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ハッピークリスマス (15)
2011.02.04 Fri
9:36 p.m.
『クリスマスイブに、このうら若き乙女にバイトのシフトを入れるなんて、てんちょーは鬼です~…』
と、相変わらずのテンションで、バイトの亜沙美が言っていたのが、11月の頭。
てっきりシフトは組み直されていたのだとばかり思っていたのに、クリスマスイブ当日、仕事にやって来たバイトは、亜沙美本人だった。
どうして来たのだと譲が詰め寄れば、『おもしろいものが見れそうなので』と、亜沙美はシレッと答えた。そういう女なのだ、亜沙美は。
譲は、どちらかと言うと、亜沙美が苦手だ。
嫌いなわけではない。テンポとテンションはおかしいが、仕事も熱心にこなすし、いい子だとは思う。
だが、あのよく分からない独特の雰囲気の中に、何もかもを見透かしたようなものを秘めているから、はっきり言えば怖いのだ。
黙って立っているだけで、知らない人間なら『すいませんっ』と頭を下げて逃げ去っていきそうな風体で、まるで怖いものなどこの世にはないような譲の恐怖は、自分よりいくつも若い、このバイトの女の子なのである。
*****
閉店時間を過ぎ、片付けを終えた後、(譲にとっての)恐怖の大王が去った店内。
譲は大きく伸びをした後、客席の椅子に腰掛けた。
カフェspicaは、それほど大きな店ではなくて、1度に大勢のお客が入れるわけではないが、さすがにクリスマスイブの今日は、朝から晩までずっとお客が途切れなかったから、結構疲れている。
「お疲れ様。何か飲む? それとももう、すぐ帰る?」
再度、店内の確認をした朋文が、譲を振り返った。
クリスマスぽい飾り付けをした窓の向こう、イルミネーションなのか、ビルの灯りなのか、キラキラと煌めいている。
「あー……そーだなぁー…」
本当に疲れているのか、眠いのか、譲の口調はゆったりとしている。
何か飲みたい気もするけれど、用意をすれば、また片付けもしなくてはいけない。今日はもう、これ以上、何か仕事をする気にはなれない。
「どっか寄ってく?」
「空いてねぇだろ…」
何しろ今日は、クリスマスイブだ。
そうでなくても週末の夜。こんな時間、ゆっくりとするのにちょうどいいような店は、みんな埋まっているに決まっている。
そうすると、選択肢は『すぐ帰る』しかなくなってしまうのか。
仕事はもう終わったのだし、それはそれでいいのだけれど。
「譲?」
「………………、やっぱ何か飲む。紅茶」
「え?」
「紅茶がいい。お前が入れたヤツ」
「え? えっ? だって譲、いっつも紅茶なんか飲まないじゃん、コーヒー…」
「ヤダ。コーヒーじゃヤダ。アルコールもヤダ」
お行儀悪くテーブルに突っ伏している譲は、焦る朋文をおもしろそうに眺めながら、つまらない我儘を言い募る。
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『クリスマスイブに、このうら若き乙女にバイトのシフトを入れるなんて、てんちょーは鬼です~…』
と、相変わらずのテンションで、バイトの亜沙美が言っていたのが、11月の頭。
てっきりシフトは組み直されていたのだとばかり思っていたのに、クリスマスイブ当日、仕事にやって来たバイトは、亜沙美本人だった。
どうして来たのだと譲が詰め寄れば、『おもしろいものが見れそうなので』と、亜沙美はシレッと答えた。そういう女なのだ、亜沙美は。
譲は、どちらかと言うと、亜沙美が苦手だ。
嫌いなわけではない。テンポとテンションはおかしいが、仕事も熱心にこなすし、いい子だとは思う。
だが、あのよく分からない独特の雰囲気の中に、何もかもを見透かしたようなものを秘めているから、はっきり言えば怖いのだ。
黙って立っているだけで、知らない人間なら『すいませんっ』と頭を下げて逃げ去っていきそうな風体で、まるで怖いものなどこの世にはないような譲の恐怖は、自分よりいくつも若い、このバイトの女の子なのである。
*****
閉店時間を過ぎ、片付けを終えた後、(譲にとっての)恐怖の大王が去った店内。
譲は大きく伸びをした後、客席の椅子に腰掛けた。
カフェspicaは、それほど大きな店ではなくて、1度に大勢のお客が入れるわけではないが、さすがにクリスマスイブの今日は、朝から晩までずっとお客が途切れなかったから、結構疲れている。
「お疲れ様。何か飲む? それとももう、すぐ帰る?」
再度、店内の確認をした朋文が、譲を振り返った。
クリスマスぽい飾り付けをした窓の向こう、イルミネーションなのか、ビルの灯りなのか、キラキラと煌めいている。
「あー……そーだなぁー…」
本当に疲れているのか、眠いのか、譲の口調はゆったりとしている。
何か飲みたい気もするけれど、用意をすれば、また片付けもしなくてはいけない。今日はもう、これ以上、何か仕事をする気にはなれない。
「どっか寄ってく?」
「空いてねぇだろ…」
何しろ今日は、クリスマスイブだ。
そうでなくても週末の夜。こんな時間、ゆっくりとするのにちょうどいいような店は、みんな埋まっているに決まっている。
そうすると、選択肢は『すぐ帰る』しかなくなってしまうのか。
仕事はもう終わったのだし、それはそれでいいのだけれど。
「譲?」
「………………、やっぱ何か飲む。紅茶」
「え?」
「紅茶がいい。お前が入れたヤツ」
「え? えっ? だって譲、いっつも紅茶なんか飲まないじゃん、コーヒー…」
「ヤダ。コーヒーじゃヤダ。アルコールもヤダ」
お行儀悪くテーブルに突っ伏している譲は、焦る朋文をおもしろそうに眺めながら、つまらない我儘を言い募る。
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