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もうさようならの時間 (19)
2011.06.11 Sat
「亮、何してんの?」
「バイト終わったからさ、待ってた、むっちゃんのこと」
睦月は涙を拭わないまま、亮のほうに歩み寄った。
ずっと走っていたせいで、睦月の髪はもうボサボサになっていて、亮はその頭を撫でて直してあげる。それから、濡れている睦月の頬を、そっと拭ってやった。
「部屋、戻ろっか」
「ん」
亮は睦月の、何も持っていないほうの手を取って繋いだ。
今日は晴れたし、もう暖かいと言える時期なのに、日が傾きかけた時間帯、ずっと走ってきたせいか、睦月の手は冷たくて、それが何だか切ない。
「むっちゃん、ちゃんと歩いてよ」
「んー」
素直に手を繋がれている睦月は、しかし階段を1つ飛ばしで上がったり、時々立ち止まったり、変なふうに歩くから、亮は歩きづらくして仕方ない。
でも睦月は構うことなく、繋いだ手を引っ張る。
「ねぇ亮ー、あのね、これね、お菓子」
「ぅん?」
「貰ったの。お友だちと食-べてね、て言われたの。だから後で食べようね」
「…ん、そうだね」
亮がそっと盗み見た睦月は笑顔で、それは何だか無邪気なようにも見えて、……少し胸が痛む。
睦月と手を繋いだまま、亮は器用に片手で部屋の鍵を開けた。
「ただいまー、おかえりー」
いつもみたく、睦月は1人で2役の挨拶をする。
ドアを閉め、後ろ手に鍵を掛けると、亮は睦月を抱き締めた。
「亮? どうしたの?」
「…んーん、何でもない。何かむっちゃんのこと、ギュッとしたくなっただけ」
ただ、それだけのこと。
今日睦月に何があったかなんて、おばあさんと三郎さんのところに行った睦月が何を知ったのかなんて、そんなの、亮は何も知らない。
「亮ー、今日もね、三郎さんに『またね』して来たよ?」
「うん」
「『じゃあ、またね』て言ってきた」
「うん」
腕の中でポツリポツリと話す睦月の頭を、そっと撫でる。
睦月は、亮の胸に顔を押し付けたまま、その表情を見せてくれない。
「あとね、おばあちゃんにも『またね』て言った」
「…ん」
「またね、て…」
『またね』は、次の約束の言葉だから。
三郎さんにも、おばあちゃんにも、ちゃんと言ってきた。
さようならじゃなくて、また会うための、また今度、一緒にお散歩するための、またね。
「だから、今度三郎さんのお散歩するときは、亮も一緒にさせたげるね」
「…ん」
ようやく顔を上げてくれた睦月は、まだ目元が濡れていたけれど、穏やかな笑顔で。
それはもう、痛みを感じるような笑顔じゃなくて。
亮はその唇に、そっとキスを落とした。
*END*
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「バイト終わったからさ、待ってた、むっちゃんのこと」
睦月は涙を拭わないまま、亮のほうに歩み寄った。
ずっと走っていたせいで、睦月の髪はもうボサボサになっていて、亮はその頭を撫でて直してあげる。それから、濡れている睦月の頬を、そっと拭ってやった。
「部屋、戻ろっか」
「ん」
亮は睦月の、何も持っていないほうの手を取って繋いだ。
今日は晴れたし、もう暖かいと言える時期なのに、日が傾きかけた時間帯、ずっと走ってきたせいか、睦月の手は冷たくて、それが何だか切ない。
「むっちゃん、ちゃんと歩いてよ」
「んー」
素直に手を繋がれている睦月は、しかし階段を1つ飛ばしで上がったり、時々立ち止まったり、変なふうに歩くから、亮は歩きづらくして仕方ない。
でも睦月は構うことなく、繋いだ手を引っ張る。
「ねぇ亮ー、あのね、これね、お菓子」
「ぅん?」
「貰ったの。お友だちと食-べてね、て言われたの。だから後で食べようね」
「…ん、そうだね」
亮がそっと盗み見た睦月は笑顔で、それは何だか無邪気なようにも見えて、……少し胸が痛む。
睦月と手を繋いだまま、亮は器用に片手で部屋の鍵を開けた。
「ただいまー、おかえりー」
いつもみたく、睦月は1人で2役の挨拶をする。
ドアを閉め、後ろ手に鍵を掛けると、亮は睦月を抱き締めた。
「亮? どうしたの?」
「…んーん、何でもない。何かむっちゃんのこと、ギュッとしたくなっただけ」
ただ、それだけのこと。
今日睦月に何があったかなんて、おばあさんと三郎さんのところに行った睦月が何を知ったのかなんて、そんなの、亮は何も知らない。
「亮ー、今日もね、三郎さんに『またね』して来たよ?」
「うん」
「『じゃあ、またね』て言ってきた」
「うん」
腕の中でポツリポツリと話す睦月の頭を、そっと撫でる。
睦月は、亮の胸に顔を押し付けたまま、その表情を見せてくれない。
「あとね、おばあちゃんにも『またね』て言った」
「…ん」
「またね、て…」
『またね』は、次の約束の言葉だから。
三郎さんにも、おばあちゃんにも、ちゃんと言ってきた。
さようならじゃなくて、また会うための、また今度、一緒にお散歩するための、またね。
「だから、今度三郎さんのお散歩するときは、亮も一緒にさせたげるね」
「…ん」
ようやく顔を上げてくれた睦月は、まだ目元が濡れていたけれど、穏やかな笑顔で。
それはもう、痛みを感じるような笑顔じゃなくて。
亮はその唇に、そっとキスを落とした。
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カテゴリー:Baby Baby Baby Love
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けいったん ⇒ No title
むっちゃん、亮に 泣きついて 全部 お話しすると 思ってたら・・・
「またね」
むっちゃんの 思いが いっぱい詰まった言葉
むっちゃんが 大人に見えた作品でした。
いえ 見えたじゃなくて 少し 大人になったんだろうね♪
如月さまの作品は いつも素敵なんだけど
今回の作品は いつも以上に 心に響いて 素敵でした。
ヽ(*´∀')ノ【゚・*:.。. ☆ぁりがとぅ☆.。.:*・゜】ヽ(*´∀')ノ...byebye☆
「またね」
むっちゃんの 思いが いっぱい詰まった言葉
むっちゃんが 大人に見えた作品でした。
いえ 見えたじゃなくて 少し 大人になったんだろうね♪
如月さまの作品は いつも素敵なんだけど
今回の作品は いつも以上に 心に響いて 素敵でした。
ヽ(*´∀')ノ【゚・*:.。. ☆ぁりがとぅ☆.。.:*・゜】ヽ(*´∀')ノ...byebye☆
- |2011.06.11
- |Sat
- |17:33
- |URL
- |EDIT|
ちよ ⇒
人と人との出会いは奇跡的なもの。
おばあさんと三郎さんとの出会いで、むっちゃんは何か見つけられたかな。
むっちゃんは少し強くなれたね。お母さんは、そんなむっちゃんが頼もしく思えたのでした。
ステキなお話をありがとうございました。
おばあさんと三郎さんとの出会いで、むっちゃんは何か見つけられたかな。
むっちゃんは少し強くなれたね。お母さんは、そんなむっちゃんが頼もしく思えたのでした。
ステキなお話をありがとうございました。
- |2011.06.11
- |Sat
- |18:38
- |URL
- |EDIT|
如月久美子 ⇒ >けいったんさん
むっちゃんは何も言わないし、亮タンも何も聞かないけど、お互い分かり合ってるんですよね、この2人は。
2人とも、自覚はしてないかもですが。
言わなくても分かるし、聞かなくても分かる、て感じです。
むっちゃん、ちょっとは大人になったでしょうかね!?
でもこれが、むっちゃんの中での、大きな1つの出来事になったでしょうね(*^_^*)
コメントありがとうございました!
2人とも、自覚はしてないかもですが。
言わなくても分かるし、聞かなくても分かる、て感じです。
むっちゃん、ちょっとは大人になったでしょうかね!?
でもこれが、むっちゃんの中での、大きな1つの出来事になったでしょうね(*^_^*)
コメントありがとうございました!
如月久美子 ⇒ >ちよさん
むっちゃんにとっては切ない別れとなりましたが、たくさんの幸せな時間を過ごしたと思います。
ちよさんのおっしゃるとおり、「人と人との出会いは奇跡的なもの」ですね。
ちよさんお母さんに見守られ、むっちゃん、大人になりました(*^_^*)
コメントありがとうございました!
ちよさんのおっしゃるとおり、「人と人との出会いは奇跡的なもの」ですね。
ちよさんお母さんに見守られ、むっちゃん、大人になりました(*^_^*)
コメントありがとうございました!
音夜 ⇒ No title
いつかは別れるときもあるけれど、それでもまたねって言える強さが欲しいですよね
実は私的事ですが今年祖母が病気で逝ってしまったばかりだったもので、そんなこと思い出しながら読んでました。いやホント暗い話ですみません(;´Д`)
悲しい出来事があったむっちゃんを、何も聞かずただ抱き締めた亮くんの優しさがきっとむっちゃんの気持ちを癒してくれたでしょうね
素敵なお話をありがとうございました
実は私的事ですが今年祖母が病気で逝ってしまったばかりだったもので、そんなこと思い出しながら読んでました。いやホント暗い話ですみません(;´Д`)
悲しい出来事があったむっちゃんを、何も聞かずただ抱き締めた亮くんの優しさがきっとむっちゃんの気持ちを癒してくれたでしょうね
素敵なお話をありがとうございました
- |2011.06.12
- |Sun
- |20:40
- |URL
- |EDIT|
如月久美子 ⇒ >音夜さん
むっちゃんは何気に強い子なんですよね。
いつも誰かに過保護に守られてるんだけど、それをちゃんと自覚してるし、強くなろうとも思ってて。
そしてまた大人になりました。
お別れは寂しいですが、つらくて切ないことよりも、幸せだった時間や思い出を大切にしていきたいですよね。
それと…今ちょっと原稿の追い込みしてて、音夜さんトコになかなかコメできずにいてすみません。
自分へのご褒美に、ちょこちょこ読んでるんですが、読み逃げで…。
早くガッツリ想いを伝えたいっ!!(爆)
コメントありがとうございました!
いつも誰かに過保護に守られてるんだけど、それをちゃんと自覚してるし、強くなろうとも思ってて。
そしてまた大人になりました。
お別れは寂しいですが、つらくて切ないことよりも、幸せだった時間や思い出を大切にしていきたいですよね。
それと…今ちょっと原稿の追い込みしてて、音夜さんトコになかなかコメできずにいてすみません。
自分へのご褒美に、ちょこちょこ読んでるんですが、読み逃げで…。
早くガッツリ想いを伝えたいっ!!(爆)
コメントありがとうございました!