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ろくな愛をしらない 12
2008.02.05 Tue
爆弾は、時として、唐突に落とされる―――例えば、真琴から。
月に1度の定例会が始まる前の学生会室。
俺は音楽の雑誌を広げて、春原さんは、ペットボトルのお茶をコップに注いでるところだった。
そこに元気よくやって来た真琴が俺の側に来て、俺と雑誌の間に顔を覗かせる。邪魔だよ、と、目で訴えようとした、まさにその瞬間だった。
「そういえば智紀さん、最近、慶太のこと誘わないね」
まさに爆弾。
俺はそのまま椅子から転がり落ち、春原さんは手元が狂ったのか、傾け過ぎたペットボトルから大量にお茶を零してる。
「あぁ! 拓海! お茶、お茶!!」
どうやら真琴は、俺が椅子から落ちたことよりも、春原さんの足元に広がるお茶の水たまりのほうが危険と判断したのか、慌ててそっちに駆け寄っていった。
「あ、ありがと…」
真琴は、傾けたままのペットボトルを春原さんの手から奪い取ってテーブルの上に置くと、ご丁寧にも、残り少ないペットボトルのキャップまで閉めてやる。
「ちょっと雑巾取ってくる! この量、ティッシュじゃ拭き切れないし」
そう言って学生会室を出ていこうとする真琴の腕を、春原さんが掴んだ。
「何、拓海」
「あの、真琴、あの…」
「???」
キョトンと小首を傾げてる真琴、さっきの言葉に他意はないのだろう。
春原さんの手が力なく真琴から離れて、真琴は雑巾を取りに学生会室を出ていった。
「春原さんも、何か知ってるんですか? てか、知ってるんですよね?」
知らなきゃ、真琴の言葉にここまで反応するわけがない。
いつもは冷静な春原さんも、真琴のこの不意打ち爆弾には敵わなかったようだ。
「知ってるっていうか…」
真琴に雑巾を取りに行かせたきりじゃ申し訳ないと思ったのか、春原さんは、ティッシュを数枚引き抜いて、零れたお茶の上に被せた。
真琴の言葉じゃないけど、そんな数枚のティッシュで全部拭けるような量でもなくて、かといってそれ以上ティッシュで拭くつもりもないのか、お茶の水たまりの上に数枚のティッシュが浸っている状態。
いいのかなぁ…。
「話してください」
口籠ってる春原さんに、先を促す。
「何かトモ、ずっと慶太のことお気に入りみたいだったのに、それこそ真琴じゃないけど、最近あんまり誘わなくなったなぁって思って」
「それだけ、ですか?」
それだけで、この反応?
そんなわけない。
いくら俺が単純だからって、そんなことでごまかされない。
「相川さん、何か言ってました?」
「何かって…」
「別に傷付いたりしないんで、言ってください。俺にはもう飽きたって?」
「……飽きた、とは言わなかった、けど…」
再び口を閉ざす春原さんに、「だったら何?」と問おうとしたところで、雑巾を取りに行っていた真琴が戻って来た。
「あー、何このティッシュ! 拓海?」
「え? あ、うん…」
零れたお茶の中に、ビチョビチョになったティッシュが落ちていて、これから雑巾でそこを拭くには、少し邪魔な状態。真琴は困ったように春原を見てから、そこに屈んだ。
「あぁいいよ、真琴! 俺がやるし! 俺が零したんだから!」
……でも、春原さんがお茶を零す原因を作ったのは、真琴だけどね。
全部お茶を拭き取って、濡れた床を最終的にティッシュでキレイにしたところで、真琴は雑巾をしまいに学生会室を出ていく。
また2人きりになった空間で、春原さんはゆっくりと俺のほうを見た。
「トモに用があるなら、連絡しようか?」
「俺が? どうして?」
「あ、いや、」
「どうして俺が…」
また相川さんと会って、一体どうするっていうの?
この想いを伝えろとでも?
「慶太?」
「俺はっ…!」
勢いに任せて、椅子から立ち上がる。
俺って、こんな感情的な奴だったっけ?
「慶太、」
あれ…?
ぐにゃり。
視界が歪む。
「慶太? どうした?」
何度瞬きしても、ぼやけた視界は戻らなくて、目を閉じる。
嫌な汗が滲む。
聴覚が遠退く。
足の力が抜けて、椅子に座ろうとしたけどうまくいかず、テーブルの端を掴んだまま、床に膝を突く。
「慶太、ちょっ……座って!」
春原さんの手なんか借りたくないよ。
でも俺はされるがまま、元いた椅子に座らされて。
深呼吸を繰り返す。
「ちょっと横になる?」
「へ…き…」
でもダメだ。
元に戻んない。
遠くで、誰かが学生会室に戻って来た音がする。真琴かな? それとも他の誰かかな?
「どうしたの、2人とも」
この声は歩だ。
目を閉じてぐったりしてる俺と、その脈を取ってくれてる春原さん。
入って来ていきなりこんな光景を見たら、確かに何かと思うよね。
「ちょっと横になったほうがいいんじゃない?」
よっぽど俺の顔色、悪いのかな? 歩の提案で、ソファに横になる。
ヤバイ……完全に頭から血の気が引いてる感じ。脳貧血って……女の子じゃあるまいし。
もうヤダよ。
こんな自分も、何もかも…。
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