恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。)

CATEGORY

  • このページのトップへ

スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

カテゴリー:スポンサー広告

映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (10)


『あー…えっと、さっき家の電話からこのケータイに電話した? このケータイの持ち主さん?』
「あの…もしかして、昨日ぶつかっちゃった人……ですか?」
『そうそう!』

 遥希が恐る恐る尋ねれば、相手の声が明るくなる。
 やはり掛けて来たのは、昨日遥希がぶつかった人で、向こうも遥希のことを覚えていてくれたらしい。

『ねぇ、もしかして俺のケータイ持ってる?』
「たぶんそうだと思うんですけど…」
『D社のヤツで、黒の』
「そうです」
『それだ!』

 携帯電話の特徴を話すと、相手は間違いない! と声を大きくする。
 逆に遥希は、携帯電話の所在が分かって、ホッとしてしまって、力が抜けてしまった。

「やっぱ、あのぶつかったとき、ケータイ、間違えて持ってちゃったんですよね、俺たち…」
『たぶん。今朝、とんでもない時間にアラーム鳴って、超ビビったし! しかも曲がFATEのだった!』
「あっ」

 遥希がこの人の携帯電話の着信音が分かったということは、相手にも遥希のそういった設定が分かるということだ。
 遥希は、学校の始まる時間に限らず、携帯電話のアラームはいつも朝の7時くらいにセットしているから(今日みたいに起きなくてもいいやーの日は、停止させて2度寝するのだ)、アラームはもちろんのこと、電話の着信音も、みんな聞かれてしまっている。

(ぎゃっ、恥ずかしい!)

 穴があったら入りたい……とはよく言ったもので、遥希は俄かに頬が熱くなるのを感じた。
 しかし電話の相手は、着信音をFATEの曲に設定していることについて、バカにしたふうでもなくて、遥希は少しホッとした。

『とにかく早く交換しちゃわないとだよね。これからとか、時間大丈夫?』
「え、あ、はぁ…」

 本当は学校があったのだけれど、それどころではなくて、遥希はそのまま、彼と会う約束を取り付けた。



back    next

カテゴリー:映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。)

映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (11)


 遥希は、昨日の路地のところまで来て、急に不安になった。
 電話の相手の言葉を簡単に信用して、ホイホイ出てきてしまったが、本当に大丈夫なのだろうか。相手の人が、実はすごい悪い人だったらどうしよう…。

 それにしても、待ち合わせた時間より少し早く着いた路地は、昼間の今だって誰もいなくて、人通りの少ない寂しい場所だ。
 よく夜中、あんな時間に通ろうとしたものだと、遥希は自分自身に呆れてしまった。

「――――あの」
「はいっ!?」

 遥希が、どうしようどうしよう…と戸惑っていたら、急に背後から声を掛けられて、ビックリして振り返ったが、そこにいたのは、遥希の知らない人だった。
 周囲には他に人がいないから、この人は遥希に声を掛けたのだろうが、……でも知らない。

「えっと、携帯電話…」
「え…?」

 まだ困惑気味の遥希に、相手も少し戸惑いながら話し掛けてくる。
 この場所で、『携帯電話』というキーワードを持ち出すのは、恐らく昨日ぶつかった人に違いなくて、今遥希が持っている携帯電話の持ち主……のはず。
 遥希よりいくつか年上のように見えるこの人は、人当たりのよさそうな雰囲気を纏ってはいるが、しかし、昨日の人とは何かが違う気がする。

(だって、琉にも全然似てないし!)

 ただぶつかって、落とした荷物を拾ってくれただけの人なら、遥希だってそんなに詳しく覚えていないだろうけど、何しろ昨日ぶつかったのは、テンションが上がり過ぎて寝付けなくなるくらい、FATEの琉に似ている人だったのだ。
 だから、断言できる。
 この人は、昨日ぶつかった人じゃない。

「これ、あなたのですよね?」

 しかし遥希のそんな疑惑など気付くはずもなく、相手は遥希の携帯電話……と同じ機種、同じ色の携帯電話を差し出した。
 それこそ、中を確認するまで分からない――――能天気なくせに、妙なところで慎重な遥希は、すぐにはその携帯電話を受け取らなかった。

「えっと……誰、ですか?」
「あ、すみません。あなたの携帯電話を間違えて持っていった者の代理で来たんです」
「代理…」

 何か胡散臭い……とは、いくら遥希でも、面と向かって本人には言わないけれど、何となく怪しい。
 携帯電話を、本人以外の人に返すのも気が引けるし。



back    next

カテゴリー:映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。)

映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (12)


「あの、あなたが持ってきた携帯電話は?」
「あります、けど……でも、本人以外に返すって、何か……いいんですか? 何か勝手に違う人に渡しちゃうのって…」
「そうですけど、本人は今ここに来れないんで」

 そう言われても、遥希は何だか納得できない。
 意地を張りたいわけではないけれど、本当にいいのか心配。
 何なら警察にでも届けて、そこに取りに行ってもらったほうがいいような気がする。それなら確実に本人確認もするだろうし。

「ホラ南條、やっぱ俺が行くって言ったじゃん」

 遥希が考えあぐねていると、通りのほうから人影が近付いてくる。
 その声には、聞き覚えがあった。

「コラ水落! 出てくるなって…!」

 代理だという人が、慌て出す。
 声を掛けながらこちらにやって来たのは、まさに昨日の、琉似のイケメン。今日はサングラスをしていないから、一段と琉に似ている。

「昨日の人!」
「これ、だよね? ケータイ」

 イケメンくんが、『南條』と呼んだ人から携帯電話を受け取って、中を開いて見せてくれた。
 確認したら、それは間違いなく遥希のものだったので、遥希も持って来た携帯電話を差し出した。

「今朝、ケータイ違うって気が付いて、南條のから何回か電話したんだけど、全然出てくれなかったから」
「南條…」

 そういえばそれは、朝、遥希の手元にあった携帯電話に表示されていた、着信の名前だ。
 代理と言って最初に来た人を『南條』と呼んでいたから、彼が南條さんなのだろう。

「…すいません。何かそのとき、まだ電話が違うって気付いてなくて。何か知らない番号だし、よく分かんなくて出なかったんです。すいません…」
「いや、それは俺も一緒。だって見た目一緒だから、分かんないよね。まさか入れ替わってるなんて思わないし」
「はい」
「で、どうしよーって思ってたら、ケータイ鳴って、『家』て表示されてるから、もしかしてこのケータイの持ち主!? て思って掛け直してみたの」
「あ…」

 遥希は基本的にフルネームでアドレス帳を登録しているけれど、自分の家の電話番号だけは、『家』と入れている。
 別に意味はなかったのだけれど、今回はそれに救われた。



back    next

カテゴリー:映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。)

映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (13)


「俺も、家の電話に自分のケータイの番号が表示されたんで、もしかしてって思って出たんです。何回か掛けたけど出なかったから、警察に持ってこうと思ったんですけど…」
「そうなんだ! よかったー、超いいタイミングじゃん!」
「はい」

 遥希の話に、パァッと顔を明るくさせて笑った顔は、まさに琉そっくり。
 ここまで似ていると、本気で間違われるんじゃないだろうか。

「ん? どうした?」
「わっ! いや、あの!」

 うわ~琉に似てるー、と遥希が呆けていたら、琉そっくりの顔が覗き込んできた。
 いくら偽者とはいえ、ここまで似ていたらドキッとしてしまう…。

「え、だいじょう…」
「あの、FATEの水落琉に似てるって言われませんか!?」

「……………………」
「……………………」

 ………………。

 遥希的には、結構勇気を振り絞って言ったのに、イケメンくんも、南條さんも、ポカンとしたまま固まっている。
 もしかして2人とも、琉のことを知らなかった? それとも、遥希が1人で興奮気味だから、引いてしまったのだろうか。

「あ、えっと…」
「……プ…」
「え?」
「ぶははははっ!!!!!」
「えぇ!?」

 ポカンとしていたイケメンくんが、なぜか突然吹き出したと思ったら、ものすごい大笑いを始めた。
 南條さんのほうは、必死に笑いを堪えている様子。

「え…えと…」
「うはは、俺、そんなに似てる?」
「は、はぁ…」
「そっかー似てるかー」

 目に涙を浮かべるほど大笑いされて、今度は遥希がポカンとする番だ。
 そこまで笑われるほどのことを言っただろうか。

「あははは、似てる…似てるよな、そりゃ」
「え?」
「だって俺、本人だし」



back    next

カテゴリー:映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。)

映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (14)


 ………………。

 ?????

「……………………。えぇーーーーー!!!???」

 琉(のそっくりさん……だと思う)の言葉が、脳の隅々まで行き渡って、遥希はとんでもない声を張り上げた。
 だってそんな、芸能人なんて、ましてやFATEみたいなスーパーアイドルなんて、そう簡単に会えるものではない。そんなの、マンガかドラマの中だけの話だ!!

「そんな……嘘…」
「ホントだって。あっはっはっ。何なら免許証でも見る? そっくりさんにケータイ返したんじゃマズイしね」

 当たり前だが簡単に信用しない遥希に、琉はわざわざ免許証を出して見せてくれた。
 そこには、免許証の証明写真だというのに、全然いまいちな感じでなく、グラビアと同じくらいカッコよく映った琉がいて、氏名の欄には『水落琉』という文字。

「ほっ…」
「ん?」
「本物ーーーー!!!??」

 こればかりは、遥希だって信用しないわけにはいかない。
 遥希の今目の前にいる、昨日ぶつかって、間違えて携帯電話を持っていってしまった相手は、水落琉。遥希がずっとずっとファンで、好きで堪らなかった人。

「いや、何か変だなーとは思ってたんだけど」

 め、目の前で琉が喋ってる…。
 そっくりさんじゃなくて、本物の琉が動いてる…。

「着信音とか俺らの曲にしてるくらいだからFATEのこと知ってんだろうなって思ってたのに、そのわりには反応薄いし、…あ、もしかして大和のファン? だから、俺にはあんまり興味なかった?」
「ちちちち違います! りゅ…水落さんの超ファンですっ!」

 もちろんFATEのもう1人のメンバー、一ノ瀬大和のことも好きだが、遥希は大の琉ファンなのだ。
 そこのところを本人に誤解されたら困る! と遥希が力説すれば、琉はまた笑い出した。

(琉だー、本物の琉だー! あぁ、嬉しすぎて死んじゃいそう…)

 FATEのコンサートにはよく行くけれど、遥希が取れた席の中で一番よかったものでも、そこそこの距離はあって、目の前でタッチまでしてもらえている女の子を、何度羨ましいと思ったことか。
 それが今、ほんの1mという近さで笑っているのだ、気が遠くなりそうなくらい嬉しい。



back    next

カテゴリー:映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。)

recent entry

recent comments

thank you for coming

category

monthly archive

2037年 01月 【1件】
2017年 01月 【1件】
2016年 11月 【13件】
2016年 10月 【15件】
2016年 09月 【1件】
2016年 08月 【3件】
2016年 07月 【17件】
2016年 06月 【12件】
2016年 05月 【13件】
2016年 04月 【14件】
2016年 03月 【12件】
2016年 02月 【18件】
2016年 01月 【28件】
2015年 12月 【30件】
2015年 11月 【28件】
2015年 10月 【31件】
2015年 09月 【27件】
2015年 08月 【2件】
2015年 07月 【1件】
2015年 06月 【24件】
2015年 05月 【31件】
2015年 04月 【31件】
2015年 03月 【31件】
2015年 02月 【22件】
2015年 01月 【31件】
2014年 12月 【30件】
2014年 11月 【30件】
2014年 10月 【29件】
2014年 09月 【22件】
2014年 08月 【31件】
2014年 07月 【31件】
2014年 06月 【30件】
2014年 05月 【31件】
2014年 04月 【30件】
2014年 03月 【31件】
2014年 02月 【28件】
2014年 01月 【30件】
2013年 12月 【14件】
2013年 11月 【30件】
2013年 10月 【31件】
2013年 09月 【30件】
2013年 08月 【31件】
2013年 07月 【31件】
2013年 06月 【30件】
2013年 05月 【31件】
2013年 04月 【31件】
2013年 03月 【32件】
2013年 02月 【28件】
2013年 01月 【31件】
2012年 12月 【31件】
2012年 11月 【30件】
2012年 10月 【31件】
2012年 09月 【30件】
2012年 08月 【31件】
2012年 07月 【31件】
2012年 06月 【30件】
2012年 05月 【32件】
2012年 04月 【30件】
2012年 03月 【29件】
2012年 02月 【29件】
2012年 01月 【33件】
2011年 12月 【35件】
2011年 11月 【30件】
2011年 10月 【31件】
2011年 09月 【31件】
2011年 08月 【31件】
2011年 07月 【31件】
2011年 06月 【31件】
2011年 05月 【34件】
2011年 04月 【30件】
2011年 03月 【31件】
2011年 02月 【28件】
2011年 01月 【31件】
2010年 12月 【31件】
2010年 11月 【30件】
2010年 10月 【31件】
2010年 09月 【30件】
2010年 08月 【32件】
2010年 07月 【31件】
2010年 06月 【31件】
2010年 05月 【32件】
2010年 04月 【30件】
2010年 03月 【31件】
2010年 02月 【28件】
2010年 01月 【32件】
2009年 12月 【32件】
2009年 11月 【31件】
2009年 10月 【34件】
2009年 09月 【32件】
2009年 08月 【31件】
2009年 07月 【34件】
2009年 06月 【30件】
2009年 05月 【32件】
2009年 04月 【31件】
2009年 03月 【32件】
2009年 02月 【28件】
2009年 01月 【32件】
2008年 12月 【40件】
2008年 11月 【38件】
2008年 10月 【37件】
2008年 09月 【32件】
2008年 08月 【33件】
2008年 07月 【32件】
2008年 06月 【31件】
2008年 05月 【33件】
2008年 04月 【31件】
2008年 03月 【32件】
2008年 02月 【29件】
2008年 01月 【35件】

ranking

sister companies

明日 お題配布
さよならドロシー 1000のだいすき。
東京の坂道 東京の坂道ほか
無垢で無知 言葉の倉庫

music & books