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ろくな愛をしらない 14
2008.02.07 Thu
【久住慶太】
「慶太、帰り、ちょっと本屋寄ってかね? 買いたいのあんだ」
「あぁ、いいけど」
他愛もない会話をしながら歩と教室を出た瞬間、俺は思わず足を止め、そして息も止めた。
「相川さん…」
教室学生会室を出てすぐのそこに立っていたのは、今1番会いたくて………会いたくない人。
足を止めてしまった俺に、隣の歩が視線を向けたのが分かった。
「歩、悪ぃけど、ちょっとこいつ借りてくから」
「へ? あ? う、うん」
は? とか思ってる間に相川さんに手首をガシッと掴まれて、引っ張られる俺。慌てて振り返れば歩が呆然としたまま突っ立ってて。
おい、ちょっとは何とかしろって! バカー!!
「ちょっ、相川さんっ」
慌てる俺をよそに、相川さんはぐんぐん進んでくし。手首は掴まれたままだし。通り過ぎてく人にはめちゃくちゃ見られてるし。
「あの、手、離し…」
「ヤダ」
「だって、」
「離したら逃げるだろ、お前」
ギュッて、手首を掴む力が、少し強くなった。
ヤバイ……今さらなのに、ドキドキしてる。
「逃げな…逃げないんで離してください…!」
人目が気になるのと、それからこのどうしようもないドキドキ…!
相川さんの表情からは何も読み取れない。怒ってるようにも見えるし、単なる無表情なだけにも見える。少なくとも機嫌がいいようには思えないんだけど。
でも俺、あれ以来、相川さんには会ってないし、何もしてない。
「相川さん!」
外に出たところで、ようやく手首を離してもらって。
「何…どうしたんですか、急に。授業は?」
沈黙が怖くて、俺は視線を落としたまま、相川さんに問い掛ける。
どこ向かってんだろう。
逃げ出したいけど、ここで逃げたら、後が怖い気がする。
「あの…」
「はい」
「え?」
渡されたのは、ヘルメット。
駐輪場で、相川さんは無表情のまま、バイクにキーを差してる。
もしかして、後ろに乗れって? 悪いけど俺、バイクの2人乗りとか、したことないんですが…!
「乗って?」
「……、」
でもとてもそんなこと言い出せる雰囲気じゃなくて。
手の中のヘルメットと、相川さんを交互に見る。
「乗れよ」
「でも…」
また、沈黙。
次の授業が始まったのか、駐輪場には俺ら以外、誰もいなくて。
「……お前、倒れたんだって?」
俺がバイクに乗る気がないって分かったのか、相川さんは俺の手からヘルメットを取り戻した。
「倒れたなんて、大げさですよ。ちょっと貧血っぽくなっただけで」
「俺のせいだろ?」
「……どうして、」
「違うの?」
何て答えたらいいのか分からない。
アンタのせいだって言ったら、何かが変わるの? バカバカしいよ、そんなことない。
「もう平気なんで、気にしないでください」
そう答えるのが精いっぱいだった。
ちらりと様子を窺えば、相川さんはちょっと眉を寄せて、「あ、そう」とだけ言った。
もう少し、ちゃんと答えればよかったかな。
せっかく心配してくれたのに。
これでまたさらに、嫌われちゃうのかな、てちょっと自己嫌悪に陥ってたら。
「うわっ!?」
いきなり頭に衝撃。
「なっ…!?」
慌てて頭を触れば、固い感触。
相川さんが持ってたヘルメットがない。
てことは、今の衝撃は、俺の頭にそのヘルメットを被せたってことで。
「乗れ」
「え、ちょっ…」
「もう具合悪いんじゃねぇなら、乗れよ」
「…」
もうこれ以上は逆らえない気がして、俺は恐る恐る、相川さんのバイクの後ろに跨った。
「ちゃんと掴まってろよ?」
「え? ど、どこに?」
「……お前、乗ったことねぇの?」
「後ろには…」
正直に打ち明ければ、相川さんは溜め息をついてから、俺の右手を取って、自分の腹のほうに回した。
「そっちの手も!」
グズグズしてたら左手も引っ張られて、前に回させられる。ちょうど、背後からしっかりと抱き付いてる格好で。
しょ、しょうがないんだよね? バイクに2人乗りするときは、こうしなきゃなんだよね?
よく分かんないけど、アップアップな俺は、言われるがままで。
何かこんなのヤダなってちょっと思ったけど、バイクが走り出した瞬間、振り落とされるんじゃないかって、慌ててちゃんとしがみ付いた。
「あの…」
赤信号で止まったのをいいことに、俺は、前の相川さんに声を掛けた。
「どこに向かってるんですか? 俺んちこっちじゃないんですけど」
「そりゃそうだ。俺、お前んちなんて知らねぇもん」
「え、ちょっ…どこ行く気なんですか!?」
「さぁ。どこ行きたい?」
飄々とそんなことを言ってのける相川さん。
思わず絶句。
何の考えもなしに、俺をバイクに乗せたわけ?
「なぁ、どこ行きたいんだよ」
「…………家」
どこに行きたい? なんて言われて、これで女の子だったら、「海!」とか、「じゃあ、相川さんち!」なんてかわいくおねだりするところだろうけど、生憎と俺はそんなキャラじゃないわけで。
そしたら相川さんに、「つまんねぇヤツだな」って、あっさり突っ込まれて。
「すいませんね、気の利いたことが言えなくて。どうせつまんない男ですよ」
「ふはっ、いや、十分おもしろいよ、お前」
何が相川さんのツボなのか知らないけど、さもおもしろげに相川さんは笑い出す。俺としては、ひがみも半分、言い返しただけなのに。
「相川さん、」
「ん?」
「わっ…!? いいです、後でいいです、止まってからでいいですっ…!!」
信号が青に変わって、バイクが走り出して。
とてもじゃないけど、そんな状態で俺は話し掛けるなんてこと出来なくて。
どこに行くつもりか知らないけれど、もうどこでもいいから、とにかくバイクが止まってくれることだけを、ひたすらに願う。
しばらく走って、俺は怖くてずっと目を閉じてたから、一体ここがどこなのか分からないけど、バイクが止まった気配に目を開けたら、河川敷の側だった。
土手から見下ろせるグラウンドで、小学生が野球の練習をしてる。
「……ここ、」
「降りて?」
「…」
言われるがまま、俺はバイクを降りて、ヘルメットを相川さんに返す。
犬を散歩させてるじいさんが遠くに見えるだけで、他には誰もいない土手。その中ほどのところに相川さんが座ったので、仕方なく俺も隣に座る。
ここは自分の行動の範囲外で、勝手に帰ろうと思っても、帰り方も分かんないから。
「相川さん」
「ん?」
「何で今さら俺なんか構うんですか?」
「今さらって何だよ」
「だって俺、あんなこと言い捨てて…」
あの日。
ひどい言葉を吐き捨てて、相川さんの前から逃げ出した。
もう絶対相手になんかされないと思ったのに、今日こうしてまた、相川さんと2人になってるなんて。
「あぁー、あれはマジ効いたわ。あんなこと言われたことねぇし」
「俺だってないですよ、言われたことなんて」
「お前はそういうのなさそうだもんな。真面目そうだし」
「別に、」
確かに、女の子のほうから相川さんを手放すようなマネなんて、しそうもないもんな。
もしかして、あんなにこっぴどく相川さんを振ったのって、俺が初めて? はは……それも何かいいな。
「なぁー久住ー」
「……何ですか?」
「俺のこと嫌いになんないでー」
「はっ!?」
今までに聞いたことのないような、情けない声の相川さんに、ビックリして振り向けば、相川さんはその場に寝そべっていた。
「どっ……どうし、え? は?」
アワアワしてる俺に、寝転んだままの相川さんが、また吹き出してる。
「お前、ホント、いっつもいい反応するよな」
「だって!」
それはいつも相川さんが、突拍子もないことばっかり言ってくるから。
いつも振り回されて。
なのに、今日は。
「何か、だって……いつもの相川さんらしくない。だって俺の前じゃ、いつだって自信たっぷりな感じだったし」
「でも、お前の前じゃダメなんだよな。お前にあんなこと言われてさ、いつもだったら他のヤツ探して楽しめば、そうすりゃ全部忘れんのに…」
相川さんは渋い顔をしてタバコに手を伸ばす。でも俺のほうをチラッと見てから、それを元に戻して。俺がまだタバコを吸えない年齢だから、気を遣ってくれたのかもしれない。
「今さら遅いかもしんないけど……言ってもいい?」
「え、」
また、高鳴り出す、俺の心臓。
ヤダ……もうこの感覚。
でも、相川さんの次の言葉を待ってる自分がいて。
「俺、お前のこと、好きだったのかも」
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COMMENT-FORM
イチゴ ⇒ KITAーー!!
きゃああ!
今回、相川さんが可愛く見えますよ!?大丈夫か相川さん!?
しかも、「俺、お前のこと、好きだったのかも」
って、過去形なのかよっ
「俺のこと嫌いになんないでー」でキましたね、相川さん…
心を鷲掴まれました!!
慶太くん同様きゅんきゅんしました。
むにゃーー!(合言葉のように)
今回、相川さんが可愛く見えますよ!?大丈夫か相川さん!?
しかも、「俺、お前のこと、好きだったのかも」
って、過去形なのかよっ
「俺のこと嫌いになんないでー」でキましたね、相川さん…
心を鷲掴まれました!!
慶太くん同様きゅんきゅんしました。
むにゃーー!(合言葉のように)
- |2008.02.07
- |Thu
- |20:24
- |URL
- |EDIT|
如月久美子 ⇒ >イチゴさん
相川さん、今までは女の子のほうから言い寄られるのが常だったんで、愛されるのには慣れてても、その逆には不慣れな男なんです。
不器用なんです (爆)
当初の悪い男から、すっかり恋する乙女ですよ。
もうすぐ大詰めです。
むにゃーーーー!
不器用なんです (爆)
当初の悪い男から、すっかり恋する乙女ですよ。
もうすぐ大詰めです。
むにゃーーーー!