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手がいつも冷たいところ (2)
2013.03.30 Sat
「えー…ないんだけど」
睦月が座っていた席の周辺には、何の忘れ物のもない。
席を勘違いしているのでは…と、前後の列の辺りも見たけれど、やはりない。床にも落ちていない。
「次の授業の人とか……忘れ物、学生課に届けてくれたとか?」
「えー? そんな気の利いたこと、してくれる~?」
睦月だったら、面倒くさいから、席に置いてあった忘れ物なんて、ゴメンナサイだけれど、そのままにすると思う。
でも今そう思って来てみた席には何もないから、もしかしたら亮の言うとおり、誰かが学生課に届けてくれたか、もしくは……
「誰かパクッた?」
「手袋なんかパクるヤツ、いねぇだろ」
新品の手袋ならまだしも、睦月はこの間雪が降ったとき、その手袋を着けて思いっ切り雪遊びをしたから、結構汚れているのだ。誰が好き好んで、そんな手袋を勝手に持って行ったりするだろう。
「俺のすっごいファンがいてー、睦月くんのモノだったら、ちょっとくらい汚れてたって……いやむしろ汚れてるくらいのがいい! て思って、持ってっちゃったのかもしんないじゃん」
「いねぇよ、そんなヤツ」
ギャグなのか本気なのかよく分からない睦月の発言に、亮が素っ気なく突っ込むから、睦月は唇を尖らせて、亮の足を蹴っ飛ばした。
亮がノッてくれないと、睦月がサムい子になってしまうではないか(まぁ実際、若干滑ったけれど)。
「とりあえず学生課行こうぜ」
「…ん」
手袋もないし、こんなところにいても仕方がないから、今度は学生課に行ってみる。
…が、残念ながら亮の読みは外れていて、睦月の手袋が届けられていることはなかった。
「ない…」
「他の教室、行く? つかさ、教室移動するときとか、落っことしちゃったのかもよ?」
「えー…じゃあ見っかんないかもじゃん…」
落とし物なら、それこそ学生課に届いていたっていいはずなのに。
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睦月が座っていた席の周辺には、何の忘れ物のもない。
席を勘違いしているのでは…と、前後の列の辺りも見たけれど、やはりない。床にも落ちていない。
「次の授業の人とか……忘れ物、学生課に届けてくれたとか?」
「えー? そんな気の利いたこと、してくれる~?」
睦月だったら、面倒くさいから、席に置いてあった忘れ物なんて、ゴメンナサイだけれど、そのままにすると思う。
でも今そう思って来てみた席には何もないから、もしかしたら亮の言うとおり、誰かが学生課に届けてくれたか、もしくは……
「誰かパクッた?」
「手袋なんかパクるヤツ、いねぇだろ」
新品の手袋ならまだしも、睦月はこの間雪が降ったとき、その手袋を着けて思いっ切り雪遊びをしたから、結構汚れているのだ。誰が好き好んで、そんな手袋を勝手に持って行ったりするだろう。
「俺のすっごいファンがいてー、睦月くんのモノだったら、ちょっとくらい汚れてたって……いやむしろ汚れてるくらいのがいい! て思って、持ってっちゃったのかもしんないじゃん」
「いねぇよ、そんなヤツ」
ギャグなのか本気なのかよく分からない睦月の発言に、亮が素っ気なく突っ込むから、睦月は唇を尖らせて、亮の足を蹴っ飛ばした。
亮がノッてくれないと、睦月がサムい子になってしまうではないか(まぁ実際、若干滑ったけれど)。
「とりあえず学生課行こうぜ」
「…ん」
手袋もないし、こんなところにいても仕方がないから、今度は学生課に行ってみる。
…が、残念ながら亮の読みは外れていて、睦月の手袋が届けられていることはなかった。
「ない…」
「他の教室、行く? つかさ、教室移動するときとか、落っことしちゃったのかもよ?」
「えー…じゃあ見っかんないかもじゃん…」
落とし物なら、それこそ学生課に届いていたっていいはずなのに。
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手がいつも冷たいところ (3)
2013.03.31 Sun
「うぅ~~にぃ~~~…」
「どうする? もうちょっと探す? 睦月のしたいほうでいいけど」
「あ゛ぁ~~~ぬぅ~~~」
「だから、どっちなんだっつの」
これ以上探すのは面倒くさいという気持ちと、諦めたくない気持ちと、いろいろ綯い交ぜになって、睦月は地団駄を踏んだり、頭を振ったり……何だかいろいろ色がしそうだ。
「…諦める」
しばらくの後、睦月はガクリと項垂れ、そう言った。
新しいのを買うのはちょっともったいない気はするけれど、何かもう面倒くさいし、新しいのを買った後で見つかったところで、手袋が2つあっても困るわけじゃないから、と自分を納得させる。
「じゃ、新しいの、買って帰ろっか」
「…ん」
亮に言われて、睦月は大人しく後を付いて歩き出す。
自分で新しい手袋を買うと決めたけれど、やっぱり腑に落ちないところもあるのか、睦月は顔を顰めたままだ。
「ぬ…」
「ん? 何? やっぱり探す?」
建物を出たところで、睦月の歩く速度が遅くなり、何やら呟いたので、亮はやはり睦月が手袋に未練があるのだと思ったらしく、声を掛けて来たが、睦月は黙って首を振った。
手袋に未練があるとかでなくて。
「手袋、買うの、どこっ?」
「どこでもいいけど……睦月、どこ行きたい?」
睦月はまた亮の隣まで足を進めると、ぴょこぴょこしながら亮に寄り添ってくる。
一緒に帰っているんだし、恋人同士だし、いいんだけれど、普段の睦月なら、こんなにくっ付いて歩こうとはしないのに。
「どこっ? 亮、どこ行くのっ?」
「だから、どこ行きたいんだって。適当に店覗く?」
「ち…かいトコー!」
「は? …あぁ」
睦月が、変なところで区切りながら喋るから、一体何のことかと思ったら、買い物は近いところ、要は近ければどこでもいいと言いたかったらしい。
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「どうする? もうちょっと探す? 睦月のしたいほうでいいけど」
「あ゛ぁ~~~ぬぅ~~~」
「だから、どっちなんだっつの」
これ以上探すのは面倒くさいという気持ちと、諦めたくない気持ちと、いろいろ綯い交ぜになって、睦月は地団駄を踏んだり、頭を振ったり……何だかいろいろ色がしそうだ。
「…諦める」
しばらくの後、睦月はガクリと項垂れ、そう言った。
新しいのを買うのはちょっともったいない気はするけれど、何かもう面倒くさいし、新しいのを買った後で見つかったところで、手袋が2つあっても困るわけじゃないから、と自分を納得させる。
「じゃ、新しいの、買って帰ろっか」
「…ん」
亮に言われて、睦月は大人しく後を付いて歩き出す。
自分で新しい手袋を買うと決めたけれど、やっぱり腑に落ちないところもあるのか、睦月は顔を顰めたままだ。
「ぬ…」
「ん? 何? やっぱり探す?」
建物を出たところで、睦月の歩く速度が遅くなり、何やら呟いたので、亮はやはり睦月が手袋に未練があるのだと思ったらしく、声を掛けて来たが、睦月は黙って首を振った。
手袋に未練があるとかでなくて。
「手袋、買うの、どこっ?」
「どこでもいいけど……睦月、どこ行きたい?」
睦月はまた亮の隣まで足を進めると、ぴょこぴょこしながら亮に寄り添ってくる。
一緒に帰っているんだし、恋人同士だし、いいんだけれど、普段の睦月なら、こんなにくっ付いて歩こうとはしないのに。
「どこっ? 亮、どこ行くのっ?」
「だから、どこ行きたいんだって。適当に店覗く?」
「ち…かいトコー!」
「は? …あぁ」
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