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屋上の寂しい人 (4)
2011.05.22 Sun
「ハハ……ちょっと、まぁ、うん、殴られちゃって…」
「誰に!?」
「え? 親父? つーか、母ちゃんの旦那? 新しい」
わざわざ言い直した理玖の言葉のとおりに頭の中で系図を描けば、つまりは、理玖のホントのお父さんじゃないってことだ。
「何で……殴られたの?」
立ち入ったことを聞くつもりなんか、なかったけど。
コイツのことなんか、どうだっていいけど。
でも。
「俺さぁ、父ちゃん似なんだよね。だからきっと、それがおもしろくなかったんだろうね」
「そんな理由で? で、ケンカになったんだ?」
「んーん。一方的に殴られただけ。他人だけど、やっぱ親父だからさ、俺が殴ったら母ちゃん悲しむかなぁと思って。俺って、いい子」
「何言ってんだよ、バカ! こんなときまでヘラヘラしてんじゃねぇよっ!!」
ってか、何で俺が、こんな、悔しいみたいな気持ちになってんの?
確かに理玖が殴られた理由は理不尽極まりないけど、そんなの別に俺になんか関係ない。こいつが殴られようが殴られまいが、そんなのどっちだっていいじゃん。
なのにコイツは、それでもヘラヘラしてるし。
何でそんな、自分の感情を殺してんの?
「俺……希海が怒ってるの、初めて見た」
「…え?」
ジッと俺を見上げながら、徐に理玖が口を開いた。
理玖は投げ出していた足を少しプラプラさせた後、膝を抱えた。
「いや、俺がここに来るの、嫌そうにはしてたけど…………でも今みたいに、感情を露にして怒鳴ったり怒ったりしないじゃん」
「…………」
「いつも淡々としてたし」
確かに。
昔から感情を表に出すのは、苦手で。
かといって、何も感じてないわけじゃないのに、でも誰もそれに気付いてくれなくて――――結局、感情なんて無意味なもの、心の奥底にしまい込んだ。
「何か、希海はいつも寂しそうな顔してた」
俺と理玖の間を、冷たい風が吹き抜けた。
寒さに思わず首を竦めたら、理玖が自分の隣をポンポンと指した。ちょっと戸惑ったけど、理玖の横に座る。
「俺さぁ、ここしか居場所がないわけ」
寒いから、ちょっとだけ理玖のほうに寄り添って、俺は口を開いた。
「希海、お家は?」
「寝るところはある……かな。でも親父とお袋が揉めてっから、いづれぇんだ」
「そっか」
多分、親父もお袋も、俺がこんなとこに来てるなんて知らない。
お袋は俺の分のメシも作ってくれてるけど、多分、食べてなかったからって、俺が帰ってきてなかったからって、別にそんなの、どうだっていいんだと思う。
家の中はいつだってピリピリしてるし、怒鳴り声を聞くのもウンザリする。
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「誰に!?」
「え? 親父? つーか、母ちゃんの旦那? 新しい」
わざわざ言い直した理玖の言葉のとおりに頭の中で系図を描けば、つまりは、理玖のホントのお父さんじゃないってことだ。
「何で……殴られたの?」
立ち入ったことを聞くつもりなんか、なかったけど。
コイツのことなんか、どうだっていいけど。
でも。
「俺さぁ、父ちゃん似なんだよね。だからきっと、それがおもしろくなかったんだろうね」
「そんな理由で? で、ケンカになったんだ?」
「んーん。一方的に殴られただけ。他人だけど、やっぱ親父だからさ、俺が殴ったら母ちゃん悲しむかなぁと思って。俺って、いい子」
「何言ってんだよ、バカ! こんなときまでヘラヘラしてんじゃねぇよっ!!」
ってか、何で俺が、こんな、悔しいみたいな気持ちになってんの?
確かに理玖が殴られた理由は理不尽極まりないけど、そんなの別に俺になんか関係ない。こいつが殴られようが殴られまいが、そんなのどっちだっていいじゃん。
なのにコイツは、それでもヘラヘラしてるし。
何でそんな、自分の感情を殺してんの?
「俺……希海が怒ってるの、初めて見た」
「…え?」
ジッと俺を見上げながら、徐に理玖が口を開いた。
理玖は投げ出していた足を少しプラプラさせた後、膝を抱えた。
「いや、俺がここに来るの、嫌そうにはしてたけど…………でも今みたいに、感情を露にして怒鳴ったり怒ったりしないじゃん」
「…………」
「いつも淡々としてたし」
確かに。
昔から感情を表に出すのは、苦手で。
かといって、何も感じてないわけじゃないのに、でも誰もそれに気付いてくれなくて――――結局、感情なんて無意味なもの、心の奥底にしまい込んだ。
「何か、希海はいつも寂しそうな顔してた」
俺と理玖の間を、冷たい風が吹き抜けた。
寒さに思わず首を竦めたら、理玖が自分の隣をポンポンと指した。ちょっと戸惑ったけど、理玖の横に座る。
「俺さぁ、ここしか居場所がないわけ」
寒いから、ちょっとだけ理玖のほうに寄り添って、俺は口を開いた。
「希海、お家は?」
「寝るところはある……かな。でも親父とお袋が揉めてっから、いづれぇんだ」
「そっか」
多分、親父もお袋も、俺がこんなとこに来てるなんて知らない。
お袋は俺の分のメシも作ってくれてるけど、多分、食べてなかったからって、俺が帰ってきてなかったからって、別にそんなの、どうだっていいんだと思う。
家の中はいつだってピリピリしてるし、怒鳴り声を聞くのもウンザリする。
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