそうな顔をしていた。
瑛貴がこの街で働いているのは知っているのだから、会う可能性があることくらい分かっていていいはずなのに。
浮気現場を見られたとでも思ったのだろうか。
確かに瑛貴は、依織が他の男とあんなふうに歩いているところ見たことはあるが、そのことを依織は知らないのだから、何食わぬ顔をしていればバレないと思わなかったのだろうか。
それともまさか、恋人が男だと知られたから?
しかし、この界隈にはゲイもビアンも、七槻のような両性愛の人も大勢いて、そんなことをいちいち気にするような人間なんていない。
(でも依織、この辺じゃあんま遊ばないって言ってたしな…)
瑛貴だって、この辺りの事情にそんなに詳しいわけではないが、もしかしたら依織はもっとそういうことが分からなくて、瑛貴に見られたのが気まずかったのかもしれない。
いやしかし、それなら瑛貴がいると分かっていて、わざわざこの街に来る必要もないのに。
(あー分かんね)
淡々と仕事をこなし、閉店時間になって、いつもどおり後片付けをした瑛貴は、終電に間に合うように店を出た。
優輝には、「今夜なら空いてるけど、遊ばね?」と誘われたが、とてもそんな気分にはならなくて断った。
「…アッキー」
店を出て駅に向かおうとした瑛貴に、背後から声が掛かる。
喧噪の中、聞き覚えのある声にハッとして振り返れば、そこには依織が1人で立っていた。
「依織!」
「えへへ、アッキーの顔見たくて……来ちゃった」
「来ちゃったはいいけど…おま、それ、どうしたんだよ!」
瑛貴は、依織がそこにいたことにも十分驚いたが、もっと驚いたのは、その口元に血が滲んでいたこと。
眩いネオンの下、よく見れば依織の口の端は切れているし、頬もうっすら腫れている。
「あ…これ? ちょっとね。大丈夫、大したことないから」
「何で! 血出てんじゃん! 病院!? あ、警察!? さっき一緒にいた男にやられたんだろ!?」
「アッキー大丈夫! ホント大丈夫! 平気! 何ともないよ!」
その傷と腫れは、どう見たって殴られたに決まっている。
何があったかは知らないし、大したことがないと依織が言ったって、ケガをしたのは間違いないのだ。憤りで声を荒げる瑛貴に、しかし依織は、平気だからと繰り返す。
「だって殴られたんだろ? そんなのっ」
「そうだけど、もう平気だから…。警察なんて、俺が行きたくない」
「でも手当て…病院…」
いくら依織が平気だと言ったところで、このままにはしておけない。
病院に行くほどのケガはしていないのだとしても、傷の手当てくらいしなければ。
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COMMENT-FORM
柚子季杏 ⇒
イオリン、愛を求めているのですね~切ない…。
お話がどう動いて行くのか、ドキドキです~。
男、としてではなく、女になりたいイオリン。
でも、女になりたいのは優しくされたいから、なのですよねぇ~。
うーん、その辺りに、今後のカギが隠されてるかな?
お話がどう動いて行くのか、ドキドキです~。
男、としてではなく、女になりたいイオリン。
でも、女になりたいのは優しくされたいから、なのですよねぇ~。
うーん、その辺りに、今後のカギが隠されてるかな?
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
多分、いわゆる「普通」に暮らしてる人には、イオリンの気持ち、なかなか分からないと思います。
ましてや、スーパー鈍感なアッキーじゃ…(笑)
寂しくて、1人じゃいたくないけど、誰かにそばにいてもらうには、女の子じゃないと無理…て勝手に思い込んでるイオリン。
果たしてアッキー、それに気付けるんでしょうか。。。
コメントありがとうございました!
ましてや、スーパー鈍感なアッキーじゃ…(笑)
寂しくて、1人じゃいたくないけど、誰かにそばにいてもらうには、女の子じゃないと無理…て勝手に思い込んでるイオリン。
果たしてアッキー、それに気付けるんでしょうか。。。
コメントありがとうございました!
- |2010.08.31
- |Tue
- |20:08
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