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恋は七転び八起き (57)
2015.10.31 Sat
「え、槇村く、それっ…」
「いいから」
「でもっ」
「お前は何も気にしなくていい」
央のズボンの汚れを落とせば、その分、槇村のハンカチが汚れる。央はそれを気にしたのだろうが、構ってはいられなかった。ペーパーを濡らすという手もあったが、このほうが手っ取り早い。
何度かハンカチを濯いでズボンを拭き取ると、汚れはあらかた取れて、一見しただけでは分からないくらいにはなった。
「一応は落ちたけど…、後でクリーニング出せよ?」
「…ありがとう、槇村くん」
央はぐったりと、ふたを閉めたトイレに腰を下ろしている。
汚れたハンカチを捨てた槇村は、はて、これからどうしたものかと考える。央の家の場所は知らないが、ここが降りる駅でないことは確かだ。央が帰るためには、また電車に乗らなければならないが、さすがに1人で帰すことは出来ない。
「央、立てるか? 送ってやるから、もう帰るか」
「…いらない」
「え?」
「別に送るとか、いらないし」
先ほどは泣いて縋って来た央だったが、落ち着いて、我に返ったのだろう。槇村から顔を背けた。
槇村は居た堪れない気持ちになったけれど、そうされても仕方のないことをしたのだから、何も言えない。とにかく今は、央に嫌われようが、罵られようが、央を無事に家まで送り届けねば。
「なら、兄ちゃんに連絡するか?」
「いらない、てば!」
「でも、1人で帰すの、心配だし」
槇村ともう一緒にいたくないと言うのならば、誰か他に央のことを送ってくれる人を呼ぶ必要があるが、いきなり親を呼ぶよりも、兄の純平のほうがいいだろうと思い付いたのに、央からはまたも拒否された。
「…………優しくしないでよ。槇村くんに優しくされると、ツラい…」
続いた央の涙交じりの言葉の意味が分かって、槇村は何も返せなくなる。胸が苦しい。
「…ゴメン、央」
央の震える肩を見つめながら、槇村は謝罪の言葉を口にした。
それは、今し方の央の言葉に対してなのか、先週央に取った態度に対してなのか、槇村自身もよく分からなかった。しかし、どちらにせよ、槇村が央のことを苦しませているのかと思ったら、謝るしかなかった。あんなに思い悩んでいたのに、言葉は意外と簡単に出て来た。
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「いいから」
「でもっ」
「お前は何も気にしなくていい」
央のズボンの汚れを落とせば、その分、槇村のハンカチが汚れる。央はそれを気にしたのだろうが、構ってはいられなかった。ペーパーを濡らすという手もあったが、このほうが手っ取り早い。
何度かハンカチを濯いでズボンを拭き取ると、汚れはあらかた取れて、一見しただけでは分からないくらいにはなった。
「一応は落ちたけど…、後でクリーニング出せよ?」
「…ありがとう、槇村くん」
央はぐったりと、ふたを閉めたトイレに腰を下ろしている。
汚れたハンカチを捨てた槇村は、はて、これからどうしたものかと考える。央の家の場所は知らないが、ここが降りる駅でないことは確かだ。央が帰るためには、また電車に乗らなければならないが、さすがに1人で帰すことは出来ない。
「央、立てるか? 送ってやるから、もう帰るか」
「…いらない」
「え?」
「別に送るとか、いらないし」
先ほどは泣いて縋って来た央だったが、落ち着いて、我に返ったのだろう。槇村から顔を背けた。
槇村は居た堪れない気持ちになったけれど、そうされても仕方のないことをしたのだから、何も言えない。とにかく今は、央に嫌われようが、罵られようが、央を無事に家まで送り届けねば。
「なら、兄ちゃんに連絡するか?」
「いらない、てば!」
「でも、1人で帰すの、心配だし」
槇村ともう一緒にいたくないと言うのならば、誰か他に央のことを送ってくれる人を呼ぶ必要があるが、いきなり親を呼ぶよりも、兄の純平のほうがいいだろうと思い付いたのに、央からはまたも拒否された。
「…………優しくしないでよ。槇村くんに優しくされると、ツラい…」
続いた央の涙交じりの言葉の意味が分かって、槇村は何も返せなくなる。胸が苦しい。
「…ゴメン、央」
央の震える肩を見つめながら、槇村は謝罪の言葉を口にした。
それは、今し方の央の言葉に対してなのか、先週央に取った態度に対してなのか、槇村自身もよく分からなかった。しかし、どちらにせよ、槇村が央のことを苦しませているのかと思ったら、謝るしかなかった。あんなに思い悩んでいたのに、言葉は意外と簡単に出て来た。
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